その女、女狐につき。

高殿アカリ

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5.腹黒愛美、本領発揮。

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 図書室の一番奥に、私と一花は腰を下ろす。



 全力疾走で駆けてきたからか、どちらも呼吸を荒げていた。



 しばらく、お互いの呼吸を聞きながら、息を整える。



 一花の呼吸が整ってきたことを感じ、私は話しかけた。



「……女の子の嫉妬って怖いね」

「……うん、びっくりした」



 まあるく見開いた瞳をお互い見合わせて、それから。



「「ぷっくくくく、あーーっはははは」」



 大笑いをした。

 それはもう、お腹が捩れちゃうくらいの。



「どうしよう、悲しいことが起きたはずなのに、何だか楽しくなっちゃって」



 ひとしきり笑い終わった後、泣き笑いながら、一花がそう言った。



「あら、奇遇ね。私もよ」



 そう、結局のところ、私たちは平凡な日常に飽き飽きしていて。



 例えばそれは、思い通りになってくれないフウガや全てを見透かしているかのような目で私を見てくる市川であったりするのだけれども。



 だから、悲しいような衝撃でさえ、今の私たちには歓喜となる。



「あの子たちの目、見た? まるで汚物でも見ているみたいな顔していたわよ」



 私の意地の悪い言葉に、一花は何も答えず、ただにやっと笑った。



 あらやだ、この子意外と図太いわ。



 なんて改めて一花に感心してみたり。



 一通り、現在の状況を楽しんだ私たちは、問題と向き合うことにした。



「……これからどうする、一花?」



「それは、フウガくんたちにこのことを伝えるかってこと?」



「えぇ、そう。伝えてやめさせてもらうか」



「「もしくは、自分たちで何とかしてみるか」」



 何とかできるはずもないのに、一花と私はやる気満々だった。



 一花のそういう向こう見ずで危なっかしいところに、私は好感を持った。



 ふふふ、と私たちは顔を見合わせて微笑みを交わす。
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