8 / 71
第2章
第4話
しおりを挟む
「いっちー? どうしたの?」
「切れた」
ベッドに寝ていた彼女は起き上がった。
「消毒して絆創膏貼る?」
「唇にしみるから、塗り薬と絆創膏だけでいい」
クラスでは比較的独りでいることの多いいっちーが、彼女には懐いている。
優雅な黒髪の大人し気な彼女は、いっちー口の端に細い指でそっと薬を塗った。
「キジはまた体育サボってんの?」
「私、ああいうの嫌い」
キジと呼ばれた彼女は、甘くささやくような声でそう言った。
いっちーを見つめながら目を細め微笑む。
あたしはなんだかその雰囲気に恥ずかしくなってきて、モジモジとしている。
「こんにちは。あなたがいっちーを連れてきてくれたの?」
いっちーはあたしをにらんだ。
「違うよ。勝手についてきただけ」
「そう。ありがとうね」
あたしにまでにこっと微笑むから、ますます恥ずかしくなる。
「じゃ、先に戻ってるね」
知り合いなのかな?
あたしとは同じクラスになったことのない子だ。
いそいそとそこを抜け出す。
校庭に戻ったら、サッカーの試合は続いていた。
「負けてんだけど」
「本当だね」
猿木沢さんに2点を入れられ、4対2で負けている。
「もも、出られる?」
「任せて」
選手交代。
ピッチに立ったあたしの前に、猿木沢さんが立ちはだかった。
「あんた名前は?」
「花田もも」
「ダセー名前」
「そういうの、あたしには効かないよ」
視線をボールに移す。
キックオフのホイッスル。
走り出したあたしの足を、猿木沢さんが引っかけようとちょっかいを出してくる。
それを飛び越えようとして、肩と肩が激しくぶつかり合った。
外野からのヤジが飛ぶ。
執拗にマークされていた。
パスが一つも通らない。
体操服をつかまれ、動きが制限されている。
あたしはワザと高くボールを上げた。
その動きに気を取られているうちに、サッと走り出す。
「しまった!」
団子状態になっていた集団をようやく抜け出した。
猿木沢さんの足でも追いつけない。
「もも、頼んだ!」
飛んで来たパスをドリブルで駆け上がる。
敵も味方もほとんど全てを後ろに置いてきた。
キーパーは大きく両腕を広げている。
あたしは狙いを定めた。
「いっけー!」
右上のコースを狙ったシュートは、飛び上がったキーパーの指先をわずかに外した。
「ゴール!」
歓声が上がる。
同時に試合終了のホイッスルが鳴った。
試合結果は4対3。
あたしの周りには駆け寄ってきたクラスのみんなが飛びついた。
「さっすがもも! カッコよかったぁ!」
「負けたし」
「いいんだよそんなこと。気にすんな」
同じクラスのはーちゃんとしーちゃんがあたしの両腕に絡みついた。
「行こう。次は数学だよ。どうせ宿題やってないんでしょ?」
三組のグループに猿木沢さんの姿が見えた。
振り返った彼女と一瞬目が合う。
彼女たちの次の授業何なんだろう。
ふとそんなことが気になった。
「切れた」
ベッドに寝ていた彼女は起き上がった。
「消毒して絆創膏貼る?」
「唇にしみるから、塗り薬と絆創膏だけでいい」
クラスでは比較的独りでいることの多いいっちーが、彼女には懐いている。
優雅な黒髪の大人し気な彼女は、いっちー口の端に細い指でそっと薬を塗った。
「キジはまた体育サボってんの?」
「私、ああいうの嫌い」
キジと呼ばれた彼女は、甘くささやくような声でそう言った。
いっちーを見つめながら目を細め微笑む。
あたしはなんだかその雰囲気に恥ずかしくなってきて、モジモジとしている。
「こんにちは。あなたがいっちーを連れてきてくれたの?」
いっちーはあたしをにらんだ。
「違うよ。勝手についてきただけ」
「そう。ありがとうね」
あたしにまでにこっと微笑むから、ますます恥ずかしくなる。
「じゃ、先に戻ってるね」
知り合いなのかな?
あたしとは同じクラスになったことのない子だ。
いそいそとそこを抜け出す。
校庭に戻ったら、サッカーの試合は続いていた。
「負けてんだけど」
「本当だね」
猿木沢さんに2点を入れられ、4対2で負けている。
「もも、出られる?」
「任せて」
選手交代。
ピッチに立ったあたしの前に、猿木沢さんが立ちはだかった。
「あんた名前は?」
「花田もも」
「ダセー名前」
「そういうの、あたしには効かないよ」
視線をボールに移す。
キックオフのホイッスル。
走り出したあたしの足を、猿木沢さんが引っかけようとちょっかいを出してくる。
それを飛び越えようとして、肩と肩が激しくぶつかり合った。
外野からのヤジが飛ぶ。
執拗にマークされていた。
パスが一つも通らない。
体操服をつかまれ、動きが制限されている。
あたしはワザと高くボールを上げた。
その動きに気を取られているうちに、サッと走り出す。
「しまった!」
団子状態になっていた集団をようやく抜け出した。
猿木沢さんの足でも追いつけない。
「もも、頼んだ!」
飛んで来たパスをドリブルで駆け上がる。
敵も味方もほとんど全てを後ろに置いてきた。
キーパーは大きく両腕を広げている。
あたしは狙いを定めた。
「いっけー!」
右上のコースを狙ったシュートは、飛び上がったキーパーの指先をわずかに外した。
「ゴール!」
歓声が上がる。
同時に試合終了のホイッスルが鳴った。
試合結果は4対3。
あたしの周りには駆け寄ってきたクラスのみんなが飛びついた。
「さっすがもも! カッコよかったぁ!」
「負けたし」
「いいんだよそんなこと。気にすんな」
同じクラスのはーちゃんとしーちゃんがあたしの両腕に絡みついた。
「行こう。次は数学だよ。どうせ宿題やってないんでしょ?」
三組のグループに猿木沢さんの姿が見えた。
振り返った彼女と一瞬目が合う。
彼女たちの次の授業何なんだろう。
ふとそんなことが気になった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる