Alice in wonderland-Far tomorrow-

鳴神 音兎

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第〇楽章「開演」

EP1.「Re:take」

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こんにちは、僕とは違う世界線の人達。
僕の名前は、マエル。マエル=アリス・シュバリエ。今年で15歳になるんだよ。手厳しいリュシアン先生の元、剣術を学んだ後の休憩時間は、時間なのかな?

あ、でね!今の我が家は大忙しなんだ。来週はフランス国王のルイ16世が好きだと言う、絢爛豪華なパーティーに、僕は成人の勉強会を兼ねて、父アルバートと母マリアンヌによって一緒に行ける事になったんだ。

「お母様、この服飾品は如何でしょうか?キーラに選んでいただきました!」

と、献上品のチェックをしている母に声を掛けてみる。するとチラッと僕を見る、でもすぐさまにリストに視線が戻ってしまった。

マリアンヌ「そろそろ、貴方も貴族成人としての嗜みを覚えなくてはなりませんね。良いですか?メイドはメイド、貴族は貴族。
貧民層からアリスお婆様が拾ってきたとはいえ、立場を考えキーラには手厳しく当たりなさい、そんな事では周囲に示しがつきませんよ」

と、少しでも僕の姿を見て欲しかったのだけど、貴族として、少々ばかり嗜みが悪いとお叱りを受けてしまった。ちょっぴり悲しい。

男の子「あ、お父様!お父様!おかえりなさいませ!」

父が乗る馬車の蹄音を聞きつけて、逸る気持ちに胸を躍らせ庭に急ぐ、その後ろを困り顔のキーラが続く。気づかないまま。

アルバート「お前は、いくつになったと思っている。全く大人の振る舞いが出来とらんな。キーラ!貴様は何を習わせておるか!」

そうだ、僕がちゃんとしていないと、またキーラが叱られてしまった。とぼとぼと、涙目のキーラを数歩後に控えさせて、アリスお婆様の部屋へとマナーを守って向かう。

アリスお婆様だけは、僕達を優しく撫でて下さる。決して、メイドにも怒鳴り散らしたりしない。でもね、家族は皆して腫れ物を見る目で、お婆様を扱う。
時折、下町に降りては労働層や貧民街の捨て子を拾ってきたりするからだ。品格のある出自のメイド長のリタ、執事長のジャコフと数人の教養のある者が父母の世話役している。
ほぼ孤児達が知恵を出し合って、時には、お婆様の教えなれながら、身の回りの世話をしていて、文字の読み書きもあの人から習っている子も少なくなく、彼らは日が出て夕食まで休む事なく働き、夜は離れに住んでいる。
朝ご飯は井戸水を煮沸した水と少し固いパン、アリスお婆様の管理する敷地で賄われた肉類や卵を少し。
夜には、皆であーだこーだと協議したり試作を繰り返して、食べられた味じゃない肉片に"ハンバーグ"と名前を付けた肉と、父母、お婆様、僕の料理から廃棄分の野菜のスープと昼間に本館で廃棄された固くなったパンを分け合って生きているのが日常生活。

もちろん、父と母付きの労働者は、簡素ではあるが栄養と味付けを保証されたものを口にしている。

下町に降りたロイとドルド、メア、の話では革命がどうのこうのって話題で持ちきりだったと聞く。
その話題は、離れにキーラと内緒で遊びに来ていた僕の耳にも刺さる。お婆様も諦めたみたいに、遠く遠い空の地平を眺めていた。

当日の朝ーーー
キーラを中心に、複数人のメイドが選んだ服とかではなく、メイド長のリタが持ってきた物を着せられた。煌びやかな衣装の緑に百合と。最近は認められて、地位が高くなったキリスト様を示唆する十字架の模様をあしらった感じの飾り付け。リボンもいつもより高そうなビロード生地。

生まれて初めて、2人に連れられて来た国王の宮殿。
艶やかな装飾の数々に、つい目移りしてしまう。(御母様から、小さく咎められてしまった)

でも本当に皆が皆して、煌びやかな色の衣装を整えて、どの髪型も服飾品も素晴らしかった。
僕の祖母、アリスお婆様は杖と従者がいれば来られそうな栄冠ある催しだったのに...、あの場には行きたくないと、古くからのメイドと執事の1人。オルタとアートを連れて足早に自室に篭ってしまわれてしまったみたい。

アリスお婆様は優しくて厳しい。ただ、きっと僕の気付いた事、聞いた事を一つ一つ教えてくれたに違いない。やっぱり、お婆様や僕のメイドさん達がいないのは少し寂しい。と、余り人がいる場所に酔ってしまったのか、微かながら船酔いのような感覚を覚えた。
慣れない会場の空気に酔った僕は、オスマン共和国やアナトリア地方などから取り寄せた果物。ロシア帝国方面から取り寄せた小麦と葡萄から取れるという発酵の種を取り寄せて作らせた柔らかいパン。
食べたい物を皿に乗せて、気後れしつつ片隅で食べる事に勤しんでいたら、煌びやかな服飾を纏った同年代の子に囲われてしまったよ。どうしよう。
話によると、左から黒髪気味のジャンヌイ、太っちょロメロ、そばかすが特徴のキャロル、金色の美しい髪のメリエッタ、そのメイドらしいベルタ。
その時、キョロキョロと逃げ場を探して、食べ終えた皿をメイドに渡していたら、ふと宮殿の外庭に真っ白な不思議な子を発見したんだ。
よく晴れた日差しの中、真っ白な髪の毛に色白の子をバラ園の向こうに歩く後ろ姿。ついつい気になって、好奇心が自制心を勝ち開いた窓から抜け出て着いて行った。
その方向は、大人以外は立ち入り禁止の場所に向いていて、だからきっと、そうこんなこと注意しなきゃと途中で考えたの。そう言い訳を胸に。

途中で景色は代わって行く。

夏の匂いが途切れ、虫の声もしない枯れ木の森へと足を踏み入れた、そして唐突にキノコたちが仄かの光っている。空は赤く、陽が沈む刹那。ハッと振り返ると来た道が消えて、通り抜ける隙間がないほどに木々がひしめき合っていた。

あ、僕は迷った、ここで待つ?お父様、ーとお母様は?しゃがみ込む。
きっとお叱りになるだろう、ひょっとしたら僕はーーーかも。
ねぇ僕が居なくなれば、きっと、あぁうん。
更に、堂々巡りする気持ちと溢れる涙を拭い、禁域を進む決意をする。

何処かからか、クスクスを囁く笑い声を聞く。

真っ赤な薔薇に、七色に輝く水が出る噴水と白い柵に囲われた真っ白に見えるいしだたみの空き地。その中へと向かう白い傘。ごくりと唾を飲み込み、破れた隙間を潜る時、ぐるりとナニかが変わった気がした。
その先は螺旋階段が下へ下へと続く、そこが真っ白な階段自体は真っ黒な通路へとなって、ふと上から注ぐ光は七色に輝いていたんだ。振り返ると一枚の鏡、僕以外が反射された鏡。

コッコッとしたの方に白い傘を持った人が降りていく。
そうやって追いに追いかけて辿り着いたのは黒い柵?、鳥籠みたいに囲われた木に辿り着いた時。ふと、何かしらと、お付きが多くて悪戯するにも一人になる時間も少なかったからか、自分だけの"悪さ"だと気付いた。

怖さより、寂しさを覚えるより、戻れないかもしれないよりも。
この時は不思議なくらいにドキドキが止まらなかった。

続いて僕はゆっくりと降りていく、そっとそっと。
なんとなく気づかれないように、降りた先にあったのは鍵が落ちた顔のある真っ黒な扉、その扉は微かに開く。
こそーっと、中を覗きみていると、その鳥籠の木の根本に綺麗な白髪の日傘を差した子が木の虚に入っていく姿。

着いて、穴に足を伸ばした僕はーーー
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