その女、女狐につき。

高殿アカリ

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2.生徒会へようこそ

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 ありふれた日常の終わりは、突然やってくる。



 どんよりと立ち込める曇り空の中、私と一花はいつものように教室でお昼ご飯を一緒に食べているところだった。



 今日のメインディッシュのから揚げを頬張ろうとしていた私たちにお呼び出しがかかったのだ。



 ぴんぽんぱんぽーん。

 どこか気の抜けた放送音の後、



「一年二組の天野一花さん、同じく一組の原田愛美さん。至急、生徒会室までお越しください」



 ぴんぽんぱんぽーん。

 ぴんぽんぱんぽーん。



 ざわつく教室とから揚げの香ばしい香り。

 メガネの奥で真ん丸に見開かれた一花の瞳。

 そして、どこか平和的な放送音。



 平穏の終わりとしてはちょっと物足りない。

 でも、確実に何かが始まる予感。



 終焉の合図は、先ほど丸く響いたぴんぽんぱんぽーんなのだろうか。



 やっぱり世界ってカオスなのね。

 謎の納得を得た私は、ゆっくりとから揚げを咀嚼した。



 もぐもぐ。もぐもぐ。

 うん、お母さんのから揚げは世界一ね。



 にっこりとご機嫌な私に、おどおどした一花が、



「愛美ちゃん、生徒会室……」



「そうねぇ、行きましょうか」



 お弁当を片付け、お口を拭いて、きちんと鏡で顔を確認して。

 私はさっと席を立ちあがる。



 はてさて、生徒会室に呼ばれるようなことした覚えはないんだけどなぁ。



 入学式にも出てなかったから、生徒会長の顔さえも分からないしね。



 まぁ、いいか。取りあえず、



「一花、行きましょうか」



「あ、うん」



 何だか面白いことになってきたわ。

 うふふふ。



 ……いけない、顔面崩壊してしまうところだったわ。



 弱弱しい小動物のような表情の下で、それとは全く正反対のことに思いを巡らしながら私は生徒会室に向かった。



 もちろん、一花を引き連れて。
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