私と貴方の報われない恋

梨丸

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アーシャ

3 再会

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 二十歳の秋。
 アーシャは自分の誕生日パーティーが行われているのにも関わらず、会場のバルコニーで涼んでいた。

 夜の風が心地よい。
 
 パーティー会場の中ではアーシャそっちのけでルイスが喋り続けている。
 アーシャははあ、とため息をついた。

 ルイスは私と婚約してから、しばらくして全くかまってくれないようになった。
 今日のパーティーでもルイスが一人で喋り続けている。

 バルコニーの手すりに腕を置く。
 
 もう少しで私はルイスと結婚することになる。

 ルイスの希望で、アーシャと彼が婚約していることは周囲には知らせていない。
 今日、結婚の発表をするつもりなのだが、ルイスのおしゃべりが終わるまでお預けだ。
 
 
 「こんばんは」

 アーシャが黄昏ているところに一人の男が声をかけてきた。

 一目でわかるほど、見た目は変わっていない。
 声をかけてきたのは、フェルナンだった。

 苦い想い出が蘇り、多少の気まずさを覚えながら挨拶を返す。

 「ごきげんよう」

 フェルナンの瞳に星が映る。
 昔は瞳自体が星のようだと褒めたりもしたものだ。
 

 アーシャとフェルナンは、それからたくさんの思い出話をした。
 アーシャはというと、思ったよりスムーズに話ができている自身に驚いていた。
 
 初恋の人と再会するって、こんな気持ちだったんだ。
 掴みどころのない雲を掴んでいる感じ。
 フェルナンに対して特に何も思わない。
 時が流れ、自分の中でフェルナンの印象が誇張されていたんだ。
 恋心と共に。
 
 アーシャは案外あっさりとしている自分の思考に笑ってしまった。

 「何笑ってんの?」
 「いや、なんでもない」

 アーシャが会場に戻ろうとする。

 「フェルナンも戻りなよ」

 昔のようにアーシャが手を差し出すと、フェルナンはその手を引っ張った。
 アーシャが目をまんまるにする。

 フェルナンは一呼吸おくとこういった。


 「アーシャのこと、好きだったんだ」


 アーシャは目を見開いた。

 何度妄想したことだろうか。
 フェルナンに告白される自分の姿を。

 「私も、よ」
 「えっ……」
 「でも」

 アーシャはフェルナンの言葉を遮った。
 フェルナンの言葉を聞いたら駄目な気がしたからだ。

 「私、結婚しますので」

 アーシャの声は、自分でも驚くほど冷ややかな声だった。

 「あ、そうか」

 フェルナンはへらっとした笑いを浮かべた。
 それからくしゃっと髪を掴んだ。



 「……遅かったか……」

 静寂が辺りを包み込む。


 その後フェルナンは他の貴族に呼ばれ、会場に入っていった。


 アーシャはその場でしゃがみ込み、つぶやいた。





 「……遅いよ」
 
 
 
 
 
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