ローザリンデの第二の人生

梨丸

文字の大きさ
47 / 48
三章:夢を叶えて

意外なこと

「なんでって……もちろん仕事よ」

ニコルはにこりとも笑わず立ち上がった。「で、ローザリンデは?」と聞かれたので私も答える。

「私も仕事よ」

ニコルは侍女服に着いた埃を払い、かつらを脱いだ。改めて見るとなるほど、ニコルだ。真っ黒の長い髪にいつものファッションとは程遠い地味な格好をしていた彼女は明るい場所でじっくりと見ないとわからないほど別人のようだった。髪色まで変えようとするなんて大胆なイメチェンだろうか。

あれ、でも確か……。

「シュラク支部は副業ダメなんじゃないの?」

フライト支部と違ってシュラク支部には色々と制限がかかる。いわゆる副業は禁止だったのではないだろうか。それにしても侍女として働いていたなんて意外だ。頭を捻っているとニコルは私の額に指をそわせグリグリと押した。

「馬鹿ねぇ、副業なわけないでしょ。あんな下衆男の下で働くなら残業だらけの最悪of最悪の労働環境の魔導師局で働いたほうがマシ」

魔導師局の体制を褒めているのか貶しているのかわからないギリギリのラインをつくのが上手いなぁ、と感心する。さながらお兄様のようだ。

「魔導師局は年中人手不足なの。だから我々シュラク支部も別の支部に来た依頼を手伝わないといけない」

「だからいるのね」

私が納得しているとニコルは不機嫌そうに頭を傾けた。

「ローザリンデがフライト支部に入ったのはフィニルタ先輩から聞いたわ。だけど、初任務がこんなのなんて何考えてんのよ。てっきりシュラク支部だけが行う任務だと思ってた」

「どういう意味……?あまりいい響きじゃないけど」

「私と同じでジェルナ伯爵の調査に来たんでしょう。知ってる?ジェルナ伯爵は闇取引を通して他の貴族とも繋がってるの。どんな勢力が隠れているかもわからない、危険なの。それとね、いくら人手不足だとしてもシュラク支部が進んで請け負うのは重要性の高い任務ばかり」

「それはつまり、シュラク支部に回ってくるほど危ない任務ってこと、よね」

カルロはそんな素振りを見せなかった。私を安心させるため?

「あなた、誰と来てるの?もちろん他の魔導師と来てるのよね」

カルロの名を出すと、ニコルは大きなため息を隠そうともせずに吐いた。くるくるとカールした髪の毛を弄り始める。

「依頼が重複してフライト支部にも来たってこと?事務局の人たちちゃんと仕事してる?カルロ局長が直々に駆り出されるなんて、人手不足も甚だしいわ」

多分、フライト支部に来た依頼が人手不足によりシュラク支部に勝手に回されたのだろう。それを認知していなかったカルロがフライト支部としてこの任務に当たった──話が読めてきた。

「結界も壊れかけてるし、魔獣が来たらどうするのよ。予期せぬ戦闘もあるかもしれないし……何よりカルロ局長の魔法は戦闘向きじゃないのに……!よりにもよってカルロ局長!?」

顔を真っ青にしたニコルがだんだんヒートアップして捲し立て、私が狼狽えていると、彼女はこちらに指を向けて叫ぶように言った。

「あの人、運動神経最悪なのよ!!」

えっ、そうなの……?



感想 22

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

【完結】本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

愛していると気づいたから、私はあなたを手放します

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
愛しているのに、触れられない。 幼なじみの夫は、こう言った。 「もう、女性を愛することはできない」と。 それでも「君がいい」と言い続ける彼と、 子どもを望む現実の間で、私は追い詰められていく。 だから決めた。 彼のためにも、私は他の誰かを探す。 ――そう思ったのに。 なぜあなたは、そんな顔で私を追いかけてくるの? これは、間違った優しさで離れた二人が、 もう一度、互いを選び直すまでの物語。 ※表紙はAI生成イラストを使用しています。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。