その女、女狐につき。

高殿アカリ

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7.嵐の前の何とやら

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 その週明けから夏休みに入るまでの間ずっと、明らかにフウガたちの不機嫌さは最高潮だった。



 そんなの原因は一つしかないでしょう?



 一花が楽しそうに生徒会室での話をする度に、彼らの表情は曇っていく。



 無邪気な彼女はちっとも気が付いていない。



 可哀想ね、一花。



 でも、そうなる可能性を知っていて黒閻の寵愛姫になったのではなかったの?



 ちゃんと責任は持ちましょうよ。



 だから、フウガがあなたより私に優しく話しかけたからといって、そんなに悲しそうな顔をしないで。



 大丈夫よ、あなたには山田先輩がいるんだもの。



「原田、みー覚えているか? 白猫の」



「あ、はい。もちろん覚えていますよ。だって死ぬほど可愛かったですもん」



「そうか。……実はあの後、結局貰い手が見つからなくてな。今、俺の家で飼っているんだ。……その、なんだ。今度、家に来るか?」



 自分の話を全く聞いてもらえず、さらには私に向かってのみ優しく饒舌に話しているフウガに、一花はしゅんと項垂れる。



 白猫のみー、かぁ。



 ここしばらく見ていないと思っていたら、そういうことだったのね。



 しかも、フウガが飼っていたんなら、今までの私には道理で教えないわけだ。



 もちろん、尋ねれば教えてはくれたのでしょうけれど。



 そんな怖いことはしないわ。

 正直、あの猫がいなくなってほっとしていたんですもの。



 だってあの可愛さは尋常じゃないわ。



 あのまま居座られていたら、私の演技やらその他何もかもが全て台無しになっていたはずだもの。



 でも、このタイミングでその話題はとても素敵ね。



 あの可愛さを思い返すだけで、私の表情は勝手に心底幸せそうなものになるのよ。



「えぇ、是非、また会いたいです」



 みーちゃんの可愛さに、万歳!
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