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二章:人生の再出発
頼りっぱなしではいられない
磨き上げた窓を開け、荒野を見下ろす。
朝早く飛び起きて、屋敷の壁を持参した布巾で拭いたので、昼頃には染みや汚れは許容できるまでになった。埃を完全に拭き取ったことで窓を開けても埃臭さが充満しないことに満足感が増し、ふふふ、と声が漏れる。
けれどここで生活するにはまだ無理がある。食料や、水の確保など指を折っても数えきれないほどの課題が存在する。そこで思い浮かんだのはお兄様の顔。『できるだけ頼っていい』と言ってくれたけれど、妹として自分のできる範囲のことは頼れない。
そう考えた私は森を抜けたところにあるウルウ街へ赴くことにした。馬車の中から見た限りでは、小さいながらも市場があったはずだ。全体的に小さな町だが、活気あふれる街だと見受けられる。
埃まみれになってしまい、流石に外に出ることはできない状態なのでニコルから譲り受けた作業衣から着替えることにした私が鞄の奥底から衣類を見ていくと、これでもかとフリルのついたドレスと見紛うほどの服や、リボン過多でリボンに飲まれそうな服が発掘された。これらは全てお兄様から贈られたもので彼の趣味がよくわかる。お兄様の中で私はまだ幼い子供なのかもしれない。
結局、自分で用意していた茶を基調とした簡素なコルセットワンピースを見に纏い、屋敷を出ることとなった。
恐る恐る入った森は複雑ながらも一本道でできており、迷うことはなかったのだが、終始静かなので少し不気味だ。“静か”という恐ろしさを人生で初めて肌でひしひしと感じることになった。
無心を貫くことを意識しながら一歩一歩進んでいると、賑やかで明るい人々の声が聞こえた。それと同時に木々の影がなくなって一気に視野が明るくなり、ウルウ街に着いたことを知らされる。
森を抜けると、そこには広場が広がっていた。中央には噴水が鎮座している。その周りにウルウ街のシンボルとしてか多数のラベンダーの彫刻が並べられていた。しかし周りを見渡してみてもラベンダーはおろか花さえも見当たらない。
(時期じゃないってことなの?それにしても、春なのに花さえもないってどういうこと)
酒場と見受けられる看板にもラベンダーが描かれている。
この街には“花”が溢れている。だがそれは本物の花ではない。描かれていたり、彫刻されていたり……全て作り物の花なのだ。
意味がわからず噴水の周りで呆けていると、ここに住んでいると思われる一人の青年が声をかけてきた。
「あなた魔女なんですか」
朝早く飛び起きて、屋敷の壁を持参した布巾で拭いたので、昼頃には染みや汚れは許容できるまでになった。埃を完全に拭き取ったことで窓を開けても埃臭さが充満しないことに満足感が増し、ふふふ、と声が漏れる。
けれどここで生活するにはまだ無理がある。食料や、水の確保など指を折っても数えきれないほどの課題が存在する。そこで思い浮かんだのはお兄様の顔。『できるだけ頼っていい』と言ってくれたけれど、妹として自分のできる範囲のことは頼れない。
そう考えた私は森を抜けたところにあるウルウ街へ赴くことにした。馬車の中から見た限りでは、小さいながらも市場があったはずだ。全体的に小さな町だが、活気あふれる街だと見受けられる。
埃まみれになってしまい、流石に外に出ることはできない状態なのでニコルから譲り受けた作業衣から着替えることにした私が鞄の奥底から衣類を見ていくと、これでもかとフリルのついたドレスと見紛うほどの服や、リボン過多でリボンに飲まれそうな服が発掘された。これらは全てお兄様から贈られたもので彼の趣味がよくわかる。お兄様の中で私はまだ幼い子供なのかもしれない。
結局、自分で用意していた茶を基調とした簡素なコルセットワンピースを見に纏い、屋敷を出ることとなった。
恐る恐る入った森は複雑ながらも一本道でできており、迷うことはなかったのだが、終始静かなので少し不気味だ。“静か”という恐ろしさを人生で初めて肌でひしひしと感じることになった。
無心を貫くことを意識しながら一歩一歩進んでいると、賑やかで明るい人々の声が聞こえた。それと同時に木々の影がなくなって一気に視野が明るくなり、ウルウ街に着いたことを知らされる。
森を抜けると、そこには広場が広がっていた。中央には噴水が鎮座している。その周りにウルウ街のシンボルとしてか多数のラベンダーの彫刻が並べられていた。しかし周りを見渡してみてもラベンダーはおろか花さえも見当たらない。
(時期じゃないってことなの?それにしても、春なのに花さえもないってどういうこと)
酒場と見受けられる看板にもラベンダーが描かれている。
この街には“花”が溢れている。だがそれは本物の花ではない。描かれていたり、彫刻されていたり……全て作り物の花なのだ。
意味がわからず噴水の周りで呆けていると、ここに住んでいると思われる一人の青年が声をかけてきた。
「あなた魔女なんですか」
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