私と貴方の報われない恋

梨丸

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フェルナン

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 一通の手紙が屋敷に届いた。

 どうやらそれはアーシャの二十歳の誕生日パーティーの招待状のようだった。
 両親は心底興味がなさそうに「行ってきなさい」とだけ言った。


 アーシャに、会える。
 それだけで毎日が頑張れた。

 両親はの貴族に毎日のように会わせる。
 俺は両親からを演じ続ける。
 毎日、毎日、毎日、毎日。
 愛想笑いにお世辞の日々。

 媚を売らないとこの世界貴族の世界では生きていけない。
 これが一番初めに教えられたことだ。
 次々とドス黒い現実を見せられる。

 そんな俺にとってアーシャの純粋さは光みたいなものだ。
 そして俺は埃を被った蛾のようなものだ。
 ただただ、光に憧れている。




 背広を身に纏い、アーシャの屋敷へと向かう。

 アーシャの屋敷には昔と変わらず、明るい光が灯っていた。


 会場の中には、アーシャの姿が見当たらなかった。
 このパーティーの主役のはずだが。

 中央ではルイス・アヴリーヌ伯爵令息が自慢げに笑っていた。

 アヴリーヌ伯爵は家の屋敷にも何度かきていたから知っている。
 小貴族から徴収したお金で遊んでいると自慢げに話していた。

 嫌悪感を覚え、バルコニーに出る。


 バルコニーにはアーシャが、いた。

 「こんばんは」と挨拶をする。
 何を話せばいいかわからなかった。
 
 アーシャは少し間を置き、「ごきげんよう」とだけ言った。

 彼女は驚くほど美しくなっていた。
 ふわふわの髪は腰まで伸びており、瞳の赤は深みを増していた。
 それと同時に、すっと消えそうなほどの儚さも感じた。

 固まっていると今度は彼女の方から話しかけてきた。

 「ねえ、昔星見たの覚えてる?」


 それからアーシャとたくさん話をした。
 話している間は昔に戻っているような気がして少し安心した。

 「フェルナンも戻りなよ」その言葉で我に帰った。
 思わずアーシャの腕を掴んでしまう。


 「アーシャのこと、好きだったんだ」


 言えるのは今しかない、そう思った。
 顔が火照る。
 アーシャは目をまんまるにした。
 本当に苺みたいだ。

 思わず身構える。
 しかし、アーシャの返事は俺が予想もしていないものだった。


 「私も、好きだったよ」


 驚きの声が漏れる。
 「でも」とアーシャがすかさず言った。


 「私、結婚しますので」


 冷たい声色に背筋が凍る。

 「あ、そうか」

 唇が震えて間の抜けた返事になってしまった。
 くしゃっと髪を握り、歯を噛み締める。


 「……遅かったか……」




 我に帰ったのは馬車の中でだった。
 どうやらずっと放心状態だったようだ。

 アーシャの心はもう俺から離れている。

 「もっと早く言っておけば……」


 後悔の言葉は暗闇に吸い込まれていった。
 
 



 




 
 
 
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