その女、女狐につき。2

高殿アカリ

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3.夢乃の女狐劇場

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 次の日、駅前のファミレスで私は早速あいつらに連絡を取った。

 前には伊織がいて、デミグラスハンバーグにナイフを入れている。



 私は鼻歌を歌いながら、スマホをいじる。

 いつになく上機嫌な様子の私に、伊織が話しかける。



「夢乃さん、何か良いことでもあったんですか?」



「んー? 実は昨日ね、白豹の溜まり場で愛美ちゃんに会ったの!」



「……それは、また……」



「ふふ、あの子の顔を伊織にも見せたかったなぁ」



「何をしたんですか?」



「んふ、あのねぇ、あの子の大好きな和樹に甘えたのよ。別にヤッてたわけじゃないし、キスさえもしていなかったのにね~? あんなちょっとしたことであそこまでショックを与えられるなんて。……ほんっとうに、甘いよね。でも、そこが愛美ちゃんの好きなところ!」



 それから私は恋する少女みたいに笑ってみせた。



 だって、どきどきして鼓動が早くなるんだよ。

 恋しているのと、同じでしょ?



 そんな私を見て、少し頬を染めながら伊織が尋ねる。



「じゃあ、下準備は整ったってことですよね?」



「あは、賢い子は好きだよ。賢すぎたら嫌いになっちゃうけどね?」



「……すみません」



 謙虚な伊織ちゃんが好きだからね。

 がっかりさせちゃ嫌だよ?



「ふふ。あのね、連絡を取ったの。……今は白豹を追い出された、元リーダーに」



 最後は耳打ちで。

 まるで秘密の恋人みたいだね。



 私の言葉に伊織は顔を青ざめさせた。

 その様子が可愛くて、可愛くて。



 それから伊織は恐れたように口を開いた。



「追い出された元白豹リーダーって……もしかして……権田猛、ですか?」
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