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しおりを挟む落ち込むだけ落ち込んだあと、シュウは勢いよく立ち上がった。周りを囲んでいた小さな子どもたちが蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。
「っ、ぅがぁぁぁあ! 変身出来ないもんは、しょうがねぇ! それより、ヒーローショーの時間だ! 行くだろ? 霧雨も」
期待に満ち、キラキラと光り輝く目を霧雨に向けるシュウ。
「……何故そんな期待に染まった目で私を見るのですか? 本当に勝手な人ですね、貴方は」
「とかなんとか言いながらも、ちゃあんとついてきてくれんだもんなー! 霧雨は! にっしし‼︎」
「気軽に肩を組まないでいただきたいのですが」
面倒くさそうな表情の霧雨に一切怯むことなく、シュウはさらに笑みを深めた。
「とかなんとか言っちゃって~。刀を抜いてないってことは、そういうことだろ?」
「どういうことだと言うのです?」
「霧雨が~俺を~本気で拒んではいないってことよ!」
シュウに組まれた肩から無理やり抜け出そうとしないのが何よりの照明ですらあった。そんな部下二人の様子を見ていた千鶴は、やっぱりにこにこと上機嫌である。ほんの少しだけ気まずそうではあったが。
「えーっと、とりあえず二人とも仲良しみたいだから、一緒にヒーローショー観てきなさい。私はもう少し必需品を買って先に帰っておくから」
「え! ちづさん見ないの?」
「ごめんねぇ、シュウ。ちづさんは少し忙しいのよ」
「はっ、そうだったのですか! 朝倉さん、無理しないでください。追加の購入もリストをいただければこちらで買って帰ります」
「うーん。霧雨は本当に出来る子だわねぇ。つい甘えたくなってしまうわ」
頬に手を当てた千鶴に霧雨が勢いよく頷いた。
「是非! お任せください!」
頼もしい部下の姿に、彼女は上司としての誠意を見せることにした。
「あら、本当? それじゃあ、お言葉に甘えて直帰しちゃうね。買ってきて欲しいものはあとで連絡する」
「かしこまりました!」
丁寧にお辞儀をして、上機嫌に千鶴を見送った霧雨に、シュウが不満そうな視線を送る。
「何か仰りたいことがあるのなら言ってみたらどうです? ただ見つめるのではなく」
「な! 見つめてねぇよ! ……ただ、お前はほんっとーに! ちづさんのことが好きだよなーって。その好意をほんの少しでも俺に分けてくれたら、朝だってちゃんと起きてやるのによ~」
「…………ふむ………………ふむ?」
肝心なところで、霧雨は少々鈍い男になってしまうのだった。
「っだぁぁぁぁあ! もういいよ! 分かんないんだったら! おら、ヒーローショーな! 観るぞ!」
シュウが霧雨を強制的に引っ張って歩く。ずんずんずんずん、彼らは向かうのはショッピングモール内のイベント広場だ。
「え、あ、はい。まぁ、しょうがないですね……」
「くっ……何故、俺が子ども扱いされにゃあならんのだ。納得がいかーん!」
叫んだシュウの声は、広いショッピングモール内にそれはそれは綺麗に響き渡ったのだとか。
こうして、三人の奇怪で愉快な共同生活は幕を開けた――――。
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