18 / 25
18.井戸端ファッションショー 早朝編 一回目
しおりを挟む
ボタンを縫い付けた細い布と、ボタンホールを縫った布のセット。
ロバートさんがボタンを作り、コゼットさんと私でボタンを付けた布。そして、ボタン穴をブランケットステッチで縫った布。
このセットを王都で販売をしていくだけだ。ブランケットステッチで縫ったボタンホールは簡単には破れない。
ボタンの構造は簡単に真似できるけど、ブランケットステッチで縫ったボタンホールは強い。単に、ボタン穴を開けただけの布ではすぐに穴から裂け目が広がってすぐに布自体が使い物にならなくなる。
前の世界で、ファスナー部分だけを製造して売っている会社があったけれど、それと同じようなものだ。ボタンとボタンホールの付いた細長い布だけを売る。
王都のほとんどの人が、チェニックのようなものを着ている。理由は単純で、ボタンが発明されていないから、貫頭衣しか服がないからだ。
頭から被るしか服を着るすべがないのだ。ボタン付きの服によって、服の着方に選択肢が生まれるし、きっと需要があるはずだ。だからまずは、ボタン付きの服って便利だよ、ってことを王都に広めなければならない。きっと、ボタン付きの服の良さは、この世界の人にも分かって貰えると思う。
まずは、ボタンがこの世界にはいままでなかったのだから、ボタンが便利なものだと知ってもらわなければ、売れない。
ボタン服の認知度を上げる。
つまり、宣伝をする。
それならば…… 行くべき場所はただ一つ。
それは井戸だ。
このスラム街でもっとも情報が集まり、そしてその情報が拡散していく場所。もとの世界で言えば放送局とか、情報の発信地でもあり、情報の受信地でもある場所。この世界でもっとも『いいね!』が集まる場所。
それは、井戸端だ。
早朝。私は桶を持って井戸へと出かける。いつものチュニックにカーディガンという組み合わせだ。
カーディガンはもちろんボタン付きである。私の来ているボタン付きカーディガンに誰かが興味を持ってくれたら、アピール成功だ! 朝から井戸には多くの人たちが水を汲みに来ていた。アピールのしがいがあるといおうものだ。
名付けて、井戸端ファッションショー作戦だ!
だけど……井戸組みを待っている人たちは、みんな眉をひそめていた。
井戸の周囲を糞尿で汚染しないようにしてからスラム街の多くの人たちが健康に過ごしている。
だが、王都の反対側のスラム街では、流行病が発生していて、多くの人が倒れ、命を落としているらしい。下痢が止まらず苦しんだ挙げ句、弱り果てて死ぬ病。
そんな噂話がされている。
聞いた限り、ドットさんの症状と同じだ。
私たちの住んでいる西側に、その病気に罹患している人は、いまのところいないそうだ。 もしかしたら、ドットさんの病気の感染は井戸水経由であったのかもしれない。
そうであれば、東側の人たちも同じように井戸周りを綺麗にするような習慣が出来れば、予防できるかもしれない。
「私たちは、聖女様の慈しみが注がれているからねぇ」
一人の婦人が明るい声でそう言って、みんなそれにうなずき、顔が明るくなった。
「そうよね。聖女様のおかげで井戸の水汲みも楽になったし」
「私たちは、聖女様のお言いつけ通りに井戸の周りを綺麗にしているし」
聖女様が守ってくださる。その信頼は揺るぎないらしい。
私は、自分の住んでいる地域にだけ、立て看板を建てた。『井戸を汚すな』
その看板によって、井戸に病原菌などが流入することが少なくなり、感染病が井戸を介して広がることが少なくなった。だからこの地域は感染病にかかる人が少ない。
「あんたもそう思うだろう?」
私にも相槌が求められた。否定できる雰囲気ではなかった。
「そうですね」
私も作り笑いで答える。衛生面を改善して予防率は高くなっているだろう。それに、抵抗力が弱っている身体に汚染された水を飲ませたら、別の感染症に罹患する可能性も高い。
予防が上手く行っているだけで、それも万全ではない。手洗いうがいの習慣もなく、石鹸などもなく、シャワーを浴びる機会なんてない世界だ。感染のリスクは元の世界よりも極めて高い。
それに……治療法をしらない私は、罹患したら治療はできない。
それで、私は、何をした?
ロバートさんにお願いして、王都中の井戸に建てる看板を作ってもらうことだってできた。そして、それをしていれば、私の住む場所とは反対側の王都の住民だって、ドットさんと同じ病が広まることなんてなかったかもしれない。
そもそも、私が抗生物質の製法を知っていれば、救える命はもっと救えたはずだ。
もし、私が、前の世界の知識を持っていたら、そしてこの世界に正しく伝えることができていたら救えた命がもっと多いだろう。
蒸気機関を作ることができたら。この世界に鉄道が生まれ、素早く人の移動や物の移動が可能になる。
品種改良の知識があれば、雨が少ない年でも育つ作物を育てられ、飢饉で飢死する人を救えたはずだ。
前の世界では当然に防げたはずのことが、この世界で防げていない。
たとえばどうだろう?
私が聖女であったとき、病気で働けなくなった人や、親を失った孤児たち。そう、セト君のような子供たちを保護し、育てる制度を『神託』として、この王国に造っていたら、どれほどの命が救えただろう?
井戸に集まった、みんなが口々に言っている聖女……それが私のことだったら、私には神がかっているような力も、加護もない……。
私には、なんの力もない。
井戸に集まって水汲みしている人たちの明るい笑顔が、明るい未来が……期待が……私の心に重くのしかかってくる。 なんだか……王宮みたいだ……
・ ・ ・
「聖女様、神託はまだありませんか?」
「いいえ」
「聖女様、今日も神託はないのですか?」
「はい……すみません……」
「聖女よ。神託はありましたか?」
「お久しぶりです……えっと……すみません。神託は……あ、ありません……」
「そうですか。では、私は政務がありますので」
「あっ。お待ちください……」
「ん? 何ですか? 神託があったのですか?」
「お忙しいのは分かっていますが……ちょうどハーブティーもできたところですので……」「では一杯だけ……ん? 不味いですね」
「申し訳ありません……」
「大丈夫ですよ。聖女の仕事は、ハーブティーを淹れることではなく、神託を受けることですから」
「はい……分かっています……」
・ ・ ・
恐い…………。
「どうしたんだい。ソフィーちゃん。なんだか顔色悪いけど?」
「あっ。えっと……大丈夫です! でも、ちょっと気分が悪いので失礼します」
私はコゼットさんの家に逃げ帰った。
恐い。恐いのだ。
神託なんてなければ良かった。
元の世界の知識なんて持って生まれてこなければよかった。
そうすれば平凡な地方貴族の娘として、きっとそれなりに幸せに生きていただろう。
また、西のスラム街で病気が流行すれば、きっと聖女の奇跡を求めるだろう。だけど、私にはそんな奇跡をおこすことなんてできないのだ。
「ソフィー、おかえり」
セト君が私を出迎えてくれた。私の顔は涙でぐしょぐしょだ。
「ソフィー? って、どうしたの? 井戸に行ったらしいけど」
井戸に行って、水を持って帰ってきていないことにセト君は気づいたのだろう。
「ごめんね。ごめんね」
私は、セト君に抱きつき、ただ、謝る。
私がもっと、ちゃんと前の世界の知識を、この世界でも応用できる力を持っていたら、この世界の現状はもっと変わっていた。
例えば『運河』だ。私がちゃんと『神託』として前の世界の知識をちゃんと伝えていれば、時間はかかっても、この国を豊かにできたかもしれない。
十年、二十年、三十年と効果がなかったとしても、きっと役に立っていた。前の世界の、中国という国には、千年以上も運河として機能しつづけているものだってある。
だが、私は『運河』を誰にも言わなかった。ただ、概要を書き記しただけだ。もし、王国が運河建設をしていたら、雇用対策にもなっただろう。
運河が完成したら、今後百年で農地は増え、飢える人は少なくなっただろう。
逆に言えば、私が『運河』という知識を黙殺したことにより、今後百年で、どれだけの人が飢えて死ぬのだろうか?
「俺が水汲み行ってきてやるよ!」
セト君は私に言った。
「ありがとう……」
私はギュッとセト君を抱きしめる。
「私も行ってこようかね。最近、身体動かしてないから鈍ってしかたがないよ」
コゼットさんもそう言ってくれた。私は涙が止まらなかった。
ロバートさんがボタンを作り、コゼットさんと私でボタンを付けた布。そして、ボタン穴をブランケットステッチで縫った布。
このセットを王都で販売をしていくだけだ。ブランケットステッチで縫ったボタンホールは簡単には破れない。
ボタンの構造は簡単に真似できるけど、ブランケットステッチで縫ったボタンホールは強い。単に、ボタン穴を開けただけの布ではすぐに穴から裂け目が広がってすぐに布自体が使い物にならなくなる。
前の世界で、ファスナー部分だけを製造して売っている会社があったけれど、それと同じようなものだ。ボタンとボタンホールの付いた細長い布だけを売る。
王都のほとんどの人が、チェニックのようなものを着ている。理由は単純で、ボタンが発明されていないから、貫頭衣しか服がないからだ。
頭から被るしか服を着るすべがないのだ。ボタン付きの服によって、服の着方に選択肢が生まれるし、きっと需要があるはずだ。だからまずは、ボタン付きの服って便利だよ、ってことを王都に広めなければならない。きっと、ボタン付きの服の良さは、この世界の人にも分かって貰えると思う。
まずは、ボタンがこの世界にはいままでなかったのだから、ボタンが便利なものだと知ってもらわなければ、売れない。
ボタン服の認知度を上げる。
つまり、宣伝をする。
それならば…… 行くべき場所はただ一つ。
それは井戸だ。
このスラム街でもっとも情報が集まり、そしてその情報が拡散していく場所。もとの世界で言えば放送局とか、情報の発信地でもあり、情報の受信地でもある場所。この世界でもっとも『いいね!』が集まる場所。
それは、井戸端だ。
早朝。私は桶を持って井戸へと出かける。いつものチュニックにカーディガンという組み合わせだ。
カーディガンはもちろんボタン付きである。私の来ているボタン付きカーディガンに誰かが興味を持ってくれたら、アピール成功だ! 朝から井戸には多くの人たちが水を汲みに来ていた。アピールのしがいがあるといおうものだ。
名付けて、井戸端ファッションショー作戦だ!
だけど……井戸組みを待っている人たちは、みんな眉をひそめていた。
井戸の周囲を糞尿で汚染しないようにしてからスラム街の多くの人たちが健康に過ごしている。
だが、王都の反対側のスラム街では、流行病が発生していて、多くの人が倒れ、命を落としているらしい。下痢が止まらず苦しんだ挙げ句、弱り果てて死ぬ病。
そんな噂話がされている。
聞いた限り、ドットさんの症状と同じだ。
私たちの住んでいる西側に、その病気に罹患している人は、いまのところいないそうだ。 もしかしたら、ドットさんの病気の感染は井戸水経由であったのかもしれない。
そうであれば、東側の人たちも同じように井戸周りを綺麗にするような習慣が出来れば、予防できるかもしれない。
「私たちは、聖女様の慈しみが注がれているからねぇ」
一人の婦人が明るい声でそう言って、みんなそれにうなずき、顔が明るくなった。
「そうよね。聖女様のおかげで井戸の水汲みも楽になったし」
「私たちは、聖女様のお言いつけ通りに井戸の周りを綺麗にしているし」
聖女様が守ってくださる。その信頼は揺るぎないらしい。
私は、自分の住んでいる地域にだけ、立て看板を建てた。『井戸を汚すな』
その看板によって、井戸に病原菌などが流入することが少なくなり、感染病が井戸を介して広がることが少なくなった。だからこの地域は感染病にかかる人が少ない。
「あんたもそう思うだろう?」
私にも相槌が求められた。否定できる雰囲気ではなかった。
「そうですね」
私も作り笑いで答える。衛生面を改善して予防率は高くなっているだろう。それに、抵抗力が弱っている身体に汚染された水を飲ませたら、別の感染症に罹患する可能性も高い。
予防が上手く行っているだけで、それも万全ではない。手洗いうがいの習慣もなく、石鹸などもなく、シャワーを浴びる機会なんてない世界だ。感染のリスクは元の世界よりも極めて高い。
それに……治療法をしらない私は、罹患したら治療はできない。
それで、私は、何をした?
ロバートさんにお願いして、王都中の井戸に建てる看板を作ってもらうことだってできた。そして、それをしていれば、私の住む場所とは反対側の王都の住民だって、ドットさんと同じ病が広まることなんてなかったかもしれない。
そもそも、私が抗生物質の製法を知っていれば、救える命はもっと救えたはずだ。
もし、私が、前の世界の知識を持っていたら、そしてこの世界に正しく伝えることができていたら救えた命がもっと多いだろう。
蒸気機関を作ることができたら。この世界に鉄道が生まれ、素早く人の移動や物の移動が可能になる。
品種改良の知識があれば、雨が少ない年でも育つ作物を育てられ、飢饉で飢死する人を救えたはずだ。
前の世界では当然に防げたはずのことが、この世界で防げていない。
たとえばどうだろう?
私が聖女であったとき、病気で働けなくなった人や、親を失った孤児たち。そう、セト君のような子供たちを保護し、育てる制度を『神託』として、この王国に造っていたら、どれほどの命が救えただろう?
井戸に集まった、みんなが口々に言っている聖女……それが私のことだったら、私には神がかっているような力も、加護もない……。
私には、なんの力もない。
井戸に集まって水汲みしている人たちの明るい笑顔が、明るい未来が……期待が……私の心に重くのしかかってくる。 なんだか……王宮みたいだ……
・ ・ ・
「聖女様、神託はまだありませんか?」
「いいえ」
「聖女様、今日も神託はないのですか?」
「はい……すみません……」
「聖女よ。神託はありましたか?」
「お久しぶりです……えっと……すみません。神託は……あ、ありません……」
「そうですか。では、私は政務がありますので」
「あっ。お待ちください……」
「ん? 何ですか? 神託があったのですか?」
「お忙しいのは分かっていますが……ちょうどハーブティーもできたところですので……」「では一杯だけ……ん? 不味いですね」
「申し訳ありません……」
「大丈夫ですよ。聖女の仕事は、ハーブティーを淹れることではなく、神託を受けることですから」
「はい……分かっています……」
・ ・ ・
恐い…………。
「どうしたんだい。ソフィーちゃん。なんだか顔色悪いけど?」
「あっ。えっと……大丈夫です! でも、ちょっと気分が悪いので失礼します」
私はコゼットさんの家に逃げ帰った。
恐い。恐いのだ。
神託なんてなければ良かった。
元の世界の知識なんて持って生まれてこなければよかった。
そうすれば平凡な地方貴族の娘として、きっとそれなりに幸せに生きていただろう。
また、西のスラム街で病気が流行すれば、きっと聖女の奇跡を求めるだろう。だけど、私にはそんな奇跡をおこすことなんてできないのだ。
「ソフィー、おかえり」
セト君が私を出迎えてくれた。私の顔は涙でぐしょぐしょだ。
「ソフィー? って、どうしたの? 井戸に行ったらしいけど」
井戸に行って、水を持って帰ってきていないことにセト君は気づいたのだろう。
「ごめんね。ごめんね」
私は、セト君に抱きつき、ただ、謝る。
私がもっと、ちゃんと前の世界の知識を、この世界でも応用できる力を持っていたら、この世界の現状はもっと変わっていた。
例えば『運河』だ。私がちゃんと『神託』として前の世界の知識をちゃんと伝えていれば、時間はかかっても、この国を豊かにできたかもしれない。
十年、二十年、三十年と効果がなかったとしても、きっと役に立っていた。前の世界の、中国という国には、千年以上も運河として機能しつづけているものだってある。
だが、私は『運河』を誰にも言わなかった。ただ、概要を書き記しただけだ。もし、王国が運河建設をしていたら、雇用対策にもなっただろう。
運河が完成したら、今後百年で農地は増え、飢える人は少なくなっただろう。
逆に言えば、私が『運河』という知識を黙殺したことにより、今後百年で、どれだけの人が飢えて死ぬのだろうか?
「俺が水汲み行ってきてやるよ!」
セト君は私に言った。
「ありがとう……」
私はギュッとセト君を抱きしめる。
「私も行ってこようかね。最近、身体動かしてないから鈍ってしかたがないよ」
コゼットさんもそう言ってくれた。私は涙が止まらなかった。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる