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ジスゴロスの腹巻きブーム
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夜の街、とある酒場の丸テーブルで、大柄の男冒険者の一団が顔を突き合わせていた。
「それで、犯人はあのクソイケメン受付だったのか」
大きなツノのある牛獣人の巨漢が、チュウキチに確認する。
「へい、モウスケさん。あのヤローが腹を冷やすなと言ったのを、エルザちゃんが真に受けてしまったようです」
「俺たちのオアシスを……」
「クソ……、何てヤローだ」
男たちから怨嗟の声が漏れる。
「奴が受付に来たときから気に入らなかった。薄っぺらい容姿だけで女にチヤホヤされやがって……」
モウスケと呼ばれた牛獣人のジョッキを持つ手がわなわなと震える。
「一度、痛い目をみせて制裁しましょう。受付職員は早朝に裏口からギルドに入ります。そこを狙って……」
チュウキチが提案すると、我が意を得たりとモウスケが身を乗り出した。
「よし! さっそく明日の朝、決行だ!」
冒険者ギルドの表門は大通りに面しているが、職員は細い路地を通って裏口から中に入る。夜明け前、入り組んだ脇道の1つに隠れて、男たちはルイスを待った。
「くくく……。今に見てろよ、イケメン滅ぼしてやる」
だが、そこに3つの人影が現れた。
「なっ……エルザちゃんっ!?」
エルザとメリー、ササミの3人だった。
「モウスケにチュウキチ……、人の多い酒場で不用心だったね。近くで耳にした知り合いが教えてくれたよ。悪巧みを聞いたときは耳を疑ったけど、本当にやるなんて……」
メリーの声のトーンはいつもより低い。
男たちが隠れていた路地は行き止まりで逃げ道がなかった。
「よくも……、よくもルイスを狙ったね……」
怒り心頭のエルザが指の関節をポキポキと鳴らす。
バキッドゴッ! ゲシッ……
ルイスを制裁すると言っていた男たちは、逆にエルザたちによって鉄拳制裁を食らうのだった。
朝の白い光が路地を照らす頃、ルイスは出勤途中の道に血のシミを見つけた。細い脇道に、数名の男が倒れている。
「だ……大丈夫ですか!? 一体何が……」
彼は倒れている男たちのもとに走り寄った。
「うっ……」
モウスケがうっすらと目を開ける。彼は誰かに抱えられていた。
「気づかれましたか? 怪我をされているので、医務室に運びますね」
モウスケの太もも下側と腰が、ルイスによって支えられている。つまり、モウスケはルイスにお姫様抱っこされていた。
「モッ……!?」
モウスケの身体が硬直する。彼は至近距離で異様に整ったルイスの顔を見る羽目になった。
「大丈夫ですよ。一緒に倒れていたお仲間も運んで、手当しますから」
怪我人を安心させるイケメンスマイルを見せて、ルイスは彼らをギルドの医務室のベッドに並べていった。
ルイスは男たちの傷を消毒し、ていねいに包帯を巻いた。
「クシャン……」
治療があらかた済んだところで、モウスケはうっかりくしゃみをしてしまった。
「今朝は涼しかったですから、お腹を出した格好で外に倒れていたのは、良くなかったかもしれませんね」
ルイスが指摘する通り、モウスケは自分の6つに割れた腹筋を見せびらかすために、肩と関節をガードする防具しか身につけていない。上半身はほぼ裸だった。
「女冒険者さんが目立っていましたが、男の方もお腹を冷やすのはよくないですね。これをどうぞ」
モウスケはルイスからホルスタイン柄の腹巻を受け取った。
「……暖かい」
腹巻をしてみて初めて、モウスケは自分のお腹が冷えていたことに気がついた。
そういえば、酒を飲んでよく下痢をするのは、冷えが原因の1つだったのかもしれない。モウスケは飲み会の途中でトイレに行くのがコンプレックスだった。
これからは、お腹をちゃんと温めよう。
仲間たちも似たり寄ったりの恰好だったので、ルイスから1枚ずつ腹巻をもらっていた。
ルイスはそこらの女子より優しかった。
暴漢たちは人生で初めて、美形に親切にされるという経験をしたのだった。
* * *
夕暮れ時の冒険者ギルドは今日も混んでいる。
受付のルイスの列は、以前よりさらに長くなっていた。ルイスの顔につられた女冒険者だけでなく、なぜか、男冒険者までちらほらとルイスの列を選んでいるのだ。彼らは一様に、毛糸の腹巻を身に着けていた。
「エルザちゃん、この間は悪かったな。俺たちは腹巻の大切さを知らなかったんだ。これからは腹巻仲間として、また仲良くしてやってくれよ」
エルザは前に並ぶチュウキチに声をかけられた。彼のお腹には、グレーとピンクのリバーシブルな腹巻があった。
その後、ジスゴロスの街の冒険者たちの間で、空前の腹巻ブームが起こるのだった。
「それで、犯人はあのクソイケメン受付だったのか」
大きなツノのある牛獣人の巨漢が、チュウキチに確認する。
「へい、モウスケさん。あのヤローが腹を冷やすなと言ったのを、エルザちゃんが真に受けてしまったようです」
「俺たちのオアシスを……」
「クソ……、何てヤローだ」
男たちから怨嗟の声が漏れる。
「奴が受付に来たときから気に入らなかった。薄っぺらい容姿だけで女にチヤホヤされやがって……」
モウスケと呼ばれた牛獣人のジョッキを持つ手がわなわなと震える。
「一度、痛い目をみせて制裁しましょう。受付職員は早朝に裏口からギルドに入ります。そこを狙って……」
チュウキチが提案すると、我が意を得たりとモウスケが身を乗り出した。
「よし! さっそく明日の朝、決行だ!」
冒険者ギルドの表門は大通りに面しているが、職員は細い路地を通って裏口から中に入る。夜明け前、入り組んだ脇道の1つに隠れて、男たちはルイスを待った。
「くくく……。今に見てろよ、イケメン滅ぼしてやる」
だが、そこに3つの人影が現れた。
「なっ……エルザちゃんっ!?」
エルザとメリー、ササミの3人だった。
「モウスケにチュウキチ……、人の多い酒場で不用心だったね。近くで耳にした知り合いが教えてくれたよ。悪巧みを聞いたときは耳を疑ったけど、本当にやるなんて……」
メリーの声のトーンはいつもより低い。
男たちが隠れていた路地は行き止まりで逃げ道がなかった。
「よくも……、よくもルイスを狙ったね……」
怒り心頭のエルザが指の関節をポキポキと鳴らす。
バキッドゴッ! ゲシッ……
ルイスを制裁すると言っていた男たちは、逆にエルザたちによって鉄拳制裁を食らうのだった。
朝の白い光が路地を照らす頃、ルイスは出勤途中の道に血のシミを見つけた。細い脇道に、数名の男が倒れている。
「だ……大丈夫ですか!? 一体何が……」
彼は倒れている男たちのもとに走り寄った。
「うっ……」
モウスケがうっすらと目を開ける。彼は誰かに抱えられていた。
「気づかれましたか? 怪我をされているので、医務室に運びますね」
モウスケの太もも下側と腰が、ルイスによって支えられている。つまり、モウスケはルイスにお姫様抱っこされていた。
「モッ……!?」
モウスケの身体が硬直する。彼は至近距離で異様に整ったルイスの顔を見る羽目になった。
「大丈夫ですよ。一緒に倒れていたお仲間も運んで、手当しますから」
怪我人を安心させるイケメンスマイルを見せて、ルイスは彼らをギルドの医務室のベッドに並べていった。
ルイスは男たちの傷を消毒し、ていねいに包帯を巻いた。
「クシャン……」
治療があらかた済んだところで、モウスケはうっかりくしゃみをしてしまった。
「今朝は涼しかったですから、お腹を出した格好で外に倒れていたのは、良くなかったかもしれませんね」
ルイスが指摘する通り、モウスケは自分の6つに割れた腹筋を見せびらかすために、肩と関節をガードする防具しか身につけていない。上半身はほぼ裸だった。
「女冒険者さんが目立っていましたが、男の方もお腹を冷やすのはよくないですね。これをどうぞ」
モウスケはルイスからホルスタイン柄の腹巻を受け取った。
「……暖かい」
腹巻をしてみて初めて、モウスケは自分のお腹が冷えていたことに気がついた。
そういえば、酒を飲んでよく下痢をするのは、冷えが原因の1つだったのかもしれない。モウスケは飲み会の途中でトイレに行くのがコンプレックスだった。
これからは、お腹をちゃんと温めよう。
仲間たちも似たり寄ったりの恰好だったので、ルイスから1枚ずつ腹巻をもらっていた。
ルイスはそこらの女子より優しかった。
暴漢たちは人生で初めて、美形に親切にされるという経験をしたのだった。
* * *
夕暮れ時の冒険者ギルドは今日も混んでいる。
受付のルイスの列は、以前よりさらに長くなっていた。ルイスの顔につられた女冒険者だけでなく、なぜか、男冒険者までちらほらとルイスの列を選んでいるのだ。彼らは一様に、毛糸の腹巻を身に着けていた。
「エルザちゃん、この間は悪かったな。俺たちは腹巻の大切さを知らなかったんだ。これからは腹巻仲間として、また仲良くしてやってくれよ」
エルザは前に並ぶチュウキチに声をかけられた。彼のお腹には、グレーとピンクのリバーシブルな腹巻があった。
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