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悪役令嬢と話し合いました1
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1カ月ほど経つと、パーティーメンバーで一番レベルの低かった私がレベル50に到達した。
レベル45を超えたあたりから、レベル上げに時間がかかるようになった。必要経験値は指数関数的に増えていくらしい。
「ゲームだったら1日なんだけどな。リアル時間の流れになると、長かったな」
ゲームだと数時間で日付が変わるもんね。
「これで、レベル差奇襲がなくなるから、レベル70のジョブを使える。俺が盾剣術士、英人は神聖術士にチェンジだ」
悠真君と英人君がゲームで使っていたキャラに戻り、攻略を進めた。
私のレベルが51になると、地下1階の階層ボスを倒し、以降は、私のレベルが上がるごとに1層ずつ下の階へ進んでいった。
そして、現在のエリアは地下5階、レベル55のボス部屋だ。
「ボスは火氷風土の四属性をランダムに使い分けてくる。今から3分ほどは土属性が強化され、弱点は風になる」
「りょーかい」
すさまじい暴風がボスを包んだ。弱点属性をついた私の魔法は、ボスのHPをゴリゴリ削っていった。
「すごいよー、レナちゃん。また攻撃力が上がったんじゃない?」
「えへへ。昨日晩に杖を改造してみたんだ」
こっちの世界はゲームと違って生産品の微調整ができる。それで、より強い武器を作れるようになっていた。
「……固定砲台ってのは、生産プレイヤー向きのジョブだったんだな。武器性能が露骨に威力に結び付いてる」
悠真君も感心していた。
「ラビリオ君のおかげでもあるから、ゲーム内じゃ再現できないと思うよ。彼の技術と、私のゲームスキルで相乗効果が起こるみたい」
おかげで、私はパーティー1番のダメージディーラーになっていた。
地下5階のボスを破って、レベル56のフロアに足を踏み入れると、周囲の様子がガラリと変わった。
「ジャングル……」
「5階までが手抜きだと散々言われたからな。密林に動物型の敵を出した」
なるほど。
「結果としてデータが重くなって戦闘中に回線落ちするプレイヤーが続出してな。特に死亡率の高いフロアとなったわけだが」
なにそれ。
「ゲーム世界に入り込めば回線落ちもないし、地球でプレイしていたときよりは楽かもな」
そんな話をしながら、攻略は順調に進んでいった。
悠真君と英人君が本来のレベル70ジョブに戻ったことで戦力に余裕ができて、サクサク進められた。
そして、しばらくして、
「あ、レベルアップしたよ。これでレベル56……」
そう言った瞬間、視界がブレた。
私の意識は何者かの手で背後から捕まれ、強制的に暗い沼へと引きずり込まれていった。
「ああ、やっと、やっと主導権を取り戻せたわ。エイトールにユウナ、よくも私の前に出られたものね」
口が勝手に動く。
こちらの世界に初めて来た時と同じだ。身体の制御が全くできなくなっていた。
「急にどうしたんだ、レナ?」
首を傾げて私に近付こうとするラビリオ君をアンジェラさんが制した。
「アンタ、何者だい?」
アンジェラさんは即座に私が私でなくなったことを見抜いていた。
「平民は黙ってなさい。私が八つ裂きにしたいのはそこの2人よ」
右手に魔力が集まっていく。
「ふふふ。魔導士としての私を強化してくれたことだけは、感謝してあげてもいいわ。これで焼き殺してあげ……」
「“スリープ”」
英人君の言葉と同時に、レイナの瞳が閉じた。
レベル差が5つ以上あると、“スリープ”の魔法が100%決まる。強敵のモンスターは睡眠耐性を持ってるから、ほとんど役に立たない仕様だと思ってたけど、人間相手だと強力だなぁ。
それにしても、何で急にレイナの意識が表に出たんだろう。
……レベル、かな。
乗っ取りの直前、魔導士のレベルが56になっていた。魔導士は公爵令嬢レイナのジョブだ。私のジョブは神聖術士55。レベルが逆転して、主導権が入れ替わったのか。
“スリープ”の魔法で、身体が眠った後も続く不思議な意識の中で、私は自分の中のもう一人の存在を強く感じていた。
それは、豪華なドレスを着て派手な化粧をした、私と同じ顔だけど全然似ていない女の子だった。
レベル45を超えたあたりから、レベル上げに時間がかかるようになった。必要経験値は指数関数的に増えていくらしい。
「ゲームだったら1日なんだけどな。リアル時間の流れになると、長かったな」
ゲームだと数時間で日付が変わるもんね。
「これで、レベル差奇襲がなくなるから、レベル70のジョブを使える。俺が盾剣術士、英人は神聖術士にチェンジだ」
悠真君と英人君がゲームで使っていたキャラに戻り、攻略を進めた。
私のレベルが51になると、地下1階の階層ボスを倒し、以降は、私のレベルが上がるごとに1層ずつ下の階へ進んでいった。
そして、現在のエリアは地下5階、レベル55のボス部屋だ。
「ボスは火氷風土の四属性をランダムに使い分けてくる。今から3分ほどは土属性が強化され、弱点は風になる」
「りょーかい」
すさまじい暴風がボスを包んだ。弱点属性をついた私の魔法は、ボスのHPをゴリゴリ削っていった。
「すごいよー、レナちゃん。また攻撃力が上がったんじゃない?」
「えへへ。昨日晩に杖を改造してみたんだ」
こっちの世界はゲームと違って生産品の微調整ができる。それで、より強い武器を作れるようになっていた。
「……固定砲台ってのは、生産プレイヤー向きのジョブだったんだな。武器性能が露骨に威力に結び付いてる」
悠真君も感心していた。
「ラビリオ君のおかげでもあるから、ゲーム内じゃ再現できないと思うよ。彼の技術と、私のゲームスキルで相乗効果が起こるみたい」
おかげで、私はパーティー1番のダメージディーラーになっていた。
地下5階のボスを破って、レベル56のフロアに足を踏み入れると、周囲の様子がガラリと変わった。
「ジャングル……」
「5階までが手抜きだと散々言われたからな。密林に動物型の敵を出した」
なるほど。
「結果としてデータが重くなって戦闘中に回線落ちするプレイヤーが続出してな。特に死亡率の高いフロアとなったわけだが」
なにそれ。
「ゲーム世界に入り込めば回線落ちもないし、地球でプレイしていたときよりは楽かもな」
そんな話をしながら、攻略は順調に進んでいった。
悠真君と英人君が本来のレベル70ジョブに戻ったことで戦力に余裕ができて、サクサク進められた。
そして、しばらくして、
「あ、レベルアップしたよ。これでレベル56……」
そう言った瞬間、視界がブレた。
私の意識は何者かの手で背後から捕まれ、強制的に暗い沼へと引きずり込まれていった。
「ああ、やっと、やっと主導権を取り戻せたわ。エイトールにユウナ、よくも私の前に出られたものね」
口が勝手に動く。
こちらの世界に初めて来た時と同じだ。身体の制御が全くできなくなっていた。
「急にどうしたんだ、レナ?」
首を傾げて私に近付こうとするラビリオ君をアンジェラさんが制した。
「アンタ、何者だい?」
アンジェラさんは即座に私が私でなくなったことを見抜いていた。
「平民は黙ってなさい。私が八つ裂きにしたいのはそこの2人よ」
右手に魔力が集まっていく。
「ふふふ。魔導士としての私を強化してくれたことだけは、感謝してあげてもいいわ。これで焼き殺してあげ……」
「“スリープ”」
英人君の言葉と同時に、レイナの瞳が閉じた。
レベル差が5つ以上あると、“スリープ”の魔法が100%決まる。強敵のモンスターは睡眠耐性を持ってるから、ほとんど役に立たない仕様だと思ってたけど、人間相手だと強力だなぁ。
それにしても、何で急にレイナの意識が表に出たんだろう。
……レベル、かな。
乗っ取りの直前、魔導士のレベルが56になっていた。魔導士は公爵令嬢レイナのジョブだ。私のジョブは神聖術士55。レベルが逆転して、主導権が入れ替わったのか。
“スリープ”の魔法で、身体が眠った後も続く不思議な意識の中で、私は自分の中のもう一人の存在を強く感じていた。
それは、豪華なドレスを着て派手な化粧をした、私と同じ顔だけど全然似ていない女の子だった。
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