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二章:人生の再出発
できるようになったこと
しばらくしてから、フィニルタお兄様は私の元にやって来た。
そのままお兄様に連れられ、三階の一番端にある部屋へと案内される。
部屋に入り、設置されていた椅子に座るとお兄様は苦虫を噛み潰したような顔をして、口を開いた。
「あのね、ロザリー。実は基本的に、シュラク支部の寮に魔導師以外が入ることは許されていないんだ」
えっ、初耳ですけど。
目を丸くしていると、お兄様は続けた。
「でもね、寮長は今不在なんだ。他の魔導師たちも遠征で1週間は帰ってこない。つまり、この寮にはエファウ、ケリー、ニコル、シュカーツァ、ウイッチ、と僕らしかいない。これが何を意味しているかわかるかい?」
「寮を乗っ取りでもするんですか?」
私の言葉にお兄様はちっちっちっ、と指を横に振った。
「ロザリーの住居が決まるまで、寮に住まわせてもらうんだ。幸いにも今この寮にいるのは、正義感の腐り果てた現金な奴ばかり。買収も容易いよ」
褒めているのか、貶しているのか。
曖昧な境界線だ。
お兄様は両手を顔の前で組んだ。
「僕はシュラク支部の魔導師だからこの寮から出てロザリーと住むことはできない。要するに、ロザリーは一人暮らしできる次の住居が決まるまでこの寮で暮らすんだ。この部屋は使っていないから自由に使って欲しい」
「遠征している魔導師が帰ってくるまでに急いで私の住居を探さないといけない、ということですね」
「そうなるね」
嫌悪感丸出しのニコルの表情を思い出す。
少しの間といえど、私はやっていけるのだろうか。一抹の不安が頭を過ぎる。
「シュラク支部の寮には他の支部の人間も出入りすることがあるから誤魔化せるように、制服を渡しておくね」
どこから出したのか、シュラク支部の制服を渡される。
「もし他の支部の人間が私が魔導師でないとバレてしまったらどうするんですか?」
「ああ、それなら安心して。魔導師は派遣される支部は違えど魔力が引き出せる人間全員がなれるものだから、ロザリーが魔導師でないとバレることはないよ」
「そう、でしたね……」
安堵のため息が漏れる。それなら他の支部の人間に会っても、私が魔導師でないと気付かれることはない。いちいち他の支部の魔導師一人一人を覚えている人間なんていないだろう。この寮も、国内に数あるシュラク支部の寮の一つに過ぎない。
「それじゃあ今日はゆっくりお休み」
「はい」
お兄様は静かに扉を閉めて去っていった。足音が遠ざかっていくのを確認してから、ベッドに駆け出してダイブする。
ベッド上で体が跳ねる。
んふふ、と自然に笑みが溢れた。貴族の令嬢だった頃はこんなことをすればお母様の平手打ちが飛んできた。けれど、今は違う。
私は、伯爵令嬢ではなくなったのだから。
できるようになったことがどんどん増えていくことに言葉ではとても言い表せない喜びを感じるのだった。
そのままお兄様に連れられ、三階の一番端にある部屋へと案内される。
部屋に入り、設置されていた椅子に座るとお兄様は苦虫を噛み潰したような顔をして、口を開いた。
「あのね、ロザリー。実は基本的に、シュラク支部の寮に魔導師以外が入ることは許されていないんだ」
えっ、初耳ですけど。
目を丸くしていると、お兄様は続けた。
「でもね、寮長は今不在なんだ。他の魔導師たちも遠征で1週間は帰ってこない。つまり、この寮にはエファウ、ケリー、ニコル、シュカーツァ、ウイッチ、と僕らしかいない。これが何を意味しているかわかるかい?」
「寮を乗っ取りでもするんですか?」
私の言葉にお兄様はちっちっちっ、と指を横に振った。
「ロザリーの住居が決まるまで、寮に住まわせてもらうんだ。幸いにも今この寮にいるのは、正義感の腐り果てた現金な奴ばかり。買収も容易いよ」
褒めているのか、貶しているのか。
曖昧な境界線だ。
お兄様は両手を顔の前で組んだ。
「僕はシュラク支部の魔導師だからこの寮から出てロザリーと住むことはできない。要するに、ロザリーは一人暮らしできる次の住居が決まるまでこの寮で暮らすんだ。この部屋は使っていないから自由に使って欲しい」
「遠征している魔導師が帰ってくるまでに急いで私の住居を探さないといけない、ということですね」
「そうなるね」
嫌悪感丸出しのニコルの表情を思い出す。
少しの間といえど、私はやっていけるのだろうか。一抹の不安が頭を過ぎる。
「シュラク支部の寮には他の支部の人間も出入りすることがあるから誤魔化せるように、制服を渡しておくね」
どこから出したのか、シュラク支部の制服を渡される。
「もし他の支部の人間が私が魔導師でないとバレてしまったらどうするんですか?」
「ああ、それなら安心して。魔導師は派遣される支部は違えど魔力が引き出せる人間全員がなれるものだから、ロザリーが魔導師でないとバレることはないよ」
「そう、でしたね……」
安堵のため息が漏れる。それなら他の支部の人間に会っても、私が魔導師でないと気付かれることはない。いちいち他の支部の魔導師一人一人を覚えている人間なんていないだろう。この寮も、国内に数あるシュラク支部の寮の一つに過ぎない。
「それじゃあ今日はゆっくりお休み」
「はい」
お兄様は静かに扉を閉めて去っていった。足音が遠ざかっていくのを確認してから、ベッドに駆け出してダイブする。
ベッド上で体が跳ねる。
んふふ、と自然に笑みが溢れた。貴族の令嬢だった頃はこんなことをすればお母様の平手打ちが飛んできた。けれど、今は違う。
私は、伯爵令嬢ではなくなったのだから。
できるようになったことがどんどん増えていくことに言葉ではとても言い表せない喜びを感じるのだった。
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