その女、女狐につき。

高殿アカリ

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5.腹黒愛美、本領発揮。

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 ケイと私はいつもの部屋に戻った。



 ケイは私をソファに座らせると、そのままキッチンに入っていく。



 待っている間、ドライヤーが見当たらないのでタオルドライをしていた。



 染めているから痛みやすいけど、文句は言えないわね。



 なんて思っていると、一階が何か騒がしいことに気付く。



 敵襲? だったら超面白いんですけど。



 そうしているうちに、ケイがコップを二つ持ってキッチンから出てきた。



 うわぁ、絶対コーヒーだよ。



 だって私がコーヒー好きだと思ってるんだもんね、ケイは。



 そりゃコーヒーを持ってくるよね。

 分かるワー。



 ……ココアが良かったなんて言えない……。



 ケイが私に右手のコップを差し出す。



「ありがとうございます」



 へにゃりと笑って受け取った。



 ……やっぱりコーヒーだよ。



 眉毛を悲しそうに下げる私。



 あー、これはね、気付かれても大丈夫よ。



 だって……。



「辛かった、ですよね?」



 ほうら、勝手に勘違いしてくれるもの。



「……はい」

 コーヒーが。



 ケイは私の左隣に座る。



 しーんとした空間に、響く音。



 下から聞こえてくるそれにケイも気が付いているはずなのに、ちっとも慌てる様子がない。



 ということは、原因を知っていて、かつ止めなくていいってこと。



 つまり、敵襲じゃないのよね?

 ……ちっ。



「……あの、一階から聞こえてくるこの音って……」



「あぁ、この音ですか。タイシが暴れているんですよ。どうやら居ても立っても居られないようでして……。彼は子どもなんですよ」



「そう、なんですね」



 それっきり、再び訪れる沈黙。



 しかし私の脳内はいつものようにお喋りをやめてはいなかった。
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