本気で地球防衛団!

岡智 みみか

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第12話 スーパースター

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新たに発見された小惑星は、二晩にわたる観測が行われたうえで、本当に新発見だと確認されれば、正式に承認される。

今回のこの惑星は、突如宇宙空間に現れたことで、研究者たちを驚かせた。

毎晩見上げていた宇宙空間に、突然白い点が現れたのだ。

その奇っ怪さから、ワームホールという、アインシュタイン理論で予言される、異空間トンネルを通って、ワープしてきた可能性があるという説まで飛び出した。

本来、小惑星というのは、宇宙空間の過酷な環境や自身の重力などによって、河川の石のように、丸みを帯びた形状をしている。世界は常に安定を求めている。

この世で一番安定した形状とは、球体だ。

だから、星は自身の形状を保つために丸くなる。

しかし、今回のこの2018 NSKは、非常に角張ったごつごつした形で、全くもって丸みがない。尖りまくった小惑星だったのだ。

発見以前の画像には、全くその姿が捉えられていない、一夜にして現れた、謎の惑星、というわけだ。

ちなみに、宇宙に漂っている、ちっこい(星以下の)石が小惑星で、それが地球に落ちたら隕石、小惑星に含まれる成分が、太陽とかに熱せられて蒸発、もしくは噴出して、飛行機雲のように尾を引いているのが彗星だ。

だから、彗星のごとく現れたといっても、それ自身が輝いているわけではない。

基本、太陽の光を受けて、輝いているだけだ。

飛行速度も、小惑星と彗星で、そのスピードは様々。

じゃあなんで、彗星のごとくって言う表現があるのかって? 

その方が言い方として、格好いいからだ。理由はそれだけ。

謎の小惑星だからといって、わざわざ、ない尻尾を振る必要も、ない。

ワームホールの存在は、ブラックホールの存在が確定するのであれば、どこかには存在しているはずだとされている。

しかし、その発見は難しく、たとえ存在していたとしても、微小だったり、瞬間的に消えてしまったりして、発見が難しいとされてきた。

今回のこの小惑星は、超新星爆発と同時に発生したブラックホールからの、ワームホールを通過、遥か彼方の死滅した巨大惑星の、破片の一部が移動してきたのではないかと、噂されている。

噂ね、あくまで噂。

噂といえば、地球に突如生命が現れたのも、その起源が隕石に付着していた微生物や有機物説ってのがあるんだって。

じゃあ、俺たちの祖先は、遠い宇宙に存在する謎の生命体ってこと? 

すげーな俺、やっぱ地球レベルの人間じゃなかった。

俺の起源は、間違いなく宇宙にある。

だって、地球レベルに収まってないもん、俺って。やっぱりね。

というわけで、今回のこの突如現れた謎の小惑星は、そんな地球外生命起源説をも証明するかもしれない、彗星のごとく現れたスーパースターだった。

しかも、地球に落ちて被害をもたらすかもしれないというヒール的な要素も持つ、かなりの新キャラ設定だ。

スーパースターは、丸いよりも、尖っていた方が格好いい。

俺自身も、かくありたい。

もし、本当にそんな仮説が成立するのならば、まだ地球からは観測すら出来ない、何万光年離れているのかも確認出来ない、光りの速さすら飛び越えてやってきた、未来からの使者なのだ。

そうであると同時に、未知の世界の今を伝える、貴重なメッセンジャーでもありえる。

そんな壮大なロマンが、この世に存在するなんて、まるで俺みたいだ。

現代の壮大なロマン、未知との遭遇、俺との遭遇。

そんなことを考えながら、ぼんやりとこの2018 NSKの画像を眺めていると、非常なる親近感が湧いてくる。

お前も、俺と同じで苦労してここまでやってきたんだな、遠路はるばるご苦労さま、俺もお前みたいに、注目されて騒がれたいよ。

そして今、この俺的スーパースターは、2018 NSKという分類名以外に、小惑星番号を正式に与えられ、さらに愛称とも言うべき、命名をされようとしている。

そう、今一番のもめ事は、ソコ。

「アメリカ側が命名権を主張してきたって、どういうこと? だって、第一発見者は、うちのセンター長でしょう!」

「だけど、詳細なデータの照会に応じるのが遅れた分、学会に認められた正式な観測データは、NASAが提出したことになっている」

「おかしいじゃないですか! そこはハッキリ抗議しときましょうよ! いや、そうしないとダメですって!」

「向こうは、こっちに照会を依頼したけど、それに応じなかったっていうんだ。問題がないと、問題意識がなかったから、お前らには命名権なんてないって」

「そんな依頼、ありました?」

「少なくとも、専用のホットラインには、証拠が残ってない」

そんな会話を、話し合いの輪の外に外れて、なんとなく聞いている。

 香奈さんの視線が、気のせいじゃなくこっちを見ている。

「一般の問い合わせ窓口に送ったって、このための嫌がらせだったんですかね」

「それは単純に、向こうのミスだと思うよ」

香奈センパイの発言に、鴨志田センター長がのった。

「はー、どこにでも厄介な新人くんがいるもんなんだねー」

「すみませんが、サーバー確保のために、処理済みのメールは全部削除してしまっているので、証拠は残っていませんよ」

俺がそう言ったら、香奈センパイは、鼻くそも一緒に飛ばしてきそうな勢いで、鼻息を飛ばした。

「ほんっと、便利に出来てるわよね!!」

「ホットラインじゃないんで、一般の窓口なんで、しょうがないっす」

お前は、なんて名前になるんだろうなー、俺だったら、間違いなく俺の名前をつけるけどなー。

「ま、証拠がない分、向こうにも落ち度があるわけだし、ここはアメリカと協議して決めるしかないだろうな」

「なんか、悔しいです!」

「ま、名前なんて、本当はどうだっていいんだよ、問題の本質は、そこじゃないからね。そこにとらわれて、もっと大切な問題を忘れちゃいけない」

そう、そうですよ、さすがセンターの長ともなろう人は、さすがに分かってる。

命名権とか、そんなくだらないことで、争っている場合ではない。

そこで、天文学とは無関係な、中立的立場にいる俺からの提案だ。

「じゃ、コーへージャパンとかどうですかね?」

「は? コーへージャパン? どういう意味?」

「おい、コラちょっと待て」

俺が素直に待っている間に、すかさず香奈センパイの手が、俺の首を絞め上げた。

「コーへーって、もしかしなくてもテメーの名前じゃねえか、お前はやっぱ、いっぺん死んでこい」

「ここで俺を殺したら、殺人罪で、先輩の人生も終わりますよ」

「それもまた本望、つーか、情状酌量で恩赦レベルだわ」

やっぱり俺は、ここでもかわいがられていない。

 結局、アメリカとの協議の結果、この小惑星には、short という、『短い』とか、『急な、突然の』という意味を持つ単語を変形して、shortar と命名された。

ショウター、翔大だ。

だから、康平でいいって言ったのに、何が翔大だ、男の子の名付けランキング上位か。

丸く収まりやがって、もっと尖ってろよ、翔大。
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