君の一瞬を、僕は描く。

夕暮 春音

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放課後誰も居ない教室で君と出会う

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僕はいつも放課後に一人のこって教室で絵を描く。
でも、今日は部活の事で先生に呼ばれていたから、遅くなってしまった。
教室に戻ると、見知らぬ色白の黒髪の女子が僕のスケッチブックを見ていた。
するとこっちに気づ付いたのか僕のスケッチブックを持って逃げるようにして去って行った。
声をかけようとしたがその頃には姿が見えなかった。
僕は混乱しながらも外も暗かったので帰ることにした。
次の日の授業中はずっと昨日の放課後の事をずっと考えていた。
でも、あの女子に見覚えがある訳でもなく、考えてもきりがないので考えるのをやめた。
放課後になったら彼女が現れるかもしれないと思って、いつも通り絵を描いて待ってみたけれど、彼女は現れることはなかった。
次の日の朝いつも通りの時間に登校すると、下駄箱の中に手紙が入っていた。
一瞬だけラブレターか?と考えたが僕にそんなものがくるはずがない。
内容は、
「今日の放課後話があります。教室で待っていてください。」

誰からの手紙かは分からないが、きっとこの前の少女だろう。
色々考えても時間の無駄になるので、僕はその少女を待つことにした。
放課後、野球部やサッカー部の掛け声が聞こえる中、僕は教室でただ一人手紙の少女を待ちながら絵を描いていた。
少しすると教室のドアが開く音がした。
ドアの方を見てみるとそこには、僕のスケッチブックを持った黒髪で色白の少女がこっちを見て立っていた。
目が会うと少女はこっちに歩み寄ってきてスケッチブックを僕に差し出した。

「ごめんなさい。あの時は君の絵に見とれていて、そこに君が来て、あせって、持って帰ってしまいました」

そういうと少女は頭をあげてまた話し始めた。

「でも、君の絵にはすごく感動した。君ってよく人を描いてるでしょ。その絵の人達が生きてるみたいで、今にも動き出しそうで、とても輝いて見えた。」
「そう言って貰えて嬉しいよ。ありがとう。」

少しびっくりしたけど嬉しいのは本当だ。

「あっ、自己紹介がまだだったね。私は望月いろは。よろしく。君の名前は?」
「僕は、白上冬弥。よろしく。」
戸惑いながらも、そう答える。
「冬弥くん。よろしくね。」

そういうと彼女は微笑んだ。
すると彼女は、申し訳なさそうに話し始めた。

「ひとつお願いがあるんだけど、よかったらここで一枚描いてくれない?」
「別にいいけど」

そう言われて断る理由も無かったから、さっき描いていた絵の続きを描くことにした。
それにしても人に見られながら描くのは少し描きづらい。
描き終わると、彼女は目を輝かせてこっちを見ていた。

「うん。やっぱり冬弥くん才能あるよ!」
「そうかな。もし良かったらその絵あげようか?」
「ほんと?!もらっていいの?」
「うん、あげるよ。」
「やったー!」

ふと、時計を見るともう7時をまわっていた。

「あっ、もうこんな時間。またね。」

そう言って彼女は教室を出て行った。

望月さんにあってから、彼女に自分の絵を褒められて自信がついたのか、あれからいい絵が描けてる気がする。
それから数日、いつも通りに学校へ登校して教室に入ると、いつもより騒がしかった、クラスで唯一の友人の秋斗に聞いたところによると、今日このクラスに転校生が来るらしい。
秋斗と話してたら、先生が教室に入ってきたため、席に座る。

「突然ですが、今日からこのクラスに転校生が来ることになりました」

先生のその一言で教室がざわついた。

「入ってきていいぞ」

その一言で一人の少女が教室に入って来た。
その瞬間、クラスの男子達が転校生が女子のことに喜び、騒ぎ始めた。
でも僕は、その転校生に見覚えがあったため驚いていた。
そう、この前の放課後にあった子だ。

「望月いろはです。よろしくお願いします。」

軽く自己紹介をした後望月さんは先生に指定された席に座った。
ホームルームが終わって望月さんに話しかけようとしたが、望月さんの周りにたくさんの人が集まっていたため話はまた今度にすることにした。
放課後になっていつも通り教室で絵を描いていると望月さんが教室に入って来た。

「まだ帰ってなかったんだ。皆と一瞬に帰らなくていいの?」

「君の絵が見たかったからね」

「そうなんだ。それにしても驚いたよ。転校生が君だったとわね。」

「そういえば、今日は何描いてるの?」

そう言って僕のスケッチブックを覗き込んできた。
僕は気にすることなく、絵を描き続ける。

「そういえば、君は絵を描かないの?」

ふと気になって聞いて見る。

「描いてたよ、前は」

「前はってことは今は描かないの?」

「描かないと言うか描けないんだよね」

俯きながら望月さんは答える。

「そっか、なんかごめんね。」

「ううん。全然大丈夫だよ。今日はもう暗くなって来たから帰るね。」

望月さんはそう言って教室を出ていった。

それから1週間ほどたった頃、僕は望月さんに屋上へ呼び出された。

「突然呼び出してごめんね。
この前、私は絵を描けないって言ったでしょ?
その理由を話そうと思って呼んだの。
ずっと迷ってたんだけどね。
まだ誰にも話したことないってのもあったし。
でもね、冬弥くんになら話していいかなって思ったの。
聞いてくれる?」

その言葉を聞いて少し身構える。
僕にそんな大事なことを話したとして、受け止められるのか。
でも、少しでも望月さんの力になれるなら、僕は望月さんの話を聞きたい。

「わかった。聞くよ。」

そう言うと望月さんは俯きながら話し始めた。

「私ね、中二の頃までは普通に絵を描いてたの。
コンテストでも入賞するくらいには上手だったんだよ。
入賞するたびに親が褒めてくれて嬉しかったの、でもね、何回も入賞を繰り返すたびに親は私が入賞して当たり前と思うようになった。
逆に入賞しなかったら私を怒るようになった。
その時期から、だんだん絵を描くことが楽しくなくなった。
絵を描くことがだんだん怖くなった。」

望月さんは下を向いていた顔を僕の方に向けた。
「これが私が絵を描けなくなった理由。」

「そうなんだ」

「あー、すっきりしたー!」

望月さんの話を聞いてふと思ったことがある。

「望月さんってもしかして、三年前くらいから急に美術コンテストに出てこなくなって噂になった、あの望月いろは?」

「うん。そうだよ」

「そっか」

望月さんが僕の顔を覗きこんできた。
「どうしてそんなこと聞くの?」

「えっと、実は僕、望月さんの絵好きだったんだ。
だから、望月さんの絵を見れないってなると少し残念だな。」

「そうなんだ。そう言われると嬉しいな。」

「見れないのは残念だけど、良かったらこれからも放課後に僕の絵を見ていってよ。
色々と話したいし、
気に入った絵があったらあげるから。」

「本当!やったー」

その後、少し絵を描いてから二人で帰った。
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