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マ マ
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静まりかえったおうちで、じーっと待ってると、
ママが帰ってくる。
うちのマンションは、ひとりぐらしの人が多いから、
いつも、しーんとしてるの。
ろうかで、人に会うこともめったにない。
だから うちは三かいだけど、
窓の下がちょうど道路だから、
ママがタクシーで帰ってきたら、車の音が聞こえるの。
ママってへんなの。
いやなことがあった日は明るくて、
いいことがあった日はさみしそうなの。
あたしはね、その理由がわかったの。
でもママは、あたしが気づいてるとはきっと思ってないよ。
おもしろいね。
ときどきタクシーじゃなくて、男の人に送ってもらう時があるの。
車から降りた時に、男の人と言い合ってるときがある。
ママは声をひそめてるから、
何を言ってるかはわからないけどけど、怒っているのはわかる。
そういう時の男の人の最後のことばが、いつもきついことばなの。
あたしが聞きたくないことば。
するとね、ママすっごく明るく帰ってくるの。
あたしも思いっきり笑顔でママに飛びつくの。
でもわかるよね。
ママ肩で息してる。泣いてたんだって。
泣きかたあたしといっしょだし。
でもそれを言うと、またママ泣き出すかもしれないから、
あたしは、ずっと笑ってるの。
いい人に送ってもらった時は、
ママは声をひそめないの。ママの声のほうが大きいの。
その時だけは、きっとあたしのことは忘れてると思う。
でもいいよ。
ママの声はとってもすてき。
男の人の声は、こんどは静かで聞きとれないけど、
すっごくやさしい人だとわかるの。
あ、ママが帰ってきた。
ほら、自分にいいことがあった時のママは悲しそうなの。
ごめんね。いつもひとりにさせて、ごめんねって。
ママ自分がしあわせだと、あたしに悪いと思ってるのかな。
ママそんなことないよ。
ママがしあわせだとあたしもうれしいよ。
そう思ってるはずなのに、
なんで涙が出ちゃうのかな。
ママが帰ってくる。
うちのマンションは、ひとりぐらしの人が多いから、
いつも、しーんとしてるの。
ろうかで、人に会うこともめったにない。
だから うちは三かいだけど、
窓の下がちょうど道路だから、
ママがタクシーで帰ってきたら、車の音が聞こえるの。
ママってへんなの。
いやなことがあった日は明るくて、
いいことがあった日はさみしそうなの。
あたしはね、その理由がわかったの。
でもママは、あたしが気づいてるとはきっと思ってないよ。
おもしろいね。
ときどきタクシーじゃなくて、男の人に送ってもらう時があるの。
車から降りた時に、男の人と言い合ってるときがある。
ママは声をひそめてるから、
何を言ってるかはわからないけどけど、怒っているのはわかる。
そういう時の男の人の最後のことばが、いつもきついことばなの。
あたしが聞きたくないことば。
するとね、ママすっごく明るく帰ってくるの。
あたしも思いっきり笑顔でママに飛びつくの。
でもわかるよね。
ママ肩で息してる。泣いてたんだって。
泣きかたあたしといっしょだし。
でもそれを言うと、またママ泣き出すかもしれないから、
あたしは、ずっと笑ってるの。
いい人に送ってもらった時は、
ママは声をひそめないの。ママの声のほうが大きいの。
その時だけは、きっとあたしのことは忘れてると思う。
でもいいよ。
ママの声はとってもすてき。
男の人の声は、こんどは静かで聞きとれないけど、
すっごくやさしい人だとわかるの。
あ、ママが帰ってきた。
ほら、自分にいいことがあった時のママは悲しそうなの。
ごめんね。いつもひとりにさせて、ごめんねって。
ママ自分がしあわせだと、あたしに悪いと思ってるのかな。
ママそんなことないよ。
ママがしあわせだとあたしもうれしいよ。
そう思ってるはずなのに、
なんで涙が出ちゃうのかな。
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