その女、女狐につき。2

高殿アカリ

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4.ボーイズたちは見守るばかり

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 その夜。



「いやぁぁぁぁ」



 愛美の声が黒閻の倉庫内に響き渡った。



 一体何事かとフウガ、タイシ、ケイ、一花の四人が慌てて愛美の眠る部屋へ向かうと、そこには誰も居なかった。



「探せ!」



 フウガの切羽詰った声に促され、四人は二階を捜索すると、彼女はキッチンにいた。



 見付けたのは一花だった。



 恐らく、夢見でも悪く、もう一度眠る為にも水を飲みに起きたのだろう。



 そう考えた一花は、ほっとすると少しだけ声を張って他の三人を呼び寄せた。



「みんな、大丈夫だったよ。ここにいる」



 そうしてもう一度、愛美の方を見て、一花は絶句した。



 なぜなら、愛美がバターナイフを持っていたから。

 なぜなら、そのバターナイフを自分の手首に当てていたから。



 そして、ほろりと涙を流して愛美は一花にこう言った。



「……もう、楽になりたいの」



 それから、刃物が何かを切り裂く音がした。

 赤い赤い色が愛美の白い肌から流れていく光景も。



 そして最後に、錆びた鉄のような臭いが一花の鼻に届いてきた。



「きゃぁぁぁぁ、誰か来て――――!!」



 その夜、一花の悲鳴もまた倉庫内を駆け巡った。
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