Let's鬼退治!

岡智 みみか

文字の大きさ
30 / 71
第8章

第2話

しおりを挟む
「ここにメモ書きして置いとけばいいよね」

「そうだね。分かってくれるっしょ」

 細木に教えられた連絡用メモを引きちぎる。

その印刷ミスの裏側に、『サークル設立の書類が出来ました。提出をお願いします。花田もも 犬山一花』と書いた。

「これでよし!」

 今日はもうこれで帰ろう。

あたしはいっちーと目を合わせ、ニッと微笑む。

いっちーも同じ笑顔を向けた。

「ね、アイス食べて帰ろう」

「うん」

 学校を出る。

まだまだ明るい空は気持ちよく晴れていて、爽やかな風も吹き抜ける。

いつものように駅前に陣取る駅バァは、今日も元気に暴言を吐く。

「まだそんなモン振り回しとったんか! 野蛮な女なんてもんはロクなもんじゃない。さっさとやめちまえぇ!」

 だけどそんなことも気にならないくらい、今は気分がいい。

「ね、もっとちゃんと練習メニューも考えよう」

「そうだね、今から相談しない?」

「いいね!」

 放課後のフードコートほど、あたしたちにふさわしい場所なんてこの世にはなくって、とにかくサークル活動の始まるのが、今は楽しみで楽しみで仕方がない。

夕方の混雑した小さな丸テーブルにいっちーと二人ノートを広げ、あれやこれやとこれからの活動計画を立てた。

 それから2、3日が過ぎた。

はーとしーの二人があたしたちに声をかける。

「ねぇ、サークル設立の書類、ちゃんと提出した?」

 昼休み、あたしはいっちーと協力してスマホゲームのラスボス攻略に忙しくて、今はそれどころじゃない。

「えぇ? こないだいっちーと一緒に小田っちんとこ持ってったよ」

「そうだけど、生徒会にまだ連絡が来てないよ」

「新サークルの設立書類って、そんなしょっちゅうあるもんなの?」

「いや、ないでしょ」

「ちょっとくらい時間かかんじゃないの? 校長の許可とかいるみたいだったし」

 だけどそれは提出期限を翌日に迎えても、まだ受理されていなかった。

はーとしーからの連絡を受け、あたしたちは職員室に乗り込む。

「どういうことですか!」

「どういうこともなにも、まだ書類だされてないんだもの、審査のしようがないじゃない」

「は?」

 堀川はすました顔で言い放つ。

「小田先生からなんにももらってなーい」

 あたしといっちーは速攻で体育科準備室へ向かった。

確かに提出をお願いしておいたはずなのに……。

無人の準備室の、その小田先生の机には、あたしが数日前に置いた状態そのままに書類とメモ書きが残されていた。

「ちょ、どういうこと?」

 遠くでガタリと音がする。

パッと振り返っても誰もいない。

あたしはいっちーとアイコンタクトを取る。

足音を忍ばせ音のした場所にそっと近寄ると、机の下をのぞき込んだ。

そこに隠れていた細木を捕まえる。

「小田先生は、いまどこにいますか!」

「い、いまはしっ……で……」

「はい?」

 声が小さすぎて、なんて言ってんのか目の前にいても聞こえない。

「……だから出張でいないって……」

「は?」

「指導員研修に行ってて、戻ってくるのは来週だし」

 おどおどと答え、震える指先でホワイトボードを指さした。

そこにはあたしたちがメモ書きを置いた日の二日前から、明後日土曜日までの二週間不在の文字があった。

「え……じゃあ、小田先生が学校に戻って来るのは……」

「つ、次の月曜日ですけど……」

「この書類、明日がしめきりなんですけど!」

「いや、そんなこと言われても……」

「今どこ!」

「き、キビヤマ市……」

「隣じゃん!」

 顧問の欄には、小田先生直筆のサインがある。

これで何とかならないものか。

もう一度職員室へ向かう。

「確かにサインはあるけど、肝心の小田先生に直接確認出来ないことには、承認出来ないでしょ」

「なんで?」

 その問いに、堀川は無言で見上げている。

「そ、そこは電話とか……」

 あたしたちがどれだけモジモジ言い訳しても、その表情は一切変わらない。

「期限はちゃんとあったはずよ。それに間に合わせることが出来ないようじゃ、所詮無理だったってことなんじゃない?」

 あたしは堀川を見下ろす。

怒りで全身が震えるのを、押さえつけるのも難しい。

「それは言いがかりみたいなもんじゃないんですか?」

「だってさ、それは本当に決まりなんだから、しょうがないじゃない。変なサークルをむやみやたらに乱立させないための決まりなんだから、当然でしょ」

 生徒手帳のページを見せられる。

そこには確かに、設立申請が受理されたのち、設立の許可を改めてとるようにと書かれてある。

「チャレンジは認める。だけど、実際に出来るかどうかは別ってことよ。期限は明日。どうするつもり?」

 あたしはない頭を使ってぐるぐる考える。

方法はいくつか思いつく。

だけど……。

職員室特有のざわめきのなか、堀川のついた軽すぎるため息と横を向いたキィという椅子の音が、あたしの何かを邪魔している。

堀川は生徒の提出したノートのチェックを始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...