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しおりを挟む――――おかしい。
シュウは汗を拭っている霧雨の横顔をじっと盗み見た。訓練用にまとめていた長い髪を解き、シャワー室に向かう彼の様子は一見、普段と何ら変わりがないようにも思えた。
だが、シュウは昨晩遅く、日本支部内の廊下を歩く霧雨を見かけていたのだ。フードを深く被り、その特徴的な毛髪を隠していたが、確かに霧雨の匂いがした。
隠密行動をする理由はなんだ?
その疑念を晴らすべく、シュウは一日霧雨を監視しているのである。
「シュウも早くシャワー室に向かいなさい。巡回まであまり時間がないんだから」
隊長の千鶴がシュウに声をかけた。シュウはむすりと不機嫌さを隠すことなく彼女に返事をする。
「わぁってる。今、行こうとしてんだよ」
「貴方はまた……朝倉さんを困らせて。早く行きますよ」
先にシャワー室に向かったはずの霧雨がいつの間にかシュウの後ろに立っていた。そしてそのまま彼はシュウの首根っこを掴み、ずるずるとシャワー室まで引きずっていった。
「おい! 自分で歩ける!」
「いえ、私が連れて行った方が早いです」
「っ、このぉ! 大人しく連れていかれると思うのか!」
「はい。今日の貴方は何やら私を監視しているようですし、どんな目的かは知りませんが大人しく私に連れていかれた方が貴方にとっても好都合なのでは?」
「なっ……!」
澄ました顔で流し目を送る霧雨に、シュウはいけ好かないという感情を抱くのであった。
――なんでも見透かしてくる奴は、きらいだ。
ぶっすぅぅとさらに頬を膨らませて、シュウはそっぽを向いた。
「別に? お前のことなんか、何も見てねぇし? 勘違いすんなし? どうせ監視するなら可愛い女の子がいいってぇの!」
「えぇ、そうですね」
霧雨はシュウの言葉を軽くあしらう。そのことにさらにシュウの眉根は寄っていった。
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