その女、女狐につき。

高殿アカリ

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4.腹黒愛美、本領発揮。の一つ手前

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 そんなこんなで、タイシと私はマイナーなバイクゲームを一緒にやることになった。



 ロードレースの画面で、カーブがある度、同じ方向に身体を傾ける私とタイシ。



 その様子を見て、鼻で笑うケイ。

 背中越しでもちゃんとわかるわよ。



 タイシはゲーム画面に夢中で多分気付いていないけど。



 私が勝ったり、タイシが勝ったり。



 タイシの想像以上に私がデキル奴だったらしく、タイシはすっかり気を許していた。



 あぁ、ゲームって偉大だな。



 思わぬほど早い展開に、私はゲームを発明した人たちを尊敬したくなった。



「なんや、あんた。めっちゃデキル奴やん! 今度はまたちゃうゲーム持ってくるわぁ」



 にこにことタイシ様からゲームの腕前をお褒め頂いたところで、私はコントローラーを手放した。



「ごめんなさい。普段ゲームなんてしないから、少し目が疲れちゃったみたいです」



「あー、いや、こっちこそごめんやで。大丈夫か?」



「あ、はい。大したことじゃないです」



 そう、なんと、あのタイシ様が謝罪し、あろうことか私の目の心配をしたのです。



 っていやいやいや。

 ちょろすぎでしょ、タイシさん。



 それでよく幹部なんて出来るのね。



 黒閻、大丈夫なのかしら。



 と珍しく私も彼らの心配をしていると、いつの間にやらキッチンにいたタイシからお声がかかる。



「愛美ちゃんは、何飲むん? ジュースか、紅茶か、コーヒーもあるで。あ、でもコーヒーは豆しかないから自分で挽かなあかんわ。それかケイに頼むか、やな」



 どーする?

 とこれまたキラキラの笑顔で尋ねられた。



 愛美ちゃんって!

 本当に仲良くなれてしまったのね、私。



 なんというか、こう張り合いがないというか。



 ……まぁいいわ。

 タイシは懐柔できたってことで、次なる標的は……。
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