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第9章
第3話
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「一花はこのあとどうするの?」
正門前まで戻ってきた。
桃はいっちーに尋ねる。
「どうって……。一度学校に戻って……片付けとかあるから……」
「そっか」
桃の指先はいっちーのブレザーの裾に触れると、それをそっと引いた。
「こん棒、よく似合ってる……から、よかった」
「先に帰っていいから」
「う、うん」
開かれた境界線を乗り越える。
桃の指先はいっちーの制服から離された。
ここからはあたしたちの世界で、彼らは立ち入ることは出来ない。
手を振る彼らに別れを告げると、いっちーはうつむいたまま校内を進んだ。
その足取りは速い。
「ねぇ、いっちーさぁ……」
あたしはそんな彼女の背中を見ながらこん棒を肩に担ぐ。
「いっちーがあたしに付き合ってくれるのはうれしいんだけど、無理はしなくていいよ」
何でこのタイミングって言われれば、分からない。
だけど、一度は確認しておきたいことだったのかもしれない。
「いっちー、元々あんま乗り気でもなかったし。環境とか立場ってのもあるし……。気持ちは……、分かるから」
いっちーは背を向けたまま歩き続ける。
だって別に、一緒に鬼退治するのはあたしじゃなくてもいいわけだし。
もっと強くていい人がいるのならば、あたしだってそっちの人と行動したい。
変な同情してるとか、つまんないとか、思われてるんじゃないかって、そんなことは思ってないけど……。
「あんたは別に……いや、変な意味じゃなくてだよ。ちゃんとした人がいるんだから、無理にこんなことしなくっても……。いっちーにはいっちーのやり方があっていいわけだし。それはそれで全然……。応援とか、誰かの助けをするってのも、それはそれで……」
振り返った彼女の手は、あたしの胸ぐらを掴んだ。
「大人しく黙ってていいのかって、言ったのあんただし!」
いっちーの表情に、あたしの傷がうずき始める。
「やっぱり私にはなにも出来ないって? やってもらった方がラク? 確かにそうだよね、奥に引っ込んで笑ってりゃいいんだし」
あたしをドンと突き放した。
「ももって名前の奴って、やっぱマジでムカつく。あんたまでそんなこと言うんだったら、私はもうやめる」
いっちーはこん棒を投げ捨てると、着けていたベルトまで地面に叩きつけた。
「ああいうのはイヤだって、ずっと思ってるのに! にこにこ笑って誰かの手伝いか手助けばかりで。誰も私自身の気持ちになんて興味なくて、ただ便利で邪魔にならないのがやっぱり一番だって?」
振り返った彼女の目に涙が浮かぶ。
「それを分かってくれてるのは、ももだと思ってた。なのにやっぱりそんなふうに言うんだったら、無理」
「いっちー、ごめん!」
「私はそんな自分が嫌いで変えたいと思った」
「だからゴメンって!」
伸ばした手は、すぐに振り払われた。
「来ないで。今日は一人で帰る」
遠くなるいっちーの背を見送りながら、気がつけばあたしは声を上げて泣いていた。
わんわん大声で泣きながらいっちーの捨てたものを拾い、演武場に借りた倉庫まで独りで片付けに行く。
あんまり派手に泣き続けていたから、ジロジロ見られてたのは知ってるけど、今はそれどころじゃない。
いくら泣いても泣いても泣ききれなくて、どうしようもなく止まらなくなった声を張り上げて泣いている。
正門前まで戻ってきた。
桃はいっちーに尋ねる。
「どうって……。一度学校に戻って……片付けとかあるから……」
「そっか」
桃の指先はいっちーのブレザーの裾に触れると、それをそっと引いた。
「こん棒、よく似合ってる……から、よかった」
「先に帰っていいから」
「う、うん」
開かれた境界線を乗り越える。
桃の指先はいっちーの制服から離された。
ここからはあたしたちの世界で、彼らは立ち入ることは出来ない。
手を振る彼らに別れを告げると、いっちーはうつむいたまま校内を進んだ。
その足取りは速い。
「ねぇ、いっちーさぁ……」
あたしはそんな彼女の背中を見ながらこん棒を肩に担ぐ。
「いっちーがあたしに付き合ってくれるのはうれしいんだけど、無理はしなくていいよ」
何でこのタイミングって言われれば、分からない。
だけど、一度は確認しておきたいことだったのかもしれない。
「いっちー、元々あんま乗り気でもなかったし。環境とか立場ってのもあるし……。気持ちは……、分かるから」
いっちーは背を向けたまま歩き続ける。
だって別に、一緒に鬼退治するのはあたしじゃなくてもいいわけだし。
もっと強くていい人がいるのならば、あたしだってそっちの人と行動したい。
変な同情してるとか、つまんないとか、思われてるんじゃないかって、そんなことは思ってないけど……。
「あんたは別に……いや、変な意味じゃなくてだよ。ちゃんとした人がいるんだから、無理にこんなことしなくっても……。いっちーにはいっちーのやり方があっていいわけだし。それはそれで全然……。応援とか、誰かの助けをするってのも、それはそれで……」
振り返った彼女の手は、あたしの胸ぐらを掴んだ。
「大人しく黙ってていいのかって、言ったのあんただし!」
いっちーの表情に、あたしの傷がうずき始める。
「やっぱり私にはなにも出来ないって? やってもらった方がラク? 確かにそうだよね、奥に引っ込んで笑ってりゃいいんだし」
あたしをドンと突き放した。
「ももって名前の奴って、やっぱマジでムカつく。あんたまでそんなこと言うんだったら、私はもうやめる」
いっちーはこん棒を投げ捨てると、着けていたベルトまで地面に叩きつけた。
「ああいうのはイヤだって、ずっと思ってるのに! にこにこ笑って誰かの手伝いか手助けばかりで。誰も私自身の気持ちになんて興味なくて、ただ便利で邪魔にならないのがやっぱり一番だって?」
振り返った彼女の目に涙が浮かぶ。
「それを分かってくれてるのは、ももだと思ってた。なのにやっぱりそんなふうに言うんだったら、無理」
「いっちー、ごめん!」
「私はそんな自分が嫌いで変えたいと思った」
「だからゴメンって!」
伸ばした手は、すぐに振り払われた。
「来ないで。今日は一人で帰る」
遠くなるいっちーの背を見送りながら、気がつけばあたしは声を上げて泣いていた。
わんわん大声で泣きながらいっちーの捨てたものを拾い、演武場に借りた倉庫まで独りで片付けに行く。
あんまり派手に泣き続けていたから、ジロジロ見られてたのは知ってるけど、今はそれどころじゃない。
いくら泣いても泣いても泣ききれなくて、どうしようもなく止まらなくなった声を張り上げて泣いている。
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