悪役令嬢の兄に転生したみたいだけど…

八華

文字の大きさ
9 / 15

ヒロイン

 俺が妹の敵意を主に受けているためか、ヒロインに危害はいってないらしい。その点だけは良かったよ、本当に。
 でも、ヒロインと王子の仲も進展していない。というより、別のルートに入ったかもしれない。


 昼休み、俺は王子たちと食堂でランチを食べていた。
 同席するメンバーはカルロス王子、アルマン、ヒューゴの攻略対象者3名とヒロイン、それに俺だ。
 俺は王子のすぐ隣の席に座らされた。
 ヒロインは、アルマンの隣に居る。2人は仲良さそうに会話を楽しんでいる。

 そこへ、邪魔者、もとい、うちの妹がやってきた。

「王子と平民が同席しているとはどういうことですか! 平民、すぐに下がりなさい。」
「エリカ!」

 まーた妹が王子に迷惑かけにきたよ。俺はすぐに立ち上がって妹を引き下がらせようと思ったが、隣に居た王子に袖を引かれて押し留められた。

「お前が出る必要はない。アルマンに花を持たせてやれ。」

 こっそりと王子に耳打ちされた。

「エリカ嬢、平民、平民と仰いますが、マリアは優れた能力を持っています。肩書きに縛られず、中身を見るべきではないですか?」

 アルマンがヒロインを庇って妹を諭す。ん? そういえば、こんな場面、ゲームにもあったな。アルマンがマリアの良さを悪役令嬢に語るんだ。

「アルマン様……。狡賢い平民、アルマン様に取り入って。」

 妹がヒロインを睨む。

「確かに、マリアは一生懸命に貴族に取り入っているでしょう。慣れない環境の中で頑張って、我々に合わせてくれているのです。でも、それは誰かを利用して自分の利益を得たいという短絡的な思考からじゃない。与えられた環境で自分を磨き、能力を発揮する場に進んでいるのです。」

 いや、俺にはマリアは男受け狙ったぶりっ子に見えるんだけど……。アルマンの前では絶対に言えないな。まあ、多少騙されているところがあったとしても、マリアはそこまで悪い女じゃないだろう。

「アルマン様、そんな風に思って下さっているなんて……。私、嬉しいです! すごく! ありがとうございます。」

 瞳をうるうるさせながらヒロインが言う。こういうところがぶりっ子っぽいんだよな。で、女に嫌われそうな。

「卑しい平民が。色仕掛けでもしたのですか?」

 案の定、苛立った妹は手を出しそうな勢いでヒロインに迫ろうとする。アルマンがヒロインを自身の背に隠した。

「いい加減にしろ、エリカ。食堂で騒ぐな。飯がまずくなる。」

 潮時と思ったのか、王子が鶴の一声を放った。

「食べないなら出て行け。埃が立つ。」
「……カルロス様。」

 王子と目が合うと、妹の瞳が涙で潤んだ。彼女は背を向けて、逃げるように去っていった。
 王子が怒ると妹はそれ以上駄々をこねない。カルロス王子は怖いからなぁ。俺だって逆らえねーよ。



 別の日。

「王子と、皆様に相談があります。」
「分かった。サロンに行こう。」

 アルマンの話を聴くことになって、王子と俺、ヒューゴで談話室に行った。

 校舎内のサロンはランク別にいくつかあって、当然、王子は一番良い部屋に入った。部屋は専用の執事が管理している。
 落ち着いたセンスの良い調度品に囲まれて、出された紅茶を王子が一口含んだところで、アルマンが話し出した。

「マリアと婚約しようかと考えているのです。」
「ふむ、なるほど。お前、これまで婚約者は?」
「居ませんでした。家の事情で、どうしても魔力に秀でた娘を求めていて。王に頼んで、外国の貴族からでも見合いを頼もうかとまで考えていたところでした。」

 アルマンの家、宰相家は優れた文官を輩出してきた。けれど、最近では魔術師としては二流止まりだった。
 アルマンが宰相家では一番の魔術師らしいが、それでも、学力テストほど優れた結果は出せていない。
 文官の能力も評価されるとはいえ、貴族としての一番の価値は軍事力だ。魔術師として国のために武名をあげられないなら、爵位を下げられても文句は言えない。
 マリアと結婚すれば、その後のマリアの活躍は、宰相家のものとなる。さらに、マリアの子どもは、優れた魔術師の血を受け継ぐ可能性もある。

「父含め主だった一族の者には話してありますが、特に反対はありませんでした。」

 だろうな。相手は平民だが、これは政略結婚としても成り立つ。

「いいんじゃないか? 大貴族の結婚だから、父に伝えて、手続きは色々あるだろうが、通るだろう。」

 貴族の大きな行動は王家に管理されていて、婚姻には許可が要る。過去に平民との結婚が許されずに駆け落ちする貴族もいたらしい。けど、今回の結婚は宰相家の益になるだけでなく、マリアを貴族に取り込むことで、確実に戦力化できるっていう、国全体のメリットもある。

「いい縁だな。家としての益もあるし、お前とマリアは、気も合うようだったから。」

 王子が言うと、アルマンは少し照れたように微笑んだ。

「はい。マリアの魔力とは関係なく、彼女に惹かれていたと思います。それが一族にも受け入れてもらえて、本当に良かった。」

 何て言うか、幸せそうだな。
 これで、ゲーム主人公はハッピーエンドだ。俺の家が没落する可能性も大分減ったかもしれない。

 ん? マリアがアルマンと結ばれて、王子は妹と婚約したままだよなぁ。これって、このまま妹が大きな失態をしなければ、そのまま王子と結婚できる可能性もある!??


……なんて、期待していたんだけどなぁ……。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない

As-me.com
恋愛
完結しました。 自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。 そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。 ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。 そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。 周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。 ※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。 こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。 ゆっくり亀更新です。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

モブ令嬢アレハンドリナの謀略

青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。 令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。 アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。 イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。 2018.3.26 一旦完結しました。 2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!