美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

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第102話 クラーケン

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 翌朝、俺達は海岸に集合していた。
 ガンダルフの乗ったオメガは上空に待機しているが、今は透明化インビジブルを発動しているので、ここに集まっている連中には姿が見えて無い筈だ。

 この浜から、ウズシオまでは10㎞以上は距離が離れてるので、ここからじゃ、俺達が戦う姿を見る事は出来ないけどどうするんだろ?

「コンドウ達は船で見に来るのか?」
「ああ、アカシの廻船問屋に頼んで、大型の船を一隻出して貰っている」

「近づきすぎて、巻き込まれないように気を付けろよ?」
「ああ。重々承知の事だ」

 その場に並んでいるクランの『シンセングミ』は総勢二百名近くも来ていた。
 そのすべてが、揃いのダンダラ羽織を着ていて、相当格好よく見える。

「じゃぁそろそろ始めるから、先に出航していいぞ。俺達は速度が速いからな」

 シンセングミを乗せた船がウズシオ方面に向かって進みだしたのを確認すると、転移門を広げてオメガへ戻った。

「ガンダルフ。インビジブルを解除して、ウズシオに向かうぞ」
「了解じゃ」

 ガンダルフは、もうすっかりオメガのパイロットとしての立ち位置を、確立してるよな。
 ガンダルフが来てからは、最初の頃あんなに操縦したがったレオネアも、あんまり操縦しないしな…… もう飽きたんだろうか?

 オメガがインビジブルを解除すると、先に出向していたコンドウ達の乗った船から凄い歓声が上がっている姿が見えた。

 空飛ぶ船も十分インパクト強いけど、先頭で首を突き出してる黄金色のヒュドラも強烈だからな。

 そのままウズシオ上空まで飛んで行ったが、クラーケンの姿は確認できない。

「ジュウベエ。クラーケン居ねぇぞ」
「あいつらは、船が近寄るとその足を船体に巻き付けてから、姿を現すからな。着水しないと出て来ないかもな」

「アルファ。ちょっと聞いていいか?」
「いかがなさいましたか? ご主人様」

「オメガってさ。海中とかでも平気なのか?」
「お答えします。元々のオメガは大異変に対する備えで、潜水艦として開発されましたので平気でございます」

「ん? なんだ大異変って」
「過去に起こった小惑星の衝突による大水害です。その津波は高さ二千メートルを超え、当時のこの世界を飲み込んでしまいました。それを事前に予測した当時の文明が方舟を建造したのです」

 古代文明の崩壊の真相をさらっと告げられて、結構驚いたが、取り敢えず着水してクラーケンとの戦闘になっても問題無いと判断したので、ガンダルフに着水を頼んだ。

 着水したオメガがゆっくりとウズシオに近づく。
 シンセングミの乗った商船は、1㎞程の距離を取り停船している。

 オメガがウズシオの側に近づいた時に、奴は現れた。
 赤黒い足に吸盤が無数についたその足は、一気にオメガに絡みつき海底に引きづりこもうとしてきた。

 オメガのバランスが大きく崩れるが、ガンダルフに指示を出す。

「浮上だ!」
「応!」

 オメガが空中に浮かび上がる。
 八本の足のうち二本で巻き付いているクラーケンが、オメガの上昇によってその全身の姿を海上に現し、更に空中へと持ち上げられる。
 一本の足の長さが30mは優に超える。
 根本あたりの足の太さなど2mはあるだろう。

 瞳は魔獣特有の赤い瞳でそのサイズは直径50㎝はある。

「シグマで凍らせろ!」

 空中に吊り下げた状態で、シグマの氷ブレスを吐き掛けられたクラーケンは、オメガの船体に絡みついたまま凍らされた。

「炎や雷じゃ、食材として使えそうにないしな!」
「カイン…… メインは、粘液だからな?」

「あ、ああ…… そうだったな」
「ジュウベエ。今のうちに足をバラバラに切り離してくれ、凍ってるから粘液で邪魔されないだろ?」

「やってみる。風属性が良さそうだな」

 ジュウベエが風属性を纏った、絶壊刀で斬撃を入れる。
 勿論、まだオメガは空中に浮かんでいて巻き付かれたままの状態だ。

「ジュウベエ。お前そんな斬り方じゃ食材が綺麗に取れないだろ? 全く分かってねぇな」
「……」

 雑に斬られたことに憤りながらも、魔法の鞄に収納しよとしたが……
 出来なかった。

「ジュウベエ。離れろ。こいつまだ死んでない」
「何だと……」

 そう言った瞬間に、ジュウベエの後方から音も無く。他の足が襲い掛かって来て、ジュウベエの身体に巻き付いた。

「グハッ」

 ジュウベエの身体が空中で振り回されている。
 俺は、愛用の捌き包丁を手に、一気に足の付け根まで走り、足の筋に沿わせながら、八本の足をバラバラに切り離して、海中に落とした。

 残った頭が、落下しながら大量の墨を吐き出す。
 全身が真っ黒に染まりながら、海中に落ちて行った。

 ジュウベエも解き放たれて、海の上に浮かんでいる。

「俺はやっぱり、クラーケン嫌いだよ」
「まぁそう言うな。コンドウがタコパの用意させてる筈だから、さっさと回収して戻るぞ」

 真っ黒に染まった海上に浮かぶ、バラバラになったクラーケンをを今度は無事に回収できて、オメガへと転移門で戻った。

「ストップ! そのままこっちに来ないでくださいませ、ご主人様。艦内が汚れます!」

 アルファ、ベータ、ガンマの三人が揃ってホースの様な物を用意して、俺とジュウベエに水を掛けた。
 めちゃ激しくて息も出来ないほどだ。

「中々落ちませんわ。落ちるまで船内を歩かないでくださいね!」
「ちょっと待てよアルファ。フィルに浄化させればいいだろ!」

「カインお兄ちゃん…… 真っ黒だね。かなりヤバいよ」

「早く浄化を頼む。ジュウベエはそのままでも構わない」
「おいっ。俺も頼む」

 浄化でようやく綺麗になって、艦橋へと足を運びガンダルフに再び指示を出す。

「着水して、コンドウ達の乗った船に横付けしてくれ」
「了解だ」

 船をつけると、全員で商船へと乗り移った。

「どうだった? 俺達の狩りは」
「どうもこうもない。滅茶苦茶だな。大体この空飛ぶ船って何なんだよ。ありえねぇ」

「オメガって言う。古代遺跡で手に入れたんだ。便利だぞ」
「だろうな!」

「他の古代遺跡からも同じものは出てくるのか?」
「それは、俺に聞いても解んねぇよ。それよりタコパってどうなってんだ?」

「ああ。この船上で出来る様に準備してあるぞ。足が一本あれば十分だから、出してくれ」

 魔法の鞄から取り出したその足は、長さ30mの足が一本。
 甲板の上に取り出したその足は、まだ筋肉組織がピクピク動いていて微妙に気持ち悪い。
 まずは、大事な粘液を集める。

 ズルズルでネッチョネチョだ。

「ガンダルフ。これで大丈夫なのか?」
「ああ。こいつを枠に入れて日光で乾かしながら錬金をすれば大丈夫な筈だ」

 包丁で丁寧にこそぎ取ると、後はシンセングミの料理番達に任せる事にした。
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