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Corrupt Kingdom
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次の日やはり女物のワンピースを指定され、私は再び国王に呼び出されていた。
ただしいつものお仕置き部屋ではなく、謁見室への呼び出しだった。
呼び出しに応じた私が謁見室の扉を開けると、そこにいたのは国王とそれから見知らぬ母娘だった。
人好きのする笑顔を向けた彼女たちに嫌な予感がしていた。
「まぁ、貴方がクレオちゃんかしら?」
母親の方はどうやら私を女だと思っているようであった。
そして次に続いた言葉で、私は奈落の底へと落とされるのであった。
「いつもゴードンがお世話になっているわ。ほら、ミィちゃん。挨拶をして」
「にぃにのおともらち、いつもあーとぅ」
癖毛が愛らしい女の子だった。
舌足らずの幼い娘に母親がにこりと笑いかけている。
そこにはまるで日向ぼっこをしているかのような穏やかさが漂っていた。
一方で私の顔面はみるみるうちに蒼白になっていく。
なぜ、バレた。
彼の家族がどうしてここに居るんだ。
ぎぎぎと固まった首を何とか動かして国王の顔を見る。
何もしないでくれ、と哀願した。
だが、父親である国王に私の願いが通じたことなどただの一度もないのだ。
そのことは私がよくよく知っていた。
「わしの息子であるクレオと仲良くしてくれているという。褒美をやろう」
国王の尊大な態度にも、彼女たちは敬意を払って跪いた。
「誠に恐悦至極に存じます」
そんな彼女たちを満足そうに見た後、国王は私に視線を戻して口を開いた。
「よく見ておくが良い。これが其方と仲のいい男の家族である。そして、彼女たちが今からどんな目に遭うのか。己がゴードンという男と仲良くしたばかりに、彼の大切な家族がどんな仕打ちを受けるのか。其方は知っておかなければならないだろう? これもわしからの愛なのじゃ、許してくれ」
「陛下、今の言葉はどういうことでしょう」
疑問を抱いたゴードンの母親に向かって、国王の内ポケットに収められていたはずのリボルバーから銃弾が発射された。
何の躊躇いもなく、国王は彼女を撃ち抜いたのだった。
発砲音の残滓が耳に残り、そこでようやく私は目の前の現実を理解した。
ゴードンの母親は眉間を綺麗に貫かれていた。
ぽっかりと開いた穴から赤い血が噴き出して、まだ幼い少女に降り注ぐ。
「おかぁ?」
既に事切れた母親を見上げ、妹は首を傾げている。
無垢なその仕草に私の胸は酷く傷んだ。
「や、やめてください」
数年ぶりの反抗だった。
私は国王に駆け寄り、その足元にしがみついた。
「やめてください。私ならどうなっても構いませんから。彼女だけはどうか許してあげてください」
縋り付く私を満足そうに見下ろしたあと、国王は笑った。
笑ってそのまま妹に向かって引き金をひいた。
狂っていた。
私の父親は、果てなき王国の国王は既に人間ではなかったのだ。
私はばっと振り返った。
「にぃに、どこ……」
蚊の鳴くような声で視線を彷徨わせた後、彼女の瞳から光がゆっくりと消えて行った。
二人の身体が重なり、ゴードンと同じ遺伝子を含んだ尊い血液が床一面に広がっていく。
ただしいつものお仕置き部屋ではなく、謁見室への呼び出しだった。
呼び出しに応じた私が謁見室の扉を開けると、そこにいたのは国王とそれから見知らぬ母娘だった。
人好きのする笑顔を向けた彼女たちに嫌な予感がしていた。
「まぁ、貴方がクレオちゃんかしら?」
母親の方はどうやら私を女だと思っているようであった。
そして次に続いた言葉で、私は奈落の底へと落とされるのであった。
「いつもゴードンがお世話になっているわ。ほら、ミィちゃん。挨拶をして」
「にぃにのおともらち、いつもあーとぅ」
癖毛が愛らしい女の子だった。
舌足らずの幼い娘に母親がにこりと笑いかけている。
そこにはまるで日向ぼっこをしているかのような穏やかさが漂っていた。
一方で私の顔面はみるみるうちに蒼白になっていく。
なぜ、バレた。
彼の家族がどうしてここに居るんだ。
ぎぎぎと固まった首を何とか動かして国王の顔を見る。
何もしないでくれ、と哀願した。
だが、父親である国王に私の願いが通じたことなどただの一度もないのだ。
そのことは私がよくよく知っていた。
「わしの息子であるクレオと仲良くしてくれているという。褒美をやろう」
国王の尊大な態度にも、彼女たちは敬意を払って跪いた。
「誠に恐悦至極に存じます」
そんな彼女たちを満足そうに見た後、国王は私に視線を戻して口を開いた。
「よく見ておくが良い。これが其方と仲のいい男の家族である。そして、彼女たちが今からどんな目に遭うのか。己がゴードンという男と仲良くしたばかりに、彼の大切な家族がどんな仕打ちを受けるのか。其方は知っておかなければならないだろう? これもわしからの愛なのじゃ、許してくれ」
「陛下、今の言葉はどういうことでしょう」
疑問を抱いたゴードンの母親に向かって、国王の内ポケットに収められていたはずのリボルバーから銃弾が発射された。
何の躊躇いもなく、国王は彼女を撃ち抜いたのだった。
発砲音の残滓が耳に残り、そこでようやく私は目の前の現実を理解した。
ゴードンの母親は眉間を綺麗に貫かれていた。
ぽっかりと開いた穴から赤い血が噴き出して、まだ幼い少女に降り注ぐ。
「おかぁ?」
既に事切れた母親を見上げ、妹は首を傾げている。
無垢なその仕草に私の胸は酷く傷んだ。
「や、やめてください」
数年ぶりの反抗だった。
私は国王に駆け寄り、その足元にしがみついた。
「やめてください。私ならどうなっても構いませんから。彼女だけはどうか許してあげてください」
縋り付く私を満足そうに見下ろしたあと、国王は笑った。
笑ってそのまま妹に向かって引き金をひいた。
狂っていた。
私の父親は、果てなき王国の国王は既に人間ではなかったのだ。
私はばっと振り返った。
「にぃに、どこ……」
蚊の鳴くような声で視線を彷徨わせた後、彼女の瞳から光がゆっくりと消えて行った。
二人の身体が重なり、ゴードンと同じ遺伝子を含んだ尊い血液が床一面に広がっていく。
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