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「おい、とう……」

そこまで翔琉が言ったとき、斗真は翔琉にキスをした。

いつもどこかぼんやりとしていて、中々掴めない斗真がまるで噛みつくようなキスを翔琉にする。
翔琉は普段の斗真とのギャップに戸惑い、抵抗することも忘れていた。

抵抗しない翔琉をいいことに、斗真は何度も何度もキスをする。

唇を甘噛みし、舌を入れる。
斗真の空いている手が翔琉の後頭部に回り、逃げられもしない。

翔琉は知らぬ間に斗真の服を握りしめていた。
斗真はそれに気づいて、やっと唇を離す。
翔琉の呼吸は乱れていた。

翔琉は斗真のキスが終わったことにホッとするも、未だ近い顔にどことなく恥ずかしさを覚える。
斗真は翔琉のおでこに自分のおでこをくっつけて、ゆっくりと息を吸った。

「いい?翔琉。よく覚えておいて。僕は二人が大切なんだよ?……だから、航を傷付けるような真似は赦さない。明日、航に謝ってね」
「……」

「返事は?」
「……はい」

翔琉は困惑していた。
なぜなら、斗真もてっきり航のことを好きなのかとばかり思っていたからだ。

いや、斗真の言葉からすると、このキスは牽制だということなのか?
斗真の行動と言葉に納得がいかない顔をしている翔琉に斗真はうすく口の端を持ち上げると、もう一度だけキスをした。

今度は触れるだけの優しいキスを。

「だから、僕は二人が大事なんだよ。二人とも、大切」

言い聞かせるように翔琉にそう言うと、斗真は翔琉の頭を軽く撫でて、そのまま自分の家に帰っていった。

「じゃあね、おやすみ」

なんて爽やかな挨拶を告げて。

翔琉は撫でられた頭を押さえながら、去っていく斗真の背中を見送るばかり。
その後も、翔琉の心臓は中々落ち着きを取り戻さなかった。
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