美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

TB

文字の大きさ
85 / 104

第85話 世界樹の島へ到着!

しおりを挟む
「ナディア。世界樹の小枝ユグトゥイグを頼む」
「はい。かしこまりました」

 ナディアが取り出したユグトゥイグは、真北を示した。
 ナヴィゲート通りに北を目指す、オメガの中ではガンダルフが大騒ぎをしていた。

「凄い。凄いぞおおおおおぉおおおおおおお!!!」

 船を見て叫び。
 中に入って叫び。
 アルファたちを見て叫び。
 そして目録と、魔法陣の辞典を見て溜息を吐いた。

「この文字を解読し、全て読まなければ、古代文明の深淵を理解できないと言うのかぁああ」
「ガンダルフ。少し静かにしろ。シュタット爺ちゃんが読んで、フィルが書き写したのが少しだけはあるから、そこから手を付ければ良いじゃ無いか?」

「わ、解った」

 取り敢えずは、メーガンの無振動馬車をガンダルフの前に出すと、目を輝かせて触り始めた。

「ガンダルフ。触るのは良いけど分解とかするなよ?」
「解っておるわい。これと同じものを作り上げてから入念にやるわい」

「最終的には、この方舟みたいな飛行船とか作れるか?」
「それは、是非やり遂げたい! いや、やり遂げる。世界中を飛空船が飛び交う、新しい世界を実現してみせるぞ!!」

「そいつは楽しみだな。期待しとくぞガンダルフ」


 ◇◆◇◆ 


 ガンダルフとアイシャを加えて、今まで以上に騒がしくなったオメガの船内ではあるが、順調に飛行は続き、遂にユグイゾーラへと辿り着いた。

「カイン様。おかしいです。先ほどまで北を示していた『ユグトゥイグ』が現在は、南を示しています」
「それって、行き過ぎちゃったって事か?」

「それらしい物は見えなかったよな?」

 そんな会話をした途端だった。

「見なさい。カイン。あれが『ユグイゾーラ』よ」

 メーガンの声に振り返ると、山が動いていた。

「すげえな。山が動くのかよ。どうなってんだ?」
「よく見たら解りますよ」

 チュールが声を上げた。

「大きな亀さんだぁ!」

 そこには全長500mを超える巨大な亀が四本足で動き回る姿があった。
 その背中の上は木が生い茂り、ぱっと見では山にしか見えないが、このオメガから、俯瞰で見れば確かに頭の部分も確認できる。

 尻尾に当たる部分は箒か筆の様な長い毛が生えている事も確認できる。

「おい、メーガン。あんなのが街とかにぶつかったら、大惨事じゃねぇのか?」
「彼はとても優しい生き物です。人の街や動物の森は破壊しないように移動します」

「それにしても、凄いな。肝心な世界樹が見えないのは何でだ?」
「世界樹は誰にでもその姿を現すものではありません。ユグイゾーラに降り立ち、そこに住むハイエルフに、認められた者だけがその姿を目にする事が出来ます」

「なぁ? オメガで直接着陸しても問題無いか?」
「全体は結界に覆われていますので、不可能かと…… 後方の筆状の部分に掴まり登らなければなりません。その際にその毛が悪意を排除します。心に邪な部分があると判断されれば、上陸は叶いません」

 メーガンの話を聞き、俺達はオメガを着陸させるとみんなでユグイゾーラと向かった。

 ガンダルフだけは、残って馬車を調べたいと言ったから、置いていったけどな。

 側に近づいて見れば、ユグイゾーラの巨大さに改めて驚愕する。

「ジュウベエとか普通に上陸できそうにねぇな」
「なんでだ?」

「邪な気配がビンビンだからだよ!」
「俺の様に綺麗な心をしている男に失礼だな」

「顔が凶悪なんだよ」
「喧嘩売ってるのか?」

「くだらない事言ってないで、さっさと行くよ? ジュウベエもし上陸できなかったら、僕に近づかないでね? 危険認定しちゃうから」

 一抹の不安を抱きながら、次々とユグイゾーラの毛の部分に掴まり登り始める。

 メーガンとナディアとケラは掴まるとほぼ同時に、巻き上げられて上陸して行った。

依怙贔屓えこひいきだよね……」

 他のメンバーも登り始めると、フィル、チュール、アイシャと次々に巻き上げられる。

「なんで僕ら三人は、巻き上げられないんだろ?」
「解らんが…… まだ判断中なのか?」

 そう言ってるとレオネアは巻き上げられた。

「くっ…… カインと二人だけになっちまったか。自力で登り切ってやる」
「なんか。これは負けたらダメな気がする…… 先に行く」

 俺とジュウベエは巻き上げられる事無く、自力で登り切った。
 ほぼ同着だった……

「そこでは、みんな揃って声援を贈ってくれていたが、なんか納得いかねぇ」

「大丈夫ですよ。弾き飛ばされなかったんですから」

 メーガンはそう言うが、扱いの違いは何なんだよ……

 俺達がみんな登り切った場所の広場に揃うと、三本足のカラスが現れて、俺達を促すように、ゆっくりと飛び始めた。

「ハイエルフ様のお使いをしている、ヤタガラスです。彼に付いて行けば迷うことなく辿り着きます。くれぐれも途中で勝手に採取をしたり、住み着いてる動物たちを殺さないようにね?」
「もし動物を殺すとどうなる?」

「この島を支えるテラバイトタートルTB亀の首が襲ってきます」
「こええな……」

「ねぇメーガン。シュタット爺ちゃんは一人でこの島に来たの?」
「そうですね。坊やは知識欲が凄かったけど、人間性は解りませんでしたから、ここに一人で辿り着きハイエルフ様に出会えるなら、認めてあげると言ったら、頑張ってクリアして来たわ」

「メーガン…… 結構スパルタだね。普通だと99%死ぬじゃんそれ」
「そうですね」

「その一言で済ますんだ……」
「可能性のない子にユグトゥイグを貸し与えたりしませんから、最終試練みたいな物ですよ」

 広場に到着すると、ハイエルフ? なのか、白い神様のような衣装をまとった7人の男女が現れた。

「よく来たな。メーガン、ナディア、ケラ様」

(えっ…… 三人だけ? しかもケラは様付けだし)

「従者たちもご苦労であった。此度は何の用である」

「ミカエル様。おひさしゅうございます。この者達は従者でなく仲間ですので、お見知りおきを」
「そうであったか、済まぬな。メーガンよ。そろそろお主はこの地へ住みハイエルフとしての試練を受けるべきである」

「私はまだ、未熟でございます。今暫くの時をお与えください」
「ふむ。何か興味を引くような事があるのか?」

「今の旅の仲間であるこの者達を見届けたいと思います」
「そうか……」

 なんて言うか…… ハイエルフ達って人間離れしてるって言うか、神様っぽい雰囲気を持った人たちだった。
 メーガンは次のハイエルフ候補なんだな……

 俺達は、アイシャとナディアの古代エルフ語の修行を頼むと、ミカエルと言うリーダーっぽい人が杖を振るった。

 すると、今まで見えて無かった、世界樹が目の前に姿を現した。

「この世界樹のウロの中で、世界樹と語り合うのじゃ。才能があれば覚える事もある」
「あの? 少し質問しても良いですか? シュタットガルドはどれくらいの期間で覚えたのですか?」

「あやつは、人の子としてはとても優秀であったな。わずか二年程で身につけたぞ」

(げっ…… 絶対記憶を持つ爺ちゃんで二年とか…… アイシャとナディア大丈夫なのか?)

「どうするナディア。アイシャ。嫌だったら辞めても良いんだぞ」
「私はカイン様の為に学びます」

「私もお父様を超えるために、必ず身につけます」

 二人とも…… ノリが重い! とか少し思ったが、それが頑張る理由であれば、いいのかと思って任せる事にした。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...