嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸

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二章:貴方に報復を

バルツァー公爵家の憂鬱

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バルツァー公爵家の長男、エーデルは自分の髪を無造作に掴んだ。
そしてくしゃり、と紙を握る。

「開拓の件はどうなっているんだ……!」

エーデルは半年ほど前から自分の弟──ロベルトに荒地・フェルバウムの開拓の指揮を頼んでいた。王家からの期待も大きく、絶対に失敗できない案件だ。勿論、多額の金が関わることになる。
このような重大な案件、本当は長男のエーデルが指揮をする予定だったのだが、ロベルトがどうしてもと言うので彼に任せることになったのだ。彼の両親はやたらとロベルトに甘い。エーデルはロベルトは幾つか功績を上げていた、という名目で開拓指揮の座を強制的に譲らされることとなったのだ。

そして先程届いたのはフェルバウムに魔毒が溜まり開拓が困難になった、という知らせだった。魔毒は整備されていない荒地などに溜まりやすく、人間に害を与える毒ガスのようなものである。どうやらロベルトは指揮はしていたものの、現場に足を踏みいれず口頭だけで指示をしていたようだ。ロベルトが現場の様子を見ようともせず、魔毒の対処ができなていないまま放置したのは目に見えている。

愚弟ぐていめ)

エーデルはロベルトへの恨み言を吐きそうになったが、侍女が怯えたように震えるのを見て我慢した。

彼はロベルトのような誰もがため息をつくような美貌は持ち合わせてはいなかった。深緑の髪に瞳。整った顔立ちではあるが、優しげな雰囲気を持ち合わせたロベルトと鋭い目つきの彼は比較するとくすんで見える。誰がどう見てものは弟の方だった。

しかもこの目つきのせいで周囲に怖がられてしまう。つくづく嫌になる。

「もう下がってくれ」

エーデルの言葉で侍女が小さく礼をし、書斎から出る。

開拓が遅れ、移住するはずだった者たちが路頭に迷っている。一刻も早く魔毒を抹消し、損害を抑えなければならない。それには早急な判断が必要だ。両親に悠長に相談している暇などない。
そう考えたエーデルは指に一枚の紙を挟みふっと息を吹きかけた。紙が燃え出し、あっという間に塵となる。

「エーメリー公爵に援助を頼むしかあるまい……あまり気は進まないが」

彼は物を瞬時に移動させる魔法を使うことができる。ただし、自分の持てる範囲のものだけだが。

彼が今送った紙にはエーメリー公爵へと、援助と魔毒専門魔導師の応援を頼みたいという旨の内容が書かれていた。

関係のない──弟と婚約しているという面では関係があるのだが──そんな家に迷惑をかけてしまうことになるので、心苦しい。胃が痛くなってきた。

エーデルが愚弟ロベルトにも連絡をしなければならない、と苦々しい表情を浮かべた時だった。

彼の目の前に小さな魔法陣が浮かび上がった。



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