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二章:人生の再出発
奇妙な頭痛 sideラインハルト
ラインハルトはあまりの頭痛に頭を押さえた。ローザリンデと離縁してから、頭が痛むことは無くなっていたというのに。
ラインハルトは妻、ローザリンデと離縁してから早三日が経とうとしている。いつも通り仕事漬けの生活を送っていると、徹夜明けの早朝、専属魔導師が荒い息を吐きながらやってきた。
「庭が……、庭が……!」
ラインハルトは基本的に庭を見ない。
仕事が忙しくてそもそも書斎から出ないことは勿論だが、最大の理由は他にある。彼の愛する前婚約者、グラツィアが死んだのはクロツェル家の池だから。彼女が溺れる様を今でも思い出す。彼女の髪は透き通るように美しく……。
ラインハルトはそこまで考えた後、はっと我に帰った。
「どうかしたのか」
「外を直接見られた方がよろしいかと思われます!」
専属魔導師の言葉の通り、窓から外の景色を見やる。彼の目に映ったのは荒野だった。花壇は残っているものの、植えられていた植物は原型を留めていない。地面はひび割れ、土埃が舞っている。潤いのあった池は枯渇し、まるでローザリンデがこの屋敷に来る前のよう。いや、それよりも酷くなっているのかもしれない。
「これは、どういう、ことだ」
衝撃のあまり、言葉が途切れ途切れになる。
「昨日はまだここまで酷くはなかったのですが、今朝見るとこうなっておりまして……」
「理由はなんだ、早く言ってくれ」
萎縮している専属魔導師にラインハルトが痺れを切らし、机の端をトントンと叩く。
「は、はいっ。奥様……前奥様のローザリンデ様がお庭を整備していたことは知っておりますよね。これまでここの土地が以前のように荒れなかったのは、ローザリンデ様の魔力供給のおかげなのです」
「……それは知っている。だが、なぜ彼女が来る前よりも地面のひび割れが酷くなっているんだ?」
ローザリンデが庭で何やら作業をしていたのは何度か目にしていた。彼女が出向くたびに庭に緑が増えていたことも、知っている。
「これはあくまで私の考えなのですが、ローザリンデ様は無意識に魔力を放出していたのではないでしょうか。魔力は生命の源ですから、荒れていた大地を生き返らせるのに最適です。常に供給されていた魔力が急に消えたことでバランスが崩れ、大地にこれまで以上に負荷がかかった、と考えるのが妥当かと……」
(魔力を垂れ流して普通に生活することなんて、できるのか……?)
魔力は人間の生命の源とも言われており、魔力が枯れてしまうと命の灯も一緒に消える。だから、魔力を消費しながら生活なんてすれば、一日もせず倒れてしまうのは明白だ。けれど彼女はピンピンしている。それどころか花壇なんてものまで自作していた。
理由は彼女が膨大な魔力を秘めているということ以外にない。
だがそんなことは有り得るのか……?それほどの魔力を持っているなら、これまでに誰かが気づくはずだ。
ラインハルトが顔を顰めていると、圧をかけられていると解釈した専属魔導師が慌てたようにこう言った。
「土地をなるべく早く元に戻せるように、いたしますので!」
「よろしく頼む」
そう答えつつも、ラインハルトはどこか上の空だった。
『あなたのお姫さまになるひとはきっと幸せね』
かつてのグラツィアの言葉に、ローザリンデの声が重なる。
その瞬間、ずきん、と頭が痛みラインハルトは考えることを一旦やめた。
ラインハルトは妻、ローザリンデと離縁してから早三日が経とうとしている。いつも通り仕事漬けの生活を送っていると、徹夜明けの早朝、専属魔導師が荒い息を吐きながらやってきた。
「庭が……、庭が……!」
ラインハルトは基本的に庭を見ない。
仕事が忙しくてそもそも書斎から出ないことは勿論だが、最大の理由は他にある。彼の愛する前婚約者、グラツィアが死んだのはクロツェル家の池だから。彼女が溺れる様を今でも思い出す。彼女の髪は透き通るように美しく……。
ラインハルトはそこまで考えた後、はっと我に帰った。
「どうかしたのか」
「外を直接見られた方がよろしいかと思われます!」
専属魔導師の言葉の通り、窓から外の景色を見やる。彼の目に映ったのは荒野だった。花壇は残っているものの、植えられていた植物は原型を留めていない。地面はひび割れ、土埃が舞っている。潤いのあった池は枯渇し、まるでローザリンデがこの屋敷に来る前のよう。いや、それよりも酷くなっているのかもしれない。
「これは、どういう、ことだ」
衝撃のあまり、言葉が途切れ途切れになる。
「昨日はまだここまで酷くはなかったのですが、今朝見るとこうなっておりまして……」
「理由はなんだ、早く言ってくれ」
萎縮している専属魔導師にラインハルトが痺れを切らし、机の端をトントンと叩く。
「は、はいっ。奥様……前奥様のローザリンデ様がお庭を整備していたことは知っておりますよね。これまでここの土地が以前のように荒れなかったのは、ローザリンデ様の魔力供給のおかげなのです」
「……それは知っている。だが、なぜ彼女が来る前よりも地面のひび割れが酷くなっているんだ?」
ローザリンデが庭で何やら作業をしていたのは何度か目にしていた。彼女が出向くたびに庭に緑が増えていたことも、知っている。
「これはあくまで私の考えなのですが、ローザリンデ様は無意識に魔力を放出していたのではないでしょうか。魔力は生命の源ですから、荒れていた大地を生き返らせるのに最適です。常に供給されていた魔力が急に消えたことでバランスが崩れ、大地にこれまで以上に負荷がかかった、と考えるのが妥当かと……」
(魔力を垂れ流して普通に生活することなんて、できるのか……?)
魔力は人間の生命の源とも言われており、魔力が枯れてしまうと命の灯も一緒に消える。だから、魔力を消費しながら生活なんてすれば、一日もせず倒れてしまうのは明白だ。けれど彼女はピンピンしている。それどころか花壇なんてものまで自作していた。
理由は彼女が膨大な魔力を秘めているということ以外にない。
だがそんなことは有り得るのか……?それほどの魔力を持っているなら、これまでに誰かが気づくはずだ。
ラインハルトが顔を顰めていると、圧をかけられていると解釈した専属魔導師が慌てたようにこう言った。
「土地をなるべく早く元に戻せるように、いたしますので!」
「よろしく頼む」
そう答えつつも、ラインハルトはどこか上の空だった。
『あなたのお姫さまになるひとはきっと幸せね』
かつてのグラツィアの言葉に、ローザリンデの声が重なる。
その瞬間、ずきん、と頭が痛みラインハルトは考えることを一旦やめた。
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