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5.女狐の過去
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夢乃が転校してから一か月が経った。
五月の風は少しだけ蒸し暑くて、夏がもうすぐそこに来ているみたいだった。
だけど、私は忘れていたのだ。
夏の前に、長くじめじめとした梅雨があることを。
夢乃とは、随分と仲良くなっていた。
お昼ご飯はいつも一緒に食べていたし、休日には図書館で受験勉強をしたり、放課後には寄り道もした。
彼女はとても純粋な子だった。
もちろん、それがすべて嘘だったと知るのは随分と後のことなんだけど。
いつしか私は満吉への想いも夢乃に相談するようになっていた。
それだけ彼女のことを信頼していたのだ。
そんな矢先のことだった。
夢乃が黒閻の寵愛姫候補になったのは。
その日、彼女は朝からとても嬉しそうな顔をしていた。
にこにことご満悦な彼女に、私は声をかけた。
「夢乃、何か良いことでもあったの?」
素朴な私の質問に、彼女は笑顔を深めてこう言った。
「あのね、実は……私、黒閻の寵愛姫になっちゃった! といっても、まだ候補なんだけど!!」
その瞬間、私は奈落の底に突き落とされたような気持ちになった。
それか、絶対零度の北極にでも連れ去られたみたいか。
どっちにしろ、私は青ざめた。
だって、満吉が黒閻のリーダー候補だと知っていたから。
寵愛姫が何を指す言葉であるのかを知っていたから。
当時の黒閻リーダーがセイさんで、彼には大事にしているユマさんという女性がいることを知っていたから。
そして何より、夢乃の天使のような穢れの知らない可愛さを、私は知っていたから。
五月の風は少しだけ蒸し暑くて、夏がもうすぐそこに来ているみたいだった。
だけど、私は忘れていたのだ。
夏の前に、長くじめじめとした梅雨があることを。
夢乃とは、随分と仲良くなっていた。
お昼ご飯はいつも一緒に食べていたし、休日には図書館で受験勉強をしたり、放課後には寄り道もした。
彼女はとても純粋な子だった。
もちろん、それがすべて嘘だったと知るのは随分と後のことなんだけど。
いつしか私は満吉への想いも夢乃に相談するようになっていた。
それだけ彼女のことを信頼していたのだ。
そんな矢先のことだった。
夢乃が黒閻の寵愛姫候補になったのは。
その日、彼女は朝からとても嬉しそうな顔をしていた。
にこにことご満悦な彼女に、私は声をかけた。
「夢乃、何か良いことでもあったの?」
素朴な私の質問に、彼女は笑顔を深めてこう言った。
「あのね、実は……私、黒閻の寵愛姫になっちゃった! といっても、まだ候補なんだけど!!」
その瞬間、私は奈落の底に突き落とされたような気持ちになった。
それか、絶対零度の北極にでも連れ去られたみたいか。
どっちにしろ、私は青ざめた。
だって、満吉が黒閻のリーダー候補だと知っていたから。
寵愛姫が何を指す言葉であるのかを知っていたから。
当時の黒閻リーダーがセイさんで、彼には大事にしているユマさんという女性がいることを知っていたから。
そして何より、夢乃の天使のような穢れの知らない可愛さを、私は知っていたから。
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