その女、女狐につき。2

高殿アカリ

文字の大きさ
上 下
25 / 76
3.夢乃の女狐劇場

しおりを挟む
 その日、私は白豹の溜まり場にいた。

 もちろん、和樹の隣に座って、なんなら肩に頭をもたげていた。



 和樹はそんな私に構うことなく他のメンバーと話している。

 白豹の人たちも私がこの場所にいることに随分慣れたみたい。



 下準備は整っている。

 あとは、愛美ちゃんがこの場所に来てくれたら。



 そして私と和樹の仲睦まじい様子を見て。

 悲しみと絶望に染まった表情をしたら……‼



 あぁ、考えただけでぞくぞくしちゃう。



 その時、倉庫の扉が開いた。



 入ってきた人物を見るなり、白豹のメンバーは声を失う。

 中にはそわそわと落ち着かない様子でこちらを見てくる人も。



 だから、私はぴんと来ちゃった。

 誰がここに来たのか。



 その人物を私がどれほど心待ちにしていたことか。



 私は彼女に気付いていない様子で、和樹に甘える。

 和樹に抱き付くと、彼は私の頭を撫でてくる。



 そして、和樹が私の頭を撫でていた手をぴたと止めたところで、私は不思議そうに彼の胸板から顔を上げた。



 純粋で。

 無垢で。

 無邪気で。



 なぁんにも分からない、子供のような顔をして。



 そして、和樹の気まずそうな表情を確認した後、彼の視線を追って私は後ろを振り返る。



「あれ? 愛美ちゃん? どうしてここに?」



 頬をほんのり朱色に染めて。

 和樹に甘えていた様子を見られて恥ずかしいという風に見えるように。



 私は、えへへと笑いかけた。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

科学使えば世界征服余裕じゃね?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

熾火

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

早く解いてよ名探偵!召喚されたら被害者でした

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

あやまち

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

私も愛してはいないので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:319pt お気に入り:326

処理中です...