冒険者ギルド受付の癒し枠~ネコ娘は追放系主人公が気になるようです

八華

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ネコ娘、気になる人ができる

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「くあ~、街の空気は汚ねーけど最高!」

 大通りで、大声でしゃべりながら伸びをする。上機嫌なアタイの尻尾しっぽは、無意識に揺れていた。

 武器を背負ったガサツな女が3人並んで歩いていても、大して目立ちはしない。この辺りはそんな奴らばっかりだ。

迷宮ダンジョンに比べりゃ、街は天国だな。さっさとギルドで魔石を換金してビール飲もうぜ」

 羊獣人のメリーはいつもビールばかり飲んでいる。奴の白いモコモコの髪の毛はビールの泡でできているのだ。

「メリー姐さんはいっつもビールっスね。ウチは笹焼酎がいいっス」
「なんだとササミ、仕事じゃぼーっとしてるくせに生意気言いやがって……」

 メリーが後輩のササミをにらむ。ササミは希少なパンダ獣人の家出娘だ。名家の出のはずだが、今じゃ見る影もなくこの界隈になじんでいた。

「ケンカすんなよ。楽しくいこうぜ」

 アタイはにらみ合う2人をたしなめた。仕事の後だってのに、元気な奴らだよ。

 アタイの名前はエルザ。虎獣人の格闘家だ。
 親友のメリーと後輩のササミと一緒に、ダンジョンを探索する冒険者をしている。

「しっかし、ギルドの受付、ウチはちょっと苦手なんスよね。あの嫌味ったらしいウサギの受付嬢、男に色目ばっかつかって、ウチらには態度悪いじゃないっスか」

 冒険者ギルドへ向かう道で、ササミがぼやく。

「ああ~、アイツか。男の冒険者を操縦するために受付にああいうブリブリな女を置いてるんだろうけど、冒険者の4割は女なんだ。アタイたちのために、イケメンの受付を雇ってくれてもいいのにな」
「イケメン?」

 メリーに聞き返されて、アタイは想像をふくらませる。

「そうだなぁ。こう、青い目でサラサラの金髪。シュッとして背が高くて……」
「ぶはは。相変わらず、エルザはモヤシみたいな絵本の王子様にあこがれてんだな」

 アタイの言葉をさえぎって、メリーが小馬鹿にしてきた。

「うるせぇ! だいたい、ゴツイ男なんて周りの冒険者見てみろ、ろくなのいねーだろ!」

 言い争いながら、ギルドの扉をくぐった。
 ダンジョンの狩りで出た肉や素材は現地売りしてしまうが、一番貴重な魔石だけはギルドに持ち込んで売ることになっている。それが冒険者のメイン収入だ。
 館内では、仕事終わりの女冒険者が1本の列を作っていた。

「何だ?」

 兎獣人のミミーの列が、いつもよりすいている。となりに、新人の受付が入ったらしい。

「おい、これは何の列だい?」

 列の最後尾に知り合いがいたので聞いてみた。

「新しい男の受付が入ったんだよ。スゲー美形なんで、女どもが騒いでんだ」

 教えてくれた鷹獣人のルコもテンションが上がっていた。

「ついさっき話題にしていたよな、男の受付。タイムリーだな」

 メリーが興味深そうに、受付の姿を見ようと背伸びをする。だが、前に並んだたくさんのゴツイ女が壁になって、確認できないようだった。

「急がないし、並んでみるか」
「そうだな」

 みんなダンジョンでとってきた魔石を換金するだけだ。そう時間はかからない。

 待っているとスルスルと列がはけてゆき、アタイたちの番になった。

冒険者証ギルドカードを確認しました。……魔石の換金ですね。こちらにお出しください」
「…………」

 笑顔で迎えてくれた受付を見て、アタイはしばらく固まってしまった。
 金髪に青い目、肌は色白だが不健康そうなところは全くない。種族は多分ヒューム。小さい頃に絵本を見て想像していた王子様そのものが目の前にいた!

「……どうかされましたか?」

 硬直するアタイを見て、不思議そうにイケメン受付が首をかしげる。かわいいかっこいい。何時間でも見ていられそうな顔だった。どうしよう、緊張で身体が動かない。

「ああ、悪ぃ。うちのリーダー、たまにコミュ障になるんだ」

 アタイに代わって、メリーが手続きを済ませてくれた。彼女とササミに引っ張られて、アタイはギルドを出た。


「……何だい、あの受付は……」
「需要のあるところにはやがて供給がくるってことっスかね。エルザ姐さんが望んでいたイケメンの受付っスよ」

 のぼせるアタイの横で、ササミが冷静に分析する。なるほど、神様が願いを叶えてくれることって、本当にあるのかもしれない。

「供給過剰だろ! あれじゃ、お洒落したいって言っている田舎ギャルに、高級ブランドの絹のドレスを送り付けているようなもんだ。赤字で破産しちまうだろ」

 口の悪いメリーのツッコミも、今のアタイには効果がない。高級ブランドの絹のドレス……絹かぁ。

「そうだな、毛穴がひとつもないみたいな肌してた。絹みたいになめらかな……」
「おい、エルザ、だいじょうぶか!?」
「メリー姐さんの嫌味がきかないエルザ姐さんを見るのは珍しいっス」

 2人が何か騒いでいるけど、あんまり話が頭に入ってこなかった。そのまま3人で予定通り酒場に向かう。
 居酒屋が並ぶ通りは、安い魔石のぼんやりとした灯りに照らされていた。

 酒に強いアタイは、ダンジョンから出るといつも大酒を飲んで騒ぐ。でも、その日は妙に頭がポーっとなって、あまり飲めなかった。
 出された料理を普段より小さな口で食べていると、「乙女化しててきもちわるい」とメリーにからかわれた。言い返す気にもならない。
 ずっと浮ついた変な気分で、早めにアパートへと引き上げた。
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