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Corrupt Kingdom

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革命軍の拠点は森の中にあった。
元からあった建造物を利用するのではなく、一から集落を形成していた。

女子どもが畑仕事をしている横を通り、集落の中で一番豪華でかつ広いテントに連れて来られた。

道を歩いている間も、人々は私に敬意を示している。
そこに警戒心はなく、ただ何かを期待している表情ばかりがあった。

私は集落の最奥に張られた大きなテントへと案内される。
そしてピーターが示す場所、つまり彼と向かい合わせの場所に座った。

ここからは革命軍長として話を進めるようだ。

次に話したピーターの口調は随分と砕けていた。

「何もないところで申し訳ない」

そう述べながらも、彼が革命軍を誇らしく思っていることが手にとるように分かる。
それほどまでに自信に溢れた声色だった。

「みなさん、私を歓迎してくれているようですね」
「それは勿論。みんな貴方が国王陛下になることを望んでいるのだから」

彼の青い瞳が私の動向をしかと見つめていた。

「その件なのですが、私は誰かを率いるような性格でもありませんし、特に国王になりたいという意思もありません」

「だがしかし、貴方の本当のお母様はそう望んでおられた。だからこうして、かつての果てなき王国を滅亡に追いやり、また一から国を造ろうとしているのだ」

「滅亡に追いやった、とは具体的にはどういうことでしょう」

「あぁその頃には既にクレオ様は国を出ていたのか。大したことはしていない。ただ、城壁の一部を破壊し、そこからアンデッドたちを国に招き入れた。もう数年も前の話だよ」

にこにこと手柄を語る目の前の男に初めて私は恐怖を覚えた。

のこのこついてきてしまったが、これから何に巻き込まれるというのだろう。

今の私に分かるのはここが決して楽園などではないということだけだった。
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