Let's鬼退治!

岡智 みみか

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第10章

第3話

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「1回10点でコールドにする?」

「そしたら、めっちゃ試合終わるの早くならない?」

 うちのクラスには、全くプレイしていない子たちも残っている。

「じゃ、次から1回10点で交代しよっか」

 こっちのピッチャーは2回に交代に交代を重ねた末、再びいっちーがピッチャープレートの前に立った。

「アウト!」

 ようやくこっちにも攻撃回が回ってくる。

「どうするよ」

「とにかく1点だけでも取ろう」

 クラスで円陣を組み、気合いを入れる。

その最初のバッターが打席に着こうとした時だった。

ずっとベンチに座っていた細木が立ち上がった。

「貸しなさい。先生も参加します」

「は?」

 細木のくせに珍しく、女子の手からバットを奪いとる。

「先生はみんなの味方です」

 バッターボックスに入った細木に、相手ピッチャーは眉をひそめた。

細木は2、3度バットを振ると身構える。

「……。なにアイツ?」

「さぁ……」

 なんだかよく分からない気合いの入った細木に対し、三組のピッチャーは困惑気味だ。

そりゃそうだ。

あたしも相手ピッチャーに同情する。

それでも彼女は気を取り直したのか開き直ったのか、投球フォームに入った。

振りかぶってからの第一球、体育教師細木のバットは快音を上げ、大きく伸びた打球は場外へと消えてゆく。

それを見送った三組のチームは、ただただポカンとしていた。

シングルホームランを決めた細木は、ゆっくりとホームを一周し戻ってくる。

あたしと目が合った。

「先生、ボールが……」

 細木は神妙な顔つきのまま、ヒーロー気取りで黙ってうなずいた。

「だから先生は、お前たちの味方だと言っただろ」

「いや、そうじゃなくて……」

 元華族の大名屋敷跡に建てられたという学校だ。

広大な敷地は校庭を野球のグラウンド代わりにしても、まだ十分に余裕がある。

細木のボールはその先にある茂みの中へと消えていた。

城壁に囲まれているから、校内にボールがあるのは間違いないけど……。

「探してこないと」

「何を?」

「ボール」

「なくしたら探さないと」

 細木の顔が見る見る青ざめる。

あたしはため息をついた。

「試合中断して、みんなで探す?」

「いや、いいです。先生が探してくるので続けてください」

 そう言ってとぼとぼと歩き出したと思ったら、遠ざかるにつれ徐々にスピードをあげ、最終的には猛ダッシュになって消えていった。

さーちゃんとあたしは、また同時にため息をつく。

「ねぇ、どうする?」

 あたしはクラスのみんなを振り返った。

スコアボードには細木の入れた1点の文字が書き加えられている。

「コレ、いらんくね?」

「いらないよねぇ!」

 とたんに黙っていたみんなが声をあげ始めた。

「つーかなんで細木入って来た?」

「意味分かんねぇ。邪魔!」

「得点消しちゃう?」

「消そう消そう」

「そうだよ、消そうぜ」

 満場一致で合意したところで、あたしたちはもう一度円陣を組み直す。

「1点取るぞー!」

「おぉっ!」

 ようやく試合再開。

いっちーが守り抜いてくれているものの、バッターが打てないと意味がない。

相手の野球部の子はピッチャーポジションではないらしいけど、こっちが本気なら向こうも本気だ。

互いの応援にも熱が入る。

「いっけー、たかち!」

「走れ、走れ!」

 何とかバットにボールが当たるようになってきた。

塁に出る子も出始める。

大量の得点差は埋まらないけど、互いに遠慮は一切ない。

5回表、最後の攻撃が始まった。

あたしはベンチで拳を握りしめ、ハラハラしながら成り行きを見守っている。

細木が帰ってきた。

「なんで俺の得点が消えてんだ?」

「は? あんなの、ノーカンに決まってんでしょ」

「なんでだ。俺がちゃんと1点入れただろ。なんでなかったことになってる?」

「もー、ちょっとうるさいよ」

 今はそれどころじゃない。

あたしに出来ることはもうないから、全力で応援中なのだ。
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