その女、女狐につき。2

高殿アカリ

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2.一学期はすべての布石のために

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「ちょっと、どういうつもり?」



 そう言って生徒会室に入ってきたのは興奮した様子の里奈だった。

 幸い、この部屋には私と一花しかいなかったから良かったものの、他の役員がいたらどうするつもりだったのかしら。



 私は呆れながら、彼女を嗜めた。



「里奈、それはこっちの台詞よ。もし他に人がいたらどうするつもりだったわけ?」



 私の言葉に里奈は眉をしかめて、それでも食い下がってきた。



「どうもしないわよ。それよりも私が聞きたいのは、昨日の屋上の件よ」



「あぁ、伊織のこと?」



「そう! あの場では生徒会に入れることを確かに断ったはずよね?」



「えぇ、そうね」



「じゃあ、一体どうしたら彼女が生徒会補佐になるわけ!?」



「まぁ所謂、試験期間みたいなものよ。生徒会補佐とは名前ばかりで、急遽一花が作ってくれた役職だし」



 私の言葉に一花も賛同する。



「生徒会補佐は厳密には生徒会役員ではないから、愛美の言う通り伊織は生徒会に入っていることにはなっていないわ」



「あぁ、もう! 私が言いたいことがそんなことじゃないって二人も分かっているでしょう?」



「もちろんよ。彼女が信頼に足る人物かどうかを気にしているのよね? でもそれは杞憂よ。そのための生徒会補佐という役職なんだから」



「これは一種のテストみたいなものね。一学期の間は彼女の様子を見ることにしたの。名目上は生徒会役員としてやっていけるのかを図るための期間になってはいるけどね」



 里奈に向かってそう説明した後、一花は肩を竦めた。
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