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第68話 スパリゾート共和国が出来るまで⑨

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 第2王子アレキサンダーは、ビスティア王国経由で通商国への空路を進んでいた。
 途中、上空でゼクス率いる3隻の飛空船が警戒をしている空域を通る際に、ゼクスからの念話が入って来た。

『アレキサンダー兄様、どちらへ向かわれているのですか?』
『ゼクス。通商連合国に飛空船からの攻撃があったという情報が入り、その確認のために向かっている。もしその情報が本当なら隣接する母の出身国、ユグドラ共和国も危険である。ミカ様のライトニングアロー号を補足して拿捕もしくは、撃墜するまでは警戒に当たりたい』

『了解しました。しかしパイロットが気になります。もしミカ様の専属パイロットであったアダムスであれば、僕かスープラ様か、ダルドの3人で無いと補足は難しいと思います』
『アダムスと言うパイロットはそれほどの腕なのか?』

『そうですね、合同演習では、常に4人で競い合っていました』
『困ったな。貴重な飛空船を失う訳にもいかない。ダルドを貸して貰えぬか? 替りに私の随伴機を1隻ビスティアの守備に残そう』

『了解しました。ダルド、アレキサンダー兄様と一緒に通商連合国とユグドラ共和国の空域の確認任務に就いてくれ。恐らく敵パイロットはアダムスだ気を抜くなよ』
了解ラジャー相手にとって不足は有りません。NO1パイロットは俺だと証明して見せます』

『頼むぞ』


 ◇◆◇◆ 


 まず、通商連合国へと向かい被害状況の確認を、行う事にしたアレキサンダーは、ダルドの艦ともう一隻の随伴機は空中に待機させたまま、着陸をした。

 通商国はギルノアとは商売上の付き合いはある物の、政治的には定刻よりである。
 貴族制度は無く、その代わりに財閥と呼ばれる、大商人たちが雇う政治顧問官達によって、行政は行われているが、利益重視政策で、違法奴隷や麻薬などを取り扱う業者も存在しており、他国からは付き合いにくい国である。

 特に、主要穀物や鉱物類の相場の操作によって、影響力を世界中に広げている。

「通商国の代表者と話がしたい。私はギルノア王国第2王子であるアレキサンダーである」
「飛空船からの攻撃に関しての謝罪か? 賠償金と飛空船部隊の譲渡を求めると、わが国では決定した。既に帝国政府と共に、実力行使の為の部隊が向かっている筈だが?」

「我が国は貴国に対しての攻撃などは、絶対にしていない。帝国により盗み出された飛空船による攻撃だと断言しよう」
「帝国が我が国を狙う理由がありませんな。それは聞き入れる訳には行きませんよ? この商都周辺をご覧ください。飛空船による攻撃によって、刈入れ前の麦畑が広範囲にわたって被害が出ています。商都は結界により防げましたが、わが国の損害は50億ゴルにも上る。きっちりとギルノアに対して賠償を要求させて貰います」

「必ず犯人を見つけ出し、責任の所在をはっきりさせます。我が国の無実が判明した場合。仮にも第2王子である私に疑いをかけた通商国側にも名誉棄損の損害賠償をそれ相応の額請求させて貰います」

「な、私の言葉は、け、決して通商国の意見ではなく、私個人の意見なので、そのような国に対しての賠償などは、責任が及びません」
「ほう、通商国ではギルノアの正当な王子である私に対して、国の代表でも無い者が、平気で勝手な言い分を言って来るような国なのですね。ギルノアも随分甘く見られたものです。まぁ良いでしょう。この国に飛空船がかくされてあるなんて事は無いでしょうね?」

「我が領地に攻撃を加えた、飛空船を匿ったりするはずがない。これ以上我が国に対して言い掛かりをつけるのであれば、わが国の誇る傭兵部隊も、帝国へ協力し、ビスティア王国への圧力プレッシャーをかける事になりますぞ」
「やれるものならやって見なさい。ビスティアに兵を送った瞬間に、ギルノア王国は、通商連合国を敵対勢力とみなし、ゾイド帝国同様に、殲滅対象とします。通商国の代表は出ておいでにならない様ですね。私も暇では無いので、次の目的地へ向かいます」

 そう伝えて、エルフの国ユグドラ共和国へと飛空船を進めた。
 ユグドラ共和国は、アレキサンダーの母カレンの出身地でもあり、アレキサンダー自身も、ユグドラの支配者であるハイエルフの血を引いている。

 特徴は、非常に魔力が豊富な種族であるため、支配地域全域を結界で囲んであり、許可なく領地内に侵入が出来ないよな閉鎖的な国である。
 並大抵の魔力では、魔導砲を使ったとしてもエルフの国の結界は破る事などできない位で在ろう。

 そして、ユグドラの結界の周辺を反時計回りに、飛空船を進めた。
「アレキサンダー様、各艦に結界を展開させておいてください」

「了解だ」

 ダルドの指示により、護衛艦の2隻を含めて、3隻でユグドラ上空の警戒に当たると、上空にきらりと光る人工的な反射光を一瞬確認した。

「総員戦闘態勢。対象目標は『ライトニングアロー』並びに、乗り組員の捕縛もしくは殲滅」

 そう指示を出すのとほぼ同時に、魔導砲が発射された。
 ん? おかしい。敵が弱すぎる。
 ライトニングアローから勢いよく発射された魔導砲は、ギルノア軍所属の飛空船の結界に、簡単にはじき返された。

「ダルド、敵艦確認。拿捕もしくは撃沈を行え」
「了解です。アレキサンダー様」

「船足だけは、この艦より向こうのライトニングアローの方が数段早い。3艦で包囲しつつ着陸誘導をさせろ」
 
 俺が試しに魔導砲から発射した攻撃は、一撃でライトニングアローの貼っていた結界を霧散させた。

「大人しく拿捕されろ」

 そう伝えると、不利だと思ったのかライトニングアローは一気に高度を上げて、帝国の方向へと猛スピードで移動を始めた。
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