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第3章 1000年前の遺産
空の住人達との交流は
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「もう何が出てきても驚きやせんさね・・・」
そう呟くのは椅子で身体を休めているマーサである。転移魔法陣からやって来た4人はあれから草原をしばらく歩いたのだが、
出会うのは人外の存在ばかり。
流れる小川を見つけ近づいた時は水の女神と呼ばれる人魚のネレイス達が声をかけて来た。
森の木陰で休んだ時はペガサスとユニコーン数体が近づいて来て4人の傍らで身体を休めていた。
途中の花畑で足を止めた時は妖精達のお喋りに巻き込まれなかなか離してもらえなかった。
「それであの子らはまだ捕まってるのかい?」
マーサ婆さんが言っているのはもちろんタニアとルークのことである。
クラウドの研究所である天空を漂う城「スカイパレス」へとようやくたどり着いた一行であったが、久々の主の帰還を一目見ようと周囲からは精霊や妖精、霊獣達が押し寄せてきていた。
1000年の間で世代交代した種族も多くいるが、スカイパレスが建つこの2km四方の台地に住むものたちでクラウドが主だと知らないものは居ない。
自身の親、または先祖達から言い伝えられていたからだ。
『主が帰ればすぐに分かる。大地は祝福に満ちるだろう』と。
そもそもこの場にはあり得ない程の力が満ちている。ただでさえ隔離された場所に加え、研究を続けていたクラウドが持ち込んだ様々なアイテムや素材のせいでこの空飛ぶ台地は驚く程に魔素が濃い(周囲に魔力が満ちているという意)。しかも世界樹までもが根をはるこの地は妖精や精霊達、はては霊獣達にとっても楽園となっていた。
しかし、長い月日の中で少しずつながら魔素が薄れてきていたのであるが・・・
台地は突然息を吹き返した。
帰ってきたクラウドが薄れた魔素に気づき、台地中に根をはる世界樹に膨大な魔力を流し込んだのだ。結果、台地中に力強い魔力の奔流が吹き荒れる。
木々には魔力に満ちた豊満な実がなり、妖精や霊獣達に極上の糧をもたらす。
川もまた魔力に満ち、その中で暮らす人魚やニンフ達の力となった。
『台地が生き返った』
それが何を意味するかを理解出来ないものは居なかった。今、スカイパレスは台地中から集まったもの達に囲まれている。
しかもそこでクラウドは3人を自分の家族として紹介した。人魚や妖精、霊獣達は人間並みか、もしくはそれ以上の知能を持っているものも多い。あっという間に言葉を理解したもの達に取り囲まれ人気者となったのであった。
現在タニアはペガサスとユニコーンの群れに囲まれている。
『よろしく頼むタニア殿』
『我々は貴女を歓迎いたします』
『どうか我らがお側にいることをお許し下さい』
本来は獰猛であるはずのユニコーンですらが友好の意を示している。
余談であるが、古来より処女にのみ心を許すとされるユニコーンであるがそれは間違いである。正確には心優しく穏やかな女性に心を許すのである。
これはかつてユニコーンと友好関係を築いていた女性が男を知ることで嫉妬の心を持ちユニコーンに見限られるという史実から生まれた誤解であった。
「うふふ、ありがとう皆。凄く立派な角なのね。あなたの翼もとっても素敵よペガサスさん。」
『ありがたき幸せ』
『これからも我らは貴女と共に』
早くも場に慣れ始めるタニアの胆力を見てクラウドは改めて感心していた。
「流石はマーサさんの血を引く女性「そりゃあどういう意味さねクラウド!!」」
マーサ婆さんから怒号が飛ぶ。
「すっ、すいませーん!」
スカイパレスの主が頭を下げる姿は驚く程自然だったという・・・
一方ルークはと言うと、
『ほう、そうかトント村というところから来たのであるか』
「う、うん。」
『む?そう怖がらずにいてはくれまいか?これからは我の友となってくれ。』
「は、はぁ・・・。僕なんかでいいんなら・・・」
『ふふふ、変わったやつである。お前のようなやつは初めて見たのである。』
お互いの身の上話しをしていたところでルークを気に入ったものが今ルークの前で身体を休めている。
とぐろを巻いた大きな身体は鱗に覆われており体長は約8m。蛇の下半身からは壮年の人間男性の上半身が繋がっていた。ナーガと呼ばれるこの種族は強い力を持つ。蛇の下半身で締め付けられて生きていられる人間はまず居ないだろう。そもそも魔物であるナーガを見て話しかけてくる者がいること自体があり得ない。興味半分で見に来たこのナーガが近づいた時、ルークが「こんにちは」と声を掛けたことが不思議でたまらなかったようだ。
「変なもんに捕まらなきゃいいけどねぇ・・・」
スカイパレスの入口近くでクラウドが用意した椅子に腰かけたマーサ婆さんは魔物や霊獣に囲まれる孫たちを見て心配しているようである。
「大丈夫だよマーサさん。ここにいる奴らは家族や友人を大切にする良い奴らばかりさ。」
「・・・はぁ、もう好きにするさね。」
マーサ婆さんが諦めた先では異様でありながらも微笑ましい光景が広がっている。
そもそも魔物や霊獣たちがそう簡単に人に懐くことは無い。それは彼らが人の悪意に非常に敏感であることに起因する。しかし、今この場にいる者の中には「その素材を手に入れて稼ぎたい」とも「倒して名声を手に入れたい」とも考える者は皆無である。クラウドがルーク達へここに住んでるのは皆友達だと紹介したこともあってルークやタニアが集まったものたちへ向ける感情に悪意や恐れは無い。
久方ぶりに話すに値する人間が来たことで、空の住人達は新たな話し相手が出来たと歓迎してくれている。
その中で相手を包むような優しさを持つタニアにはユニコーンやペガサスが懐き始め、相手を騙すことなど考えもしないルークには一本気な性格のナーガが話し相手となっていた。
その光景を見ているクラウドがしみじみと呟く隣ではマーサは既に諦め顔である。
「うんうん、皆仲良くなって何よりだ。連れてきて良かったなぁ・・・」
「全く、こんな話しなんぞ誰も信じやせんだろうが・・・。魔物に好かれているなんて知られてタニアが嫁ぎ遅れたらお前が責任を取るんだよクラウド。」
「な~に言ってんのマーサさん。タニアちゃんみたいな良い娘が嫁ぎ遅れるはず無いでしょう?」
「やれやれ・・・。あんたが来たおかげでようやっと2人を任せていつでも逝けると安心しとったのに。これじゃあまだまだ先は長いさね・・・」
「そんなこと考えてたのかいマーサさん。駄目だぜまだまだ長生きしなきゃ。俺が楽させてあがるからさ。」
「馬鹿たれ!お前なんぞに面倒みられるほど耄碌しとらんさね。」
「・・・全く、素直じゃ無いんだから・・・」
「・・・聞こえとるぞクラウド!」
「へーへー、そりゃすいませんねぇ。」
タニアやルークも気分転換は出来たようだし、マーサ婆さんも元気が出たようだ。不貞腐れるていで謝りながらも連れて来たのは大正解だったと思うクラウドであった。
そう呟くのは椅子で身体を休めているマーサである。転移魔法陣からやって来た4人はあれから草原をしばらく歩いたのだが、
出会うのは人外の存在ばかり。
流れる小川を見つけ近づいた時は水の女神と呼ばれる人魚のネレイス達が声をかけて来た。
森の木陰で休んだ時はペガサスとユニコーン数体が近づいて来て4人の傍らで身体を休めていた。
途中の花畑で足を止めた時は妖精達のお喋りに巻き込まれなかなか離してもらえなかった。
「それであの子らはまだ捕まってるのかい?」
マーサ婆さんが言っているのはもちろんタニアとルークのことである。
クラウドの研究所である天空を漂う城「スカイパレス」へとようやくたどり着いた一行であったが、久々の主の帰還を一目見ようと周囲からは精霊や妖精、霊獣達が押し寄せてきていた。
1000年の間で世代交代した種族も多くいるが、スカイパレスが建つこの2km四方の台地に住むものたちでクラウドが主だと知らないものは居ない。
自身の親、または先祖達から言い伝えられていたからだ。
『主が帰ればすぐに分かる。大地は祝福に満ちるだろう』と。
そもそもこの場にはあり得ない程の力が満ちている。ただでさえ隔離された場所に加え、研究を続けていたクラウドが持ち込んだ様々なアイテムや素材のせいでこの空飛ぶ台地は驚く程に魔素が濃い(周囲に魔力が満ちているという意)。しかも世界樹までもが根をはるこの地は妖精や精霊達、はては霊獣達にとっても楽園となっていた。
しかし、長い月日の中で少しずつながら魔素が薄れてきていたのであるが・・・
台地は突然息を吹き返した。
帰ってきたクラウドが薄れた魔素に気づき、台地中に根をはる世界樹に膨大な魔力を流し込んだのだ。結果、台地中に力強い魔力の奔流が吹き荒れる。
木々には魔力に満ちた豊満な実がなり、妖精や霊獣達に極上の糧をもたらす。
川もまた魔力に満ち、その中で暮らす人魚やニンフ達の力となった。
『台地が生き返った』
それが何を意味するかを理解出来ないものは居なかった。今、スカイパレスは台地中から集まったもの達に囲まれている。
しかもそこでクラウドは3人を自分の家族として紹介した。人魚や妖精、霊獣達は人間並みか、もしくはそれ以上の知能を持っているものも多い。あっという間に言葉を理解したもの達に取り囲まれ人気者となったのであった。
現在タニアはペガサスとユニコーンの群れに囲まれている。
『よろしく頼むタニア殿』
『我々は貴女を歓迎いたします』
『どうか我らがお側にいることをお許し下さい』
本来は獰猛であるはずのユニコーンですらが友好の意を示している。
余談であるが、古来より処女にのみ心を許すとされるユニコーンであるがそれは間違いである。正確には心優しく穏やかな女性に心を許すのである。
これはかつてユニコーンと友好関係を築いていた女性が男を知ることで嫉妬の心を持ちユニコーンに見限られるという史実から生まれた誤解であった。
「うふふ、ありがとう皆。凄く立派な角なのね。あなたの翼もとっても素敵よペガサスさん。」
『ありがたき幸せ』
『これからも我らは貴女と共に』
早くも場に慣れ始めるタニアの胆力を見てクラウドは改めて感心していた。
「流石はマーサさんの血を引く女性「そりゃあどういう意味さねクラウド!!」」
マーサ婆さんから怒号が飛ぶ。
「すっ、すいませーん!」
スカイパレスの主が頭を下げる姿は驚く程自然だったという・・・
一方ルークはと言うと、
『ほう、そうかトント村というところから来たのであるか』
「う、うん。」
『む?そう怖がらずにいてはくれまいか?これからは我の友となってくれ。』
「は、はぁ・・・。僕なんかでいいんなら・・・」
『ふふふ、変わったやつである。お前のようなやつは初めて見たのである。』
お互いの身の上話しをしていたところでルークを気に入ったものが今ルークの前で身体を休めている。
とぐろを巻いた大きな身体は鱗に覆われており体長は約8m。蛇の下半身からは壮年の人間男性の上半身が繋がっていた。ナーガと呼ばれるこの種族は強い力を持つ。蛇の下半身で締め付けられて生きていられる人間はまず居ないだろう。そもそも魔物であるナーガを見て話しかけてくる者がいること自体があり得ない。興味半分で見に来たこのナーガが近づいた時、ルークが「こんにちは」と声を掛けたことが不思議でたまらなかったようだ。
「変なもんに捕まらなきゃいいけどねぇ・・・」
スカイパレスの入口近くでクラウドが用意した椅子に腰かけたマーサ婆さんは魔物や霊獣に囲まれる孫たちを見て心配しているようである。
「大丈夫だよマーサさん。ここにいる奴らは家族や友人を大切にする良い奴らばかりさ。」
「・・・はぁ、もう好きにするさね。」
マーサ婆さんが諦めた先では異様でありながらも微笑ましい光景が広がっている。
そもそも魔物や霊獣たちがそう簡単に人に懐くことは無い。それは彼らが人の悪意に非常に敏感であることに起因する。しかし、今この場にいる者の中には「その素材を手に入れて稼ぎたい」とも「倒して名声を手に入れたい」とも考える者は皆無である。クラウドがルーク達へここに住んでるのは皆友達だと紹介したこともあってルークやタニアが集まったものたちへ向ける感情に悪意や恐れは無い。
久方ぶりに話すに値する人間が来たことで、空の住人達は新たな話し相手が出来たと歓迎してくれている。
その中で相手を包むような優しさを持つタニアにはユニコーンやペガサスが懐き始め、相手を騙すことなど考えもしないルークには一本気な性格のナーガが話し相手となっていた。
その光景を見ているクラウドがしみじみと呟く隣ではマーサは既に諦め顔である。
「うんうん、皆仲良くなって何よりだ。連れてきて良かったなぁ・・・」
「全く、こんな話しなんぞ誰も信じやせんだろうが・・・。魔物に好かれているなんて知られてタニアが嫁ぎ遅れたらお前が責任を取るんだよクラウド。」
「な~に言ってんのマーサさん。タニアちゃんみたいな良い娘が嫁ぎ遅れるはず無いでしょう?」
「やれやれ・・・。あんたが来たおかげでようやっと2人を任せていつでも逝けると安心しとったのに。これじゃあまだまだ先は長いさね・・・」
「そんなこと考えてたのかいマーサさん。駄目だぜまだまだ長生きしなきゃ。俺が楽させてあがるからさ。」
「馬鹿たれ!お前なんぞに面倒みられるほど耄碌しとらんさね。」
「・・・全く、素直じゃ無いんだから・・・」
「・・・聞こえとるぞクラウド!」
「へーへー、そりゃすいませんねぇ。」
タニアやルークも気分転換は出来たようだし、マーサ婆さんも元気が出たようだ。不貞腐れるていで謝りながらも連れて来たのは大正解だったと思うクラウドであった。
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