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5.女狐の過去
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あの事件から二週間が経った。
私は夢乃に会う勇気も出なくて、満吉に受験勉強を見てもらう毎日を送るばかりだった。
そんなある日のこと。
「なぁ、愛美」
「うん? また解答を間違えてた?」
「いや、そうじゃなくて、だな」
「うん」
「今度さ、夏休み最後の花火大会があるだろう?」
「あぁ、そうね。もう、夏も終わっちゃうのか。寂しいね」
「そうだな。それでさ、その、」
「何?」
「一緒に、行かないか。……ほら、付き合ってからどこにも出かけていないしさ。勉強ばっかで愛美も窮屈だろう?」
何も反応しない私の顔を覗き込みながら、彼はさらに続けてこう言った。
「……それとも、やっぱり外は怖いか?」
――――あぁ。
本当に、嫌になっちゃう。
どうしてこうも、この人は。
私の心を鷲掴みにして離してくれないのだろう。
私は瞳に溜まった涙を振り払って、彼の胸に飛び込んだ。
だけど、彼は私のちっぽけな力くらいじゃびくともしなくて。
「満吉が守ってくれるんでしょう?」
私は笑ってそう言った。
彼も笑って返してくれた。
「あぁ、もちろんだ」
逞しいこの腕も。
耳障りの良い低い声も。
私は彼の胸の中で、これ以上ないくらいの幸せを感じていた。
「満吉、ありがとう」
私の言葉に満吉は何も言わず、ただぎゅっと強く抱きしめ返しただけだった。
あの事件から二週間が経った。
私は夢乃に会う勇気も出なくて、満吉に受験勉強を見てもらう毎日を送るばかりだった。
そんなある日のこと。
「なぁ、愛美」
「うん? また解答を間違えてた?」
「いや、そうじゃなくて、だな」
「うん」
「今度さ、夏休み最後の花火大会があるだろう?」
「あぁ、そうね。もう、夏も終わっちゃうのか。寂しいね」
「そうだな。それでさ、その、」
「何?」
「一緒に、行かないか。……ほら、付き合ってからどこにも出かけていないしさ。勉強ばっかで愛美も窮屈だろう?」
何も反応しない私の顔を覗き込みながら、彼はさらに続けてこう言った。
「……それとも、やっぱり外は怖いか?」
――――あぁ。
本当に、嫌になっちゃう。
どうしてこうも、この人は。
私の心を鷲掴みにして離してくれないのだろう。
私は瞳に溜まった涙を振り払って、彼の胸に飛び込んだ。
だけど、彼は私のちっぽけな力くらいじゃびくともしなくて。
「満吉が守ってくれるんでしょう?」
私は笑ってそう言った。
彼も笑って返してくれた。
「あぁ、もちろんだ」
逞しいこの腕も。
耳障りの良い低い声も。
私は彼の胸の中で、これ以上ないくらいの幸せを感じていた。
「満吉、ありがとう」
私の言葉に満吉は何も言わず、ただぎゅっと強く抱きしめ返しただけだった。
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