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第1話・前田ダンジョンハウス

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 捨てドラゴンを拾った。捨てると拾う、字が似ている。どうでもいい。トカゲだとおもっていたが、ドラゴンだった。だから、最初の「捨てドラゴンを拾った」というのは後付けで、「捨てトカゲを拾ったら、ドラゴンだった」と言う方が正しいだろう。メタ的に言うなら、なんだよラノベかよ、なんて唾吐かれそうだが、ラノベの何が悪い。世の中動かしてるのは、ラノベだぞ!と言うと言いすぎだとドラゴンはよく叱ってくる。

 ドラゴンで言うと25歳、人間で言うと23歳。あんまり変わらないじゃねーか、とツッコみを入れたが、獣医がそうなの、と頑なに年齢一本でまとめてくれないから、感覚的にややこしい。ちなみに、ふつう人間で言うとの方が年齢上じゃないのか?
 猫なら7歳だけど、人間だと40歳なの、ぐらいじゃないと、人間換算年齢の意味ないだろ、と。ここでツッコんだら、獣医の思うつぼだから、へぇーそうなんだー、コイツ年下なんだぁ、と乗って置く。ノリツッコミはしない。


 前田牛白まえだうしろ、「まえだうしろ」、冗談みたいな名前だ。少なくとも親は遊んでいる。市役所が止めるべきだとも思う。前田龍蒼まえだりゅうせい、なんだよドラゴンの方がなんかカッコいいじゃねぇか。役者か、国の宝か。ヨコハマかっつーの。

 母親のもどり曰く、牛+白(動物+色)だろと。龍+青も(動物+色)だろと。いやいや、龍・ドラゴンは動物じゃねぇだろ。架空の生物、生物ってことは?動物、じゃねぇ。動物の定義がわからん。

【動物】
動物とは、多細胞で、真核細胞からなり、基本的に自ら栄養を作れず(従属栄養)、運動性をもち、発生の初期に胚葉を形成する生物である。

 父親のすすむが生物学者だから念のため聞いたら、
「龍蒼は動物だよ」と言い切った。いや、そこは、家族だよ、じゃないの。もどりもキャッキャ笑ってたから、龍蒼が「コイツラ、似タモノ同士ダネ」と言った。こいつ等って言い方も気になるが、似た者同士なんて言葉まで覚えてやがる。

 もうひとつ、俺の牛白の白に比べて、龍蒼の蒼は百歩譲って、「青」なんじゃないのか。なんでアイツだけそんなにカッコいいんだよ。

 そう言ったら、「価値観ノモンダイ」と言い放った。ドラゴンに価値観なんて言われたら、人間同士戦争しているの馬鹿らしくなるぞ、と叫びたくなる。

 このドラゴン、龍蒼は思ったよりもおおきくはなく、全長2メートル程度、体重いや重量は105キロ。まぁそんなにデカくもない、ドラゴンとしては。他のドラゴンを知らないが。で、龍蒼は手癖が悪いのが問題で、キラキラ光るものをつい持ち帰ってくる。これはドラゴンの特性というか性質、クセ、性、なんでもいいや、とにかくキラキラを集めてくる。宝石や金をしこたま押し入れに溜め込んでいるのを発見したとき、すすむともどりは足のつかない換金方法をずっと調べていたし、龍蒼は褒められていると勘違いして、そのあとも集め続けた。

 さすがに、闇バイトでは説明がつかない窃盗ぶりなので、すすむがもうそろそろやめなさい、と龍蒼に説いた。もっと早く倫理や道徳を教えるべきだと思うが。

 宝石や金を集めなくなった代わりに、龍蒼はやたらめったらと、どこそこの「姫」をさらってくる。ウッドバルト王国・リム王国・オーギュスター公国、ガダルニア王国大陸の主要4国の姫君をさらってくるのだ。

 そのあと、我が家はちょっとした戦場になる。その前に我が家の説明をしておかないといけない。

 千葉の行徳に構える二階建ての一軒家。1階は駐車場スペースが屋内に食い込む形で、8畳間が2つと狭い和室。この和室で両親は寝起きしている。2階に、俺の部屋と龍蒼の部屋の相部屋で10畳間。隣に16畳間の本来の両親の寝室に、各国の姫たちが寝起きしている。適宜、おかえりいただくべく、探索に来る勇者たちにも友好的に接していたわけだが、リム王国のアシュフォード姫がなかなかおかえりいただけない。

 というのも、もどりの食事が舌に合うようで、特に和食を好む。もどりはマクロビオティックに傾倒しているのもあり、野菜の蒸し煮を得意としている。これがまた、俺が言うのもなんだが、うまい。無水鍋の底に層のように刻んだ野菜を並べる。芽が出る野菜は下に、根を張る野菜は上に並べる。そうすれば、重ねた野菜同士は煮ると、芽、根の生える方向に向かって美味しさを伸ばすというのだ。

 この受け売りの説明をもどりがアシュフォード姫にするのを何度も目にしている。

 龍蒼はさらってきたのにも関わらず、無計画すぎるため、身代金を要求するわけでもなく、取り返しに来た勇者と積極的に戦うわけでもない。ただ、さらってくるのが目的なのだ。手段と目的が入れ替わるってのは、我が家の専売特許と言うべきか。

 最近、勇者と称して盗賊が侵入してくることが増えた。ドロボウだ。こんな庶民の家、(ではないか、ドラゴンとさらわれた姫がいる家なのだから)にこの手合いの賊が狙いをつけるのは、宝石と金が目当てなのだ。

 換金できないまま、かといって、自首して返すわけにもいかないまま、隠し持っている。よりによって、すすむがホームセンターで材料一式買ってきて、DIYで宝箱もどきをつくった。一つも換金できないのに、材料代だけで2万円近くかかってしまった。材料がチープな合板なので、塗装に時間とお金をかけたそうだ。どうでもいい。錠前を宝箱に埋め込んで、鍵は龍蒼に飲み込ませた。もどりが。夕飯に混ぜておいたらしい。龍蒼もなんでも丸飲みで、歯は噛み砕く用ではないらしい。

 宝箱の鍵は? と盗賊たちに詰め寄られたある夜、龍蒼の腹をみんなで指さした。龍蒼は、服を着たり直立二足歩行をしたりしない。

 言葉を話すことができる、大きなトカゲみたいなもんだ。だから、指さした方向を見ると盗賊たちは、スゴスゴと入って来た場所から帰る。最初の頃は窓を割って侵入してくる輩もいたが、もどりがキッチリ弁償させていた。

 盗賊の侵入被害も落ち着いた頃、今度はアシュフォード姫奪還のための、勇者隊というのが結成されたらしく、東西南北から萬子、索子、筒子に白撥中、に至るまで、どこからでも勇者隊がやってきた。報奨金は、我が家の宝箱というから、すすむは激怒した。

「あの宝箱、作るのにいくらかかったと思ってんだ。2万円と土日だぞと。塗装も入れたら、土日が4回ほどだ」と。

「じゃぁ、中の宝石と金をあげればいいじゃないか。アシュフォード姫ものしをつけて返せば、いいだろ」と俺は言った。

 毎週土曜日、朝の7時から勇者隊がやってくる。ご丁寧に、勇者隊で示し合わせたように、バッティングなしでやってくる。ただ一日2回、3回ともなると、笑ってもいられず、それに土曜日が毎週潰れるとあっては、完全週休二日制でないダークグレーの会社員であるすすむからすると、徐々に腹立たしいと言うようになった。徐々じゃなくて、最初から腹立たしくて正解だと思うのだが。

――というわけで、宝箱に入りきらなかったヘソクリをもどりが取り出して、家を大々的にリフォームした。

 建物の大きさは変わらないのだし、取り壊しての建て替えは、龍蒼とアシュフォード姫が人目について困る。ということで、リフォーム、それも、3階、4階建てにするんじゃなくて、地下に部屋を作り始めた。

「それ、ダンジョンだろ?」ともどりに詰め寄ったが、そうかなぁと惚ける。すすむに至っては、ここに隠し部屋を作って、ここがループするようにして、落とし穴はここでと、ダンジョン職人たちへの指示に余念がない。

 宝箱を壊して、宝石と金を渡す→宝箱を壊したくない(すすむ)

 龍蒼の腹から鍵を取り出して、宝箱を開錠して、宝石と金を渡す→手術が怖いからイヤ(龍蒼)

 アシュフォード姫だけでも返す→ここにもっと住みたい、和食をもっと食べたい(アシュフォード姫)
 龍蒼を自首させる→我が子のように育てて来たのにそれはあり得ない(もどり)※我が子のように育ててきたなら、悪事を働いたら自首させるのが親だろうが、とも思うが。

 ダンジョンを作って、勇者たちを迎え撃つ→おもしろそうだから賛成(すすむ・もどり・龍蒼・アシュフォード姫)

 すっかりアシュフォード姫の発言権が認められているというか、娘のポジション取りができている。俺より家族に馴染んでいる。

 アシュフォード姫は名前はいかにもだが、容姿は極めて和風だ。黒髪に、切れ長の一重、背が高く見えるのは、王女としての気品。姿勢がいいのだ。肌の手入れは行き届いていて、専用の化粧セットは、リム王国の侍女のお世話係から半月ごとに届く。届く? 届くなら居場所思いっきりバレてるってことよね。

 バレてるから、どんどこ勇者隊がやってくるってわけでもあるのだが。

 ダンジョン職人なんて職業があったのかと言う驚き。それはすなわち、この労働者不足の世の中で、就労人口が減りつつある我が国で、外国人労働者に頼らないといけない中で、こんな技量と人員が集められるって「なに?」 というものだ。わずか2カ月ほどで、地階10Fのダンジョンが完成した。入り組んだ迷路であり、俺たちも内見で工務店の案内で地階10Fまでたどり着くのに、1時間はかかった。もどりは、各階にトイレをつけておいてよかったわ、と自分のアイデアが採用されたことに気をよくしていた。

 この世で一番スゴイのは職人だな、と夕飯を食べながら、すすむが我が事のように言った。ゴキゲンだった。
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