ローザリンデの第二の人生

梨丸

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二章:人生の再出発

仲良くなれる、のか……?

ケリーさんが二階に上がった後、お兄様は何やら話したいことがあったそうで、怪しげな笑みを浮かべて彼女を追いかけて行ってしまった。

取り残された私がニコルに目を向けると、彼女は大きくため息をついた後、気だるげに髪を弄りながらこう言った。

「あのさ、フィニルタ先輩の妹だからって調子乗んないでくれる?」

ん?
聞き間違いかもしれない。
フリーズしていると、ニコルは追い打ちをかけるように続けた。

「だーかーらー、目障りって言ってんの」

可愛らしい顔に似合わない言葉を吐くニコル。どうやら猫をかぶっていたらしい先ほどとの態度の違いに何も言えずにいると、彼女は私を鼻で笑った。

「伯爵家の娘だからってお高くとまってるんじゃないわよ。私みたいな平民とは話したくもないっていうの?」

魔導師局で働く人間に家柄は関係ない、とされている。実力主義の魔導師界は同じくらいの魔力を持つ貴族と平民が一緒に任務を遂行すいこうすることもあるくらいだ。彼女はどうやら平民出身らしい。

ニコルはそのまま柔らかな髪を揺らしながら、近づいてくる。

「さぞ気分がいいでしょうね、下の者を見下すのは。けどね、この世界ではたいして魔力もないあなたより、私の方が上」

指先でトン、と軽く体を押される。
私を見上げる彼女はこんな画角がかくでも可憐に見える。けど彼女が言っていることには間違いがある。

「一つ、訂正させて貰ってもいい?」

「……何よ」

「私はもう伯爵家の人間ではないの。縁を切ったから」

やっかみを受けるのには、慣れている。

「縁を……、切った……?」

「はい。つい先ほど」

にっこりと笑みを貼り付けると、ニコルがバツの悪そうな顔をして「いや」だとか「でも」だとか口をモゴモゴさせた。そんな私たちを見て何か思ったのか、ウイッチさんが口を開いた。

「ニコルさん、そのくらいにしていてください。その厄介な性格でこの前もトラブルを起こしたでしょう」

ウィッチさんの助けが身に染みる。彼女の正論に、ニコルはお決まりの捨て台詞ゼリフを吐いて二階へ行ってしまった。

「私、あんたなんかと仲良くするつもりないから!」

左様さようですか。

私はニコルが去ったことを確認してからウイッチさんに向き合って礼をした。

「助けてくれてありがとうございます、ウィッチさん」

「……いえ、目に余ったので」

彼女が眼鏡をクイ、と上に上げる。

──拝啓はいけい、フィルニタお兄様。
ニコルとは仲良くなれそうに、ありません。



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