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モントレー伯爵家の財政は、もともと綱渡りの状態だった。
それでもエドモンは、領民の生活を守ることを最優先にし、私財を投じてでも税を上げずに耐えてきた。
だが――その均衡が、ついに崩れた。
外国人商人による投資話だった。
新しい農業設備の導入と流通経路の拡張を提案され、利益は数年で回収できるという甘い条件だったらしい。
エドモンは慎重な人間だったが、領地再建の希望が見えたことで判断を誤った。
結果は、惨憺たるものだった。
資金は消え、契約は曖昧で、責任の所在も追えない。
完全な損失だった。
その負債額は、伯爵家単独では到底背負いきれない規模に膨れ上がっていた。
そして――。
モーリスが現れた。
「借金は私が肩代わりしよう」
上機嫌な声音だった。
だが、続いた言葉は、条件とは呼べないほど露骨だった。
「その代わり、爵位を譲ってもらおう。あと、兄さんが相続した土地もです」
その場は、怒りに震えたエドモンが追い返したが、現実は厳しく変わらなかった。
数日後、エドモンは蒼白な顔でソフィアとルイの前に立った。
「……すまない」
それだけだった。
誇り高い伯爵が、深く頭を下げた。
ルイの胸に重いものが落ちる。
「義父上……」
「私の判断ミスだ。家を……潰すかもしれない」
ソフィアが嗚咽を漏らした。
ルイは何も言えなかった。
だが――心の奥では別の思考が動いていた。
(……出来すぎている)
外国人投資。
巨額損失。
そこへ現れるモーリス。
爵位譲渡の要求。
(これも……仕組まれたことでは?)
そして追い討ちが来た。
ある日、ルイの執務室にモーリスが訪ねてきた。
扉を開けた瞬間から、機嫌の良さが滲んでいた。
「良い知らせがある。兄さんが爵位を譲ると言ってきた。土地の譲渡は拒否されたが…まあ、あれはどうにでもなる。これからは、私がモントレー伯爵だ」
ルイは静かに書類を置いた。
「……そうですか」
「そこでだ」
モーリスは椅子に腰掛け、当然のように続けた。
「君にはこの家に残ってもらう」
「……残る?」
「リゼットの婿になってもらう」
一瞬、思考が止まり、胸の奥に怒りが爆発しかける。
(冗談じゃない)
胸の奥で、激しい拒絶が爆発しかけた。
リゼットと婚姻など。
考えるだけで吐き気がする。
思わず手が震えそうになるのを、ルイは強く拳を握り込んで抑え込んだ。
ルイは表情を一切変えなかった。
視線も声も、あくまで冷静さを保ったまま、ゆっくりと息を吸う。
「……理由を伺っても?」
「優秀な男を手放すのは惜しい。それに君はもう家族だろう?」
モーリスの笑顔には打算が見え隠れしていた。
胸の奥に、強烈な嫌悪が広がる。
同時に――別の思考が生まれた。
(……内部に入れる)
その瞬間、感情とは別の場所で、冷たい理性が働き始める。
これは機会だ。
リゼットと婚姻を結ぶ事により、事件を内側から調べられる。証拠を掴みやすくなり、復讐の機会にも近づく。
だが。
(アデルを……モントレー家を……裏切ることになる)
胸が締め付けられた。
すぐに答えは出せない。
「……少し、考えさせてください」
それが限界だった。
モーリスは満足げに頷いた。
「ああ、もちろん。いい返事を期待しているよ」
モーリスが去ったあとも、ルイはしばらく席を立つことができなかった。
閉じられた扉を見つめたまま、思考がまとまらない。
(どうするべきか……)
胸の奥で、複数の感情がぶつかり合っていた。
怒り。嫌悪。葛藤。そして復讐心。
そのすべてが混ざり合い、重たい塊となって心に沈んでいる。
やがてルイはゆっくりと息を吐き、立ち上がった。
考えを整理するためにも、少し場所を変えた方がよいと思った。
自然と足は離れの方へ向かう。
ノクスの様子を見に行くつもりだった。
ノクスが眠る部屋の扉を開けた瞬間、違和感に気づいた。
寝台の上にいるはずの男の姿がない。
「……?」
室内を見回したが、人の気配は感じられない。
そのときだった。
背後に、音もなく気配が生まれた。
「驚いたか?」
振り向くと、そこには寝巻き姿のノクスが立っていた。
肩にはまだ包帯が巻かれているものの、立ち姿は驚くほど安定している。
数日前まで重傷を負っていたとは思えない回復ぶりだった。
「だいぶ本調子になってきた」
軽く笑いながら言う。
ルイは眉をひそめた。
「……最初から部屋にいたのか?」
「ああ。気配を感じなかっただろう?」
ノクスは肩をすくめる。
「諜報には必須の技術だ。俺の得意分野でもある」
その口調は穏やかで、どこか楽しそうですらあった。
ルイはしばらく彼を観察してから、率直に言った。
「……お前は本当に回復が早いな」
「影なんてやる人間はそんなものさ」
ノクスは気軽に答えながら、ベッドに腰を下ろし、そのまま背中を預けた。
そして何気ない調子で続ける。
「あんたの復讐、手伝ってやってもいいぜ?」
予想外の言葉だった。
ルイは思わず目を見開く。
「……何を言っている?」
「ここ数日、暇だったからな。気配を消して本邸の中を少し歩かせてもらった」
悪びれる様子はない。
「事情はだいたい把握したつもりだ。あんたには助けられた借りもあるし、俺は借りを返すタイプなんだ」
軽い言い方だったが、目の奥は鋭かった。ルイは小さく息を吐く。
「裏の人間は義理堅いのか?」
「ふふ……俺がそうなんだ」
ノクスはわずかに笑い、それから真っ直ぐにルイを見据えた。
「あの男――次期伯爵になると名乗っていた男は、ひどい顔をしていたな」
「……ひどい顔?」
ルイは首を傾げた。
モーリスは確かに信用できる人物ではないが、外見だけなら整っている。年齢相応の貫禄もあり、社交界ではむしろ好印象を与える部類だった。
しかしノクスは首を横に振る。
「見た目の話じゃない」
静かに続ける。
「俺には、人の顔が歪んで見えてしまう。欲望や野心で他人を欺く人間は、ひどく醜く見えるんだ」
ルイは黙って聞いていた。
「逆に、普通の顔に見える人間の方が珍しいくらいだ」
そこでノクスはわずかに口元を緩める。
「あんたの顔は歪んでいない。真っ当な顔だ。だから……主人として協力してもいいと思っている」
願ってもない言葉だったが、すぐに続きが来る。
「ただし、条件がある」
ノクスの目が一瞬で冷えた。
「俺を裏切った連中を生かしておく気はない。先にそいつらを片付ける」
殺意が、言葉の奥に明確に存在していた。ルイは静かに問い返す。
「……すぐには協力できないということか」
「ああ。あいつらを片付けてからだ。ただし嘘はつかない。あんたとは連絡を取り続けるし、復讐が終わったら全面的に力を貸す」
ノクスは真っ直ぐにルイを射抜く。
「終わるまでの時間は読めないけどな。数日かもしれないし、何年かかるかもしれない。途中で俺が死ぬ可能性もある」
軽く笑う。
「未知数だ」
ルイはしばらく考え、やがて小さく頷いた。
「……わかった」
不思議なほど、この男とは感覚が噛み合っていた。
出会って間もないはずなのに、互いに同じ方向を見ている感覚がある。
そして、はっきりと直感した。
(この男の協力は不可欠だ)
復讐のために。
真実を暴くために。
その瞬間、ルイは初めて、自分に確かな味方ができたのだと感じていた。
それでもエドモンは、領民の生活を守ることを最優先にし、私財を投じてでも税を上げずに耐えてきた。
だが――その均衡が、ついに崩れた。
外国人商人による投資話だった。
新しい農業設備の導入と流通経路の拡張を提案され、利益は数年で回収できるという甘い条件だったらしい。
エドモンは慎重な人間だったが、領地再建の希望が見えたことで判断を誤った。
結果は、惨憺たるものだった。
資金は消え、契約は曖昧で、責任の所在も追えない。
完全な損失だった。
その負債額は、伯爵家単独では到底背負いきれない規模に膨れ上がっていた。
そして――。
モーリスが現れた。
「借金は私が肩代わりしよう」
上機嫌な声音だった。
だが、続いた言葉は、条件とは呼べないほど露骨だった。
「その代わり、爵位を譲ってもらおう。あと、兄さんが相続した土地もです」
その場は、怒りに震えたエドモンが追い返したが、現実は厳しく変わらなかった。
数日後、エドモンは蒼白な顔でソフィアとルイの前に立った。
「……すまない」
それだけだった。
誇り高い伯爵が、深く頭を下げた。
ルイの胸に重いものが落ちる。
「義父上……」
「私の判断ミスだ。家を……潰すかもしれない」
ソフィアが嗚咽を漏らした。
ルイは何も言えなかった。
だが――心の奥では別の思考が動いていた。
(……出来すぎている)
外国人投資。
巨額損失。
そこへ現れるモーリス。
爵位譲渡の要求。
(これも……仕組まれたことでは?)
そして追い討ちが来た。
ある日、ルイの執務室にモーリスが訪ねてきた。
扉を開けた瞬間から、機嫌の良さが滲んでいた。
「良い知らせがある。兄さんが爵位を譲ると言ってきた。土地の譲渡は拒否されたが…まあ、あれはどうにでもなる。これからは、私がモントレー伯爵だ」
ルイは静かに書類を置いた。
「……そうですか」
「そこでだ」
モーリスは椅子に腰掛け、当然のように続けた。
「君にはこの家に残ってもらう」
「……残る?」
「リゼットの婿になってもらう」
一瞬、思考が止まり、胸の奥に怒りが爆発しかける。
(冗談じゃない)
胸の奥で、激しい拒絶が爆発しかけた。
リゼットと婚姻など。
考えるだけで吐き気がする。
思わず手が震えそうになるのを、ルイは強く拳を握り込んで抑え込んだ。
ルイは表情を一切変えなかった。
視線も声も、あくまで冷静さを保ったまま、ゆっくりと息を吸う。
「……理由を伺っても?」
「優秀な男を手放すのは惜しい。それに君はもう家族だろう?」
モーリスの笑顔には打算が見え隠れしていた。
胸の奥に、強烈な嫌悪が広がる。
同時に――別の思考が生まれた。
(……内部に入れる)
その瞬間、感情とは別の場所で、冷たい理性が働き始める。
これは機会だ。
リゼットと婚姻を結ぶ事により、事件を内側から調べられる。証拠を掴みやすくなり、復讐の機会にも近づく。
だが。
(アデルを……モントレー家を……裏切ることになる)
胸が締め付けられた。
すぐに答えは出せない。
「……少し、考えさせてください」
それが限界だった。
モーリスは満足げに頷いた。
「ああ、もちろん。いい返事を期待しているよ」
モーリスが去ったあとも、ルイはしばらく席を立つことができなかった。
閉じられた扉を見つめたまま、思考がまとまらない。
(どうするべきか……)
胸の奥で、複数の感情がぶつかり合っていた。
怒り。嫌悪。葛藤。そして復讐心。
そのすべてが混ざり合い、重たい塊となって心に沈んでいる。
やがてルイはゆっくりと息を吐き、立ち上がった。
考えを整理するためにも、少し場所を変えた方がよいと思った。
自然と足は離れの方へ向かう。
ノクスの様子を見に行くつもりだった。
ノクスが眠る部屋の扉を開けた瞬間、違和感に気づいた。
寝台の上にいるはずの男の姿がない。
「……?」
室内を見回したが、人の気配は感じられない。
そのときだった。
背後に、音もなく気配が生まれた。
「驚いたか?」
振り向くと、そこには寝巻き姿のノクスが立っていた。
肩にはまだ包帯が巻かれているものの、立ち姿は驚くほど安定している。
数日前まで重傷を負っていたとは思えない回復ぶりだった。
「だいぶ本調子になってきた」
軽く笑いながら言う。
ルイは眉をひそめた。
「……最初から部屋にいたのか?」
「ああ。気配を感じなかっただろう?」
ノクスは肩をすくめる。
「諜報には必須の技術だ。俺の得意分野でもある」
その口調は穏やかで、どこか楽しそうですらあった。
ルイはしばらく彼を観察してから、率直に言った。
「……お前は本当に回復が早いな」
「影なんてやる人間はそんなものさ」
ノクスは気軽に答えながら、ベッドに腰を下ろし、そのまま背中を預けた。
そして何気ない調子で続ける。
「あんたの復讐、手伝ってやってもいいぜ?」
予想外の言葉だった。
ルイは思わず目を見開く。
「……何を言っている?」
「ここ数日、暇だったからな。気配を消して本邸の中を少し歩かせてもらった」
悪びれる様子はない。
「事情はだいたい把握したつもりだ。あんたには助けられた借りもあるし、俺は借りを返すタイプなんだ」
軽い言い方だったが、目の奥は鋭かった。ルイは小さく息を吐く。
「裏の人間は義理堅いのか?」
「ふふ……俺がそうなんだ」
ノクスはわずかに笑い、それから真っ直ぐにルイを見据えた。
「あの男――次期伯爵になると名乗っていた男は、ひどい顔をしていたな」
「……ひどい顔?」
ルイは首を傾げた。
モーリスは確かに信用できる人物ではないが、外見だけなら整っている。年齢相応の貫禄もあり、社交界ではむしろ好印象を与える部類だった。
しかしノクスは首を横に振る。
「見た目の話じゃない」
静かに続ける。
「俺には、人の顔が歪んで見えてしまう。欲望や野心で他人を欺く人間は、ひどく醜く見えるんだ」
ルイは黙って聞いていた。
「逆に、普通の顔に見える人間の方が珍しいくらいだ」
そこでノクスはわずかに口元を緩める。
「あんたの顔は歪んでいない。真っ当な顔だ。だから……主人として協力してもいいと思っている」
願ってもない言葉だったが、すぐに続きが来る。
「ただし、条件がある」
ノクスの目が一瞬で冷えた。
「俺を裏切った連中を生かしておく気はない。先にそいつらを片付ける」
殺意が、言葉の奥に明確に存在していた。ルイは静かに問い返す。
「……すぐには協力できないということか」
「ああ。あいつらを片付けてからだ。ただし嘘はつかない。あんたとは連絡を取り続けるし、復讐が終わったら全面的に力を貸す」
ノクスは真っ直ぐにルイを射抜く。
「終わるまでの時間は読めないけどな。数日かもしれないし、何年かかるかもしれない。途中で俺が死ぬ可能性もある」
軽く笑う。
「未知数だ」
ルイはしばらく考え、やがて小さく頷いた。
「……わかった」
不思議なほど、この男とは感覚が噛み合っていた。
出会って間もないはずなのに、互いに同じ方向を見ている感覚がある。
そして、はっきりと直感した。
(この男の協力は不可欠だ)
復讐のために。
真実を暴くために。
その瞬間、ルイは初めて、自分に確かな味方ができたのだと感じていた。
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