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眠り姫は甘い悪魔に染められる
身体の不快感に目を覚ました私は数時間前、久々に定時に帰宅し缶酎ハイを数本開け呑んでいたのは覚えている。そう、私は住み慣れた“自宅”に帰り唯一楽しみの宅飲みをしていた・・・はずだった。
「何・・・ここ?」
辺り一面真っ白な空間にポツンと私だけが座り込んでいる・・・。まるで、某少年漫画に出てきた修行部屋のような光景が広がっていた。
「は?これはどういうこと!?どこッ!?」
このカオスな状況の中、私は重い腰を上げゆっくりと立ち上がり、とりあえず誰かいないか大きな声で呼びかけるも声の反射は勿論、誰も何の反応もなくただ虚しさだけが跳ね返ってくるのみだった。
現実離れした状態とまだ酔いが残っているためか情緒不安定に陥り煢然たる環境の中、無意識に涙が目元に溢れてきた。
「さっきからデッカイ声でうっせーなー」
パニックになり頭を抱え一人狼狽えている私の背後から不機嫌さがまざまざと伝わるほどの低い声色が鼓膜に飛び込んできた。
「だ、誰っ!?・・・えっ?、な、なんで上出くんが・・・ここに?」
「は?こっちが聞きてーよ。ってか、ここ何処だよ。しかも何でお前しかいないんだ?」
私は自分の耳を疑い、あまりの衝撃で身体が硬直してしまった。そう、目の前でセットされていないボサボサの髪を無造作に掻き、よれたスウェット姿なのに何故か神々しい程カッコよく見えてしまう男、上出天音が何故か私の視界の中にいる・・・。それだけでも驚きなのに普段ではありえない口調と態度で更に思考が停止してしまう。
現在、私の目の前で悪態をつく男。上出天音、26歳。
会社の同期で出世コース真っ只中の営業部エース的存在。入社一年を経たずして大手企業と契約を結び現在も尚、会社の貢献に一役買っていると言っていいほどの手腕の持ち主。
だからと言って、横柄な態度もなく上司や同性同僚からも可愛がられ、長身でスタイル抜群、顔も申し分ないため内外の女子社員からもモテモテ。
“品行方正”、“質実剛健”、“擲果満車”・・・決して大袈裟でもない言葉が並んでも彼にピッタリと当てはまる程の端麗さを兼ね揃えていた。
そんな彼に秘かに想いを寄せているが、お世辞にも美人とはほど遠い程の全てが並み中の並みの残念な私。ちんちくりんな身長でスタイルも悪い私が“高嶺の花”の彼に近づけるわけもなく女の子たちに囲まれる彼を遠目から眺めるだけの日々を過ごしていた。そんな状態だったのに、何故か今、私の目の前に・・・。
(あ、これは“夢”なんだ)
段々とぼんやりながらも頭が少しずつ平常の考えが思い浮かぶようにまで回復し、私はしっくりくる結論に辿り着いた。
「ははは、そりゃそうだよねー。目が覚めたらこんな得体の知れない場所に召喚されて、しかも上出くんが私の傍にいる・・・なーんてどこのファンタジー恋愛漫画だっつーの」
「さっきから、何ブツブツ喋ってんだよ。ウゼーなー」
不機嫌さと蔑みを混ぜ合わせたような表情の上出くんは、胡坐をかきながら此方を睨んできた。
嫌・・・これは、上出くんではない。私の脳内で創り上げた上出くんモドキだ。だってこんな態度、本来の彼がするはずないし況してや私にこんな砕けた話し方をしてくるなんてありえない。そう、これは夢なんだ。もしかしたら私は、無意識に品行方正ではない上出くんを妄想していたのかもしれない。だから、夢という形でこんなゲシュタルトを生み出したんだ。誰にでも笑顔で優しい上出天音が、実はよれよれスウェットを着こなし暴君でドSだった・・・私の妄想恐るべし。
「はあー。ったく、何なんだよ。今日はやっと面倒な取引先のプレゼンも終わって久々にゆっくり家で呑んでたのに」
「あ、安心してください。これは“夢”なんだと思うんです。だって、そうじゃないと意味不明じゃないですか。兎に角、私が目を覚ませば、この世界は消えてなくなると思うのでそれまでよろしくお願いします」
「・・・はあ。まあこんな突拍子もない状況と場所、夢で片付けてもらわなきゃ気狂いそうだわ。にしても変な夢だな、夢を夢と認識出来るってある意味凄いな」
上出くんはどこまでも真っ白けな空間を見渡しながら大きな溜息を吐いた。普段の礼儀正しくきちっとした印象の彼と程遠い姿に夢とはいえ、自分しか知らないと思うと何だか少し得した気分になり顔が綻んでしまった。
「何、ニヤ付いてんだよ。普段あんま表情ねーくせに。そっか、夢だからか」
勝手に自分の自問自答に納得すると上出くんは私の傍に一歩近づきマジマジと見つめてきた。
「お前って普段眼鏡だし無表情だからロボットかと思ってたけど、笑うとまあまあだな」
「ちょっ、ちょっと近いですッ!そもそも上出くんは普段優しくて物腰柔らかいのに今の上出くんは乱暴な言葉遣いでそっちの方が吃驚何ですけど!?・・・いや、これは私が勝手に創り上げた彼だから実際は違うのか」
「何ブツブツ言ってんだよっ。普段の俺はこうなの!ニコニコしてれば波風も立たないし上手く世渡り出来るんでね。それよりもここどうやって脱出るんだよ。ドアもないし」
「まあ、これは“夢”なんでもう一度寝れば戻れるかもしれないですね。とりあえず寝てみて駄目ならその時次を考えましょう」
「アバウトな発想だな」
私の言葉に呆れながらも上出くんは何か考えているようなポーズのままブツブツと独り言を呟いていた。
話し掛けてもスルーされた私は、その場にしゃがみ硬く冷たい白い床に手を添えた。
「でも、いくら夢でも床に直接寝るのは体痛くて辛いですね。せめて薄くてもいいから敷布団くらい欲しいで、って、わッッ!!!」
私がそんな言葉をポツリと呟くと何処からともなくボンっ!!と大きな爆発音と共に白い煙の中からキングサイズのベッドが私たちの前に現れた。
「な、何っ!?なんでいきなり」
「お前が布団欲しいとか言ったからじゃねーの?」
「あ、なるほど」
「とりあえず、床で寝ずに済んだな」
そう言うと上出くんは早速ベッドへ身体を沈めるとふー、と大きく息を吐いた。
「・・・何、突っ立ってんだよ。早く入れば?そもそもお前が願ったことじゃねーか」
「そ、そうなんですけど・・・」
夢とはいえ、やはり緊張で身体が硬直する。現実世界では絶対にありえないのだからここは漫喫しようと思いながらも秀麗な顔が近くにあると思うと・・・しかも、一緒に寝るなんて。考えてみたらこうやって普通に話していることですら烏滸がましいことで、小心者な私はどうしても躊躇ってしまう。
「いつまでもそんなんだと元の世界に戻れないかもしんないだろうが」
「ひゃっ!」
上出くんは、強引に私の腕を引っ張るとそのままベッドへと身体を沈められてしまった。キングサイズのベッドだからか大人二人横になっても広々とし多少寝返りを打っても邪魔にはならない。それでも、私はなるべく上出くんから離れるように隅の方へと移動し、「おやすみなさい」と一言添え、彼に背を向けるようにベッドに身体を沈めた。
妙な沈黙と今にも口から跳び出しそうになるほどの五月蠅い心臓音が身体中に鳴り響く。全く眠気が起きない私は、たまにゴソッと動く上出くんに小さく身体を反応させながら更にぎゅっと目を強く瞑った。
(眠気よ、来いっ!来いっ!)
「寒いからもうちょっとこっち来い」
私が必死に眠りを呼び起こそうとしている最中、唐突に上出くんは私の傍へ近づくと背後からふわりと身体を包み込んできた。
(※!♪?%#※?!)
声にならない声が喉元から込み上げ、私は咄嗟に片手で口元を塞いだ。心拍数が一気に上昇し心なしか身体中の毛穴から噴水のように汗が噴き出す感覚に襲われた。
「何?緊張してんの?」
耳朶に熱い息がかかり、それと共に少し掠れた甘い声色が鼓膜に流れ込み、思わず身体が反応してしまった。私のその反応に気付いた上出くんは、面白がるように私の腹部辺りに置いていた自身の左手を服越しから触り出し大きな掌で私の胸元を弄り出した。
「さっきから寝てなかったんだろ?少し疲れるようなことしないと眠気も起きないんじゃない?」
「やっ、な、何やっ・・・んっ」
「ブラしてないから硬くなった乳首がシャツに浮いてる。普段の格好じゃわかんなかったけど結構胸あるんだな」
薄いシャツの上から小さく勃ち上がった先端を爪先でカリカリと弄られ、下腹部辺りからもぞもぞとした感覚が襲ってきた。
「あ、だめ・・・んッ♡」
荒い息が耳元から離れると上出くんの熱く濡れた唇が項の皮膚に直接あたりその部分が一気に熱くなる。軽いキスを何度もし、背後の肩口に軽く痛みを植えつけてきた。自分には見ずらい場所だが、痛みと吸い付き加減からかなりの痕が付けられたのは理解出来た。
「こっち向け」
上出くんは背を向けていた私の肩を強引に自分へ引き寄せ向きを変えさせると彼の唇が私の唇を塞いだ。夢なのに全てがリアルでこれは本当に夢なのだろうか?と思わせるほどだった。咥内を暴かれ口端からどちらかもわからない唾液が顎下へと流れ落ちた。
「あちい・・・」
上出くんは、起き上がると私に馬乗りになり余裕のある表情を浮かべ徐にスウェットを脱ぐと引き締まった上半身が露わになった。その流れで何故か私のシャツも脱がされ胸元が彼の瞳の中に映し出された。あまりの恥ずかしさから私は両手で覆い隠そうとするとすぐさま彼の両手が降り両手首をベッドに縫い付けるように押さえつけてきた。
「隠すなよ。ちゃんと見せて」
再び彼の唇に塞がれると、ぴちゅ、ちゅぽ・・・卑猥な水音を鳴らしながら大きく節榑立った手で私の胸を揉みしだいた。
「ん・・・ふンッ・・・」
上出くんの唇は滑るように唇から顎先、首筋へと辿り、そのたびに口づけし噛みつくような痛みの痕跡を残してゆく。その甘美な痛みと痺れに私は嬌声を上げ身体を捩らせた。生理的な涕が眼尻から流れ、シーツに小さな染みを作った。
「何、その半啼き顔。なんかゾクってするな」
加虐心が芽生えたのか私の表情を見た上出くんは、上唇を舌でぺろりと舐め上げると意地悪な表情を浮かべた。
「ひいッんッ!あッ、そんな・・・吸っちゃ・・・んんッッ」
ぷっくりと腫れ上がった左先端を激しく吸い上げ、歯で甘噛みをしてきた。右の先端は、指先で摘まみながら捏ねるように弄られ、その刺激に私は翻弄と共にビクビクと鋭敏に襲われる。
「乳首、ガチガチになってるけど・・・感じてるの?気持ちいいの?」
尖った先端を舐めながら此方の様子を上目遣いで窺う上出くんは、普段の爽やかさは微塵もなく只々、婀娜めき雄雄しい獣と化していた。
「んぁッ、はッん♡・・・う・・・んんッ」
「乳首だけでこんな感じてたらこっち触ったらどうなるのかなー?」
「あ、だめッ!上出くんッ」
私の抵抗は虚しく手慣れた彼の手によってあっという間に衣服は全て剥ぎ取られ何一つ身につけていない状態にさせられてしまった。夢とは頭ではわかっていても恥ずかしいものは恥ずかしい・・・。私は、気休めにしかならないとわかっていながらも手で秘部を隠した。
「ほんと、その顔そそるわー」
微笑し呟く上出くんは、再び私の胸元に両手を添え掬うように包み込み揉みしだいた。柔々と優しく揉みながら長くしなやかな指に硬く尖った先端をぴんっと弾かれ、咄嗟に声と共に下腹部に力が入る。
「そろそろ我慢できなくなってきたんじゃない?」
ニヤリと厭らしい笑みを浮かべると彼の片手は胸から離れ、私の柔らかな腹部へと滑りながら移動し薄く生え揃った恥毛を優しく撫で上げた。
「ん・・・はっ、やンッ・・・見ない・・・で」
気付けば上出くんは私の両脚を広げ秘部が丸見えになる位置に座っていた。昂奮している様子で軽く荒い息を吐きながら上出くんは、自身の中指を私の咥内に入れ唾液を絡めるように動かした。恍惚な表情で行う彼の姿は、厭らしい色香を放ち思わず見惚れてしまう程だった。
「ぐちゃぐちゃになってるな。これなら指濡らさなくても良かったかもな」
「ひゃッ!・・・んー、あンッ、お、音・・・やらー・・・」
手前にある小さいながらも過敏な部分を親指で捏ね、もう片方の手の中指は濡れ光る割れ目に沿って滑らせ膣口の浅い部分を優しくなぞり上げた。膣口から溢れる粘着液を指に絡め蠢くたびくちゅ、くちゅと淫靡な音を轟かせる。あまりの強い刺激と膣内に埋め込んでくれない指のもどかしさに私は意識が散漫し甘く悶える声を空間に響かせた。
静かな無空間には男女の荒い息遣いとむせるような体液の香りが次第に色濃く漂い始めた。私は止めて欲しい反面、夢とは言え想いを寄せている彼から与えられる熱情を嬉しく受け入れる身体、そのアンバランスさから自分でもわけがわからなくなっていた。
「こんだけ濡れてるなら大丈夫か」
いつの間にか下肢から聞き慣れない小さな振動音が響き出し、私はそれを見た瞬間、自分の目を疑った。
「やっ!な、な、なんで、どっからそんなモノがッ!?ひィッッ!!」
ピンク色の小さく可愛らしい形状の凶器は下肢でブルブルと震え、それをそっと小さな芽に軽くあてがわれた。その瞬間、先ほどとはまた違った強い刺激が身体中を駆け巡り思わず声と腰が上擦ってしまった。
「なんかさー、ローターとかあったらいいなーなんて思ってたらいつの間にか手元にあったんだよねー。さっきのベッドみたいなもんだな。あ、痛かったら言ってね。にしても、夢だから願望が叶うんだろうけど目覚めたくないなー。このままここに居たいと思っちゃうなー」
少し不平な表情を見せる上出くんに涕目で睨むもその表情は彼を余計煽らせる形となり私は大いに後悔した。
「なにー?もっと遊んで欲しそうな表情だなー♪いいよー♪いっぱい遊んであげるな♡」
☆☆☆
「あッ、あぁー、んッ、ひッんッ、はッ、はっ」
あれからどのくらい経ったのか全く分からない。何せ、ベッド一つあるだけで時計もないのだからこの場所に滞在している時間さえも全くわからない。
「あーあー、シーツがお漏らししたみたいにびっちゃびちゃになって。顔も涙と涎で酷いことになってるぞ」
不敵な笑みを浮かべた上出くんは、快楽の疲労でへとへとになる私を眺めながら今も尚、手を休めることなく先程のローターで膣内を愉しそうに攻め立てていた。
何度も何度もイカされ続けた身体は自分でも制御出来ずひたすら上出くんから与えられる刺激を受け入れるしかなかった。
「これ現実世界でもやりたいなー。現実世界でローター突っ込まれてんのに平然とした表情で仕事してるお前の姿見たらきっと俺、仕事にならないだろうな。なあ、これ夢から覚めてもやってくんない?」
「な、無理に決まっ、んッッ、ひぐッ、はうっ」
(大体、貴方は私が創り上げたモドキなんだから本物の上出くんがそんなことするわけないでしょ!!)
脳内では盛大にツッコミを入れるも現実に出るのは私の嬌声のみで、言葉にならない言葉ばかりだった。
やっとローターから解放された私は、度々襲う痙攣と疲労で身動きが取れず放心状態になっていた。
「そろそろ俺もー」
上出くんは、スウェットのパンツと一緒に穿いていたトランクスをずり下げると既に隆々しく硬い陰茎が腹部につくほど屹立した状態で現れた。あまりの迫力に疲れが吹っ飛ぶと共に夢であっても“あんな規格外・・・無理っ!!”と危険信号を脳内で発していた。
「ちょ、ちょっと待ってください。・・・む、無理です。そんなの・・・」
「大丈夫だって。ちょっと他よりおっきいかもしんねーけど死にはしないから。大体、赤ちゃんはこっから産まれてくるんだぞ?それに比べたら俺のなんてちっさい、ちっさい♪」
私は、少し身体を起こしゆっくりと彼から離れようとした刹那、逃すまいと上出くんに両脚を引っ張られ元の位置に戻されてしまった。大きく両脚を開かされると秘部がむき出しになり、割れ目あたりに上出くんの凶暴な陰茎が宛がわれる。上出くんは、自身を擦りつけるように軽く腰を動かすと気持ちよさげな表情を浮かべた。このまま腰を突き出せば簡単に挿入ってしまう距離に疼きが込み上げ思わず身を捩った。
「はっ、ん・・・大体、はっ、んっ・・・お前が悪いんだからな。なかなか想い出さないから・・・こんなことまでしてもお前は・・・」
「何を言って・・・ひゃッんッ!あっ、拡がっちゃ・・・あゥッ、んッ・・・ううッ」
一瞬、私を見つめる瞳が哀し気に映りその言葉の意味を問おうと気を抜いた瞬間、陰核と膣口へ上下に擦りつける律動をしていた彼の陰茎がぐぐっと膣内へと強引に押し進めてきた。
夢なのに脳天を突き刺されるような痛みとゾクゾクとした感覚が神経を逆なで、私は咄嗟に強く目を瞑り歯を食い縛りながら何かを逃すようにシーツを握り締めた。
「はッ・・・あッ、あッ・・・んッあんっ・・・うッ・・・」
「大丈夫か?もう少し奥、挿れるから痛かったら言って」
(い、痛い・・・けど・・・言葉が・・・出せない・・・よ)
過呼吸になりそうな程の息遣いの私を優しい口調で宥める上出くん自身も少し苦しそうな表情で私の額に口づけした。彼の汗ばんだ皮膚が私の胸元に密着し、上出くんが動くたびに先端が擦られ更なる悦楽で頭がおかしくなりそうだった。
身体が引き裂かれそうな程の圧迫感と質量を与えられ、初めこそ痛みがあったが、私の膣壁は次第に彼の陰茎をピッタリと咥え込み離すまいと言わんばかりに無意識に締め上げた。
「ううッ・・・いきなり、そん、くッ・・・締めんな、よ」
荒くなった呼吸で苦しそうな表情で見下ろす上出くんが可愛くて愛おしくて・・・私は力ない腕をやっとの思いで伸ばし彼の頬に手を添えた。
「夢だけど・・・覚めてしまったらなかったことになっちゃうけど・・・上出くんに触れれたこと忘れない」
「ちなッ!」
「んッ・・・んちゅッ、んぁッ・・・ふンッ」
昂奮しているのか上出くんに激しく咥内をどろどろに犯されながらパンッパンッとリズムよく腰を打ち付けられる。その度に膣内から粘着した水音が響き、臀部へと流れシーツに落ちた。その滑りの良い動きにかなり濡れているのもわかったしこの状況に恥ずかし気持ちもあったが、それよりも上出くんが自分に欲情し今にも吐き出してしまいたいのを堪えてくれる姿が嬉しかった。
「はっ、は・・・っく、うッ・・・んん、もう、そろそろ・・・」
「う、ん・・・き、て・・・膣内に・・・上出くんのいっぱい・・・射精して」
その言葉を私が吐いたと同時に、先ほどよりも激しく腰を打ち付け、身体を揺さぶられた。上出くんの動きと比例するように彼から流れる汗が私の胸や腹に落ちるたび、私は恍惚な表情で彼を見つめた。
膣内奥へと穿つ凶暴な杭に膣壁を何度も擦られぞわぞわとした昂奮が下腹部辺りから込み上げてくる。
「あぁンッ・・・わた・・・しも・・・ま、た・・・イっちゃ・・・んんッッ」
「俺・・・もう、はッ、くッ、ちな・・・キモチ・・・いい・・・」
互いの身体を深く密着し揺さぶられながら上出くんの艶のある呻きが耳元を刺激する。既にイったばかりの私の身体は、頭が真っ白で思考は追いつかず何度もビクビクと痙攣を起こし、なかなか鎮まる気配はなかった。
「んっ、はぁッ・・・スゲー、膣内ビクビクして・・・持ってかれそ・・・はっ、んっ、ヤバ・・・射精・・・る・・・イ、ク・・・ううッ」
びゅるるるる・・・熱く滾った白濁が私の最奥へと吐き出され全てを絞り出すと上出くんは倒れるように私に覆い被さり荒い息を吐きながらしばらく抱き合ったままの体勢になっていた。
「んっ、はあ・・・スゲー射精まくったかも」
少しずつ呼吸の乱れが落ち着くと上出くんは上体を起こした。彼の言葉通り、膣内から陰茎をゆっくり抜き取ると一緒に大量の白濁がこぷりと膣口から溢れそのまま臀部に伝いシーツを濡らした。
(こんな激しいの・・・初めて・・・って夢か。にしても私、ヤバいくらい欲求不満かよっ!!・・・・いくら夢とはいえ上出くんとこんなことシちゃって)
私は自分にツッコミを入れながらも疲労困憊の状況下、ゆっくりと瞼が重く圧し掛かって来る。少しずつ落ちる瞼の隙間から見えた上出くんは、いつもと同じ優し笑みを浮かべるも何処かしら哀しそうな表情にも見えた。彼は、私の髪を撫でながら額にキスを落とした。
「な・・・んで・・・」
私はその答えを聞きたくても瞼が重く覆い全てが闇に包まれるとそこで意識が事切れた。だから彼が残した最後の言葉は私には届くことはなかった。
「おやすみ・・・早く、想い出してよ・・・ちな」
この淫靡でおかしな夢の世界がこのまま続けばいいのに・・・なんて想いながら私はほんのり温かい感触に頬を緩めた。
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「いっ!たーーーーっっい!!!!」
どしんっ!と大きな音と共に自分の身体を叩き付けるように転げ落ち、思いっきり腰を打った激痛に思わず悶絶した。その振動のせいで運悪く目覚まし音を鳴り響かせたスマートフォンが私の頭に落ち、更なる痛みに声も出なかった。
体感する痛み付きの目覚ましのおかげで一気に目が覚めた私は、辺りを見渡すと上出くんの姿はなく見慣れたワンルームが広がる。間近にあるローテーブルには、昨夜呑んでいた空のチューハイの缶と食べ残したツマミが散乱していた。
「やっぱり夢・・・か。・・・まあ、そりゃあそうだよね。あんなのありえないもんね」
自分の身体の変化を見ても、勿論彼から付けられていた痛みも痕もなく綺麗なものだった。ただ、あんな淫靡な夢のせいか下着が気持ち悪くなっているのは必然で、私はすぐさま新しいショーツに穿き替えようと重い身体を何とか振り絞り腰を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
「リアル過ぎて引くくらいの夢だったな・・・ってか、それよりも夢とは言え上出くんとあんなことを」
全くといっていいほど昨日の疲れは取れておらず、より疲労感で一杯の私は、自分の欲求不満さに情けなくなった。一先ず、夢は置いといて気持ちを切り替えようと洗面所へと向かおうとした刹那、足元にあった何かを踏んずけ思わず痛みで顔を歪めた。
「痛っー、もーう!次から次へとーーッッ・・・って、これ」
手の親指の爪程の大きさの石を拾い思い出したかのようにまじまじと眺めた。昨日の帰宅途中、アクセサリーの路上販売を目にした私は、普段なら惹かれることがないのに何故か吸い寄せられるようにその露店へ足を運んでいた。
そこは、多種多様な手作り雑貨が並べられ、何点か自分好みの商品も置かれていた。その時、若い女性店主が私に近づきこの小さな石を手渡してきた。
『お姉さん、特別にこのパワーストーンあげる♪正直、お姉さんちょっと不幸体質っぽく見えるからこれを肌身離さず持ってて♪良いことあるから』
ちょっと失礼な言葉と一緒に手渡された乳白色がかったブルーグリーンの原石を貰ったものの私は特に気にすることなくローテーブルに置き呑み始めた・・・までは覚えている。あとは、酔っ払っていたから記憶が飛びあの夢の世界へと飛ぶことになったんだけど・・・。
「この石のおかげで上出くんの夢が見れた・・・とか?にしてもこれなんて名前の石なんだろ?綺麗だなー。アブノーマルだったけどちょっと幸せな気分になれたし」
私は石をテーブルに置き、気持ちを切り替えるように頬を軽く一叩きすると出勤準備を始めることにした。
☆☆☆
(あれ?さっきのパワーストーン、いつの間に鞄の中に?バタバタ準備してたからテーブルから落ちて鞄に落ちちゃったのかな?)
自身のデスクに着き、鞄を開けると先程の原石が入ってるのに気づいた。私はそれを鞄から取り出し何気にスカートのポケットにしまい込んだ。
「仙徳さん、おはよう。出社した直後に申し訳ないんだけど、この段ボール保管庫に持って行ってもらえないかなー。実は私、早朝ミーティング入ってるのすっかり忘れてて返しに行くタイミングなくて」
しまった瞬間、背後から申し訳なさそうな表情の女性同僚に声を掛けられた私は、了承すると段ボールがある場所へと連れて行かれた。
「ファイリングされたやつ結構入っててちょっと重いんだけど、ほんとごめんね」
「大丈夫ですよ。私、身体は小さいけど力はあるので」
(・・・って、重っ!)
長机に置いてあった段ボールを持ち上げると思ってた以上の重量に一瞬、腰に軽く衝撃が走った。朝ベッドから落ちたのが影響していたため、普段なら何とか持てる重さが今の私には少し・・・いやかなりキツかった。
「・・・大丈夫?本当は他の男性社員とかに頼もうと思ってたんだけど今日に限って直行組ばっかで」
「大丈夫です。それより時間大丈夫ですか?」
私が軽く窘めると腕時計を確認した先輩は、謝りながら慌てて部屋を出て行った。
「とりあえず、運んじゃうか・・・って小さな段ボールだから油断しちゃったよ。台車でも借りた方が良かったかなー」
ふんぬっ!と私は腰を気にしながら言われていた保管庫へとよたよたとした足取りで向かうことにした。
(なんか、身体もしんどいからそんなにない距離でもちょっとツラいな・・・)
私は唇を一文字に引き締めゆっくり一歩一歩踏みしめながら歩いているとふいに横から持っていた段ボールを攫うように奪われ腕と腰が一気に楽になった。
「仙徳さん、おはよ。エレベーターから降りたら丁度目の前で小動物がプルプルしてるみたいな後ろ姿見えたから。結構重いのに腰とか大丈夫だった?」
「か、上出くんっ!?・・・お、おはよ、ござい・・・ます。だ、大丈夫です、私こう見えて力はあるんで。なので、段ボールを・・・」
「これって保管庫に持ってくんだよね?俺もそっちに欲しいファイルあるからついでに手伝うよ」
いつもの上出くんの口調と表情に安堵するも、昨夜の乱れた彼の表情が重なり赤くなった顔を隠すように視線を俯かせた。
「本当に大丈夫ですから、お気になさらず」
「そしたらー」
私が何度も渋るように遠慮していると上出くんは、持ち上げていた段ボールを一度床に置き蓋を開け数冊分のファイルを取り出し私に手渡した。
「これならいいでしょ?俺も軽くなるし仙徳さんも気遣わずに済むし」
少し悪戯っ子のような可愛らしい笑顔を向けられ、私の心拍数が更に上昇したのが手に取るように分かった。
(やっぱ、こっちの方がいいかも。あんな暴君ドSみたいにさせてしまったのが本当に申し訳ない)
心の中で何度も上出くんに土下座する妄想をしながら残り数メートルで目的地に到着してしまうため幸せを噛み締め歩いているとふいにスカートのポケットに入れてあるパワーストーンが腿にあたった。
(ってか、これももしかしたら石の力なのかな)
昨夜の夢といい、現実でも本物の上出くんとの時間を共有出来、心の中で私は一生この石を持ち続けようと決めた。
「今日は眼鏡してないんだね。今日はコンタクト?仙徳さん目パッチリだし無い方が似合ってるよ。それにその方が可愛い表情が見えるし俺としては嬉しいかな♪・・・って、これってセクハラになっちゃうかな!?」
「い、いえっ!大丈夫ですっ。・・・ありがとうございます。今日、朝バタバタしてたら忘れてきちゃったみたいで。コンタクトはしてないんですけど、視力的には生活に不便はないので大丈夫です」
焦ったように自分の発言に狼狽える上出くんを宥めながらお世辞とは言え、可愛いと言ってくれた言葉が胸をじんわりと熱くした。
元来、視力が良い私は、少々対人恐怖症の気がありなるべく目を見て話さなくていいように目元まで前髪を伸ばし眼鏡で隠していた。が、今朝はバタバタしながら出勤したため掛け忘れてしまっていた。
(そういえば、夢の上出くんにもそんなようなこと言ってたな)
ふとそんなことを想いながら夢の上出くんモドキと本物の上出くんが少しシンクロしてしまうもそれを振り払うように私は頭を左右に振った。私の謎の動きに少し怪訝な表情を向ける上出くんの視線は全く気付かなかった。
距離にしては短いものの、今までこんな話したことがないという程彼との会話を楽しんだ。正直、緊張のあまり何を話していたか部分部分覚えてないが・・・。
そうこうしている間に気付けば保管庫のドアまで近づいていた。二人で中へ入り、私は頼まれたファイルを元の場所に片付け、その間上出くんは仕事に必要なのか、ファイルが並んだ棚を探すように見つめていた。
「ありがとうございました。上出くんのおかげで助かりました」
「いえいえ、どういたしまして。こんな重い物持ってたら腰にくるから気を付けなきゃ。またこんなことあったら遠慮なく俺に言ってくれればいいからね」
「ありがとうございます。ホントですね・・・実は今日、腰を痛めていたので正直辛かったんです」
「・・・そっか、それは大変だったね」
「じゃあ、私は先に戻ります。ありがとうございました」
ベッドから転げ落ちたとは言えず、濁しながら話した内容に一瞬眉をピクっと上げた上出くんに私は気づくことなく軽く頭を下げその場を後にした。
(あーッ!緊張したよー!上出くんモドキとは普通に話せたけど本物とはそういうわけにもいかないし。はぁー♪今日は幸せな気分で過ごせそうー♪)
私は上出くんの心うちなど知る訳もなく軽い足取りで自身の席へと向かうのであった。
※※※
保管庫でちなと別れた天音は、既にいなくなった彼女の後ろ姿を想い出し口元を掌で覆うと小さく溜息をついた。
(まあ、かなり負担は掛けたからな。それが現実にも影響したのか?)
まさか、ベッドから落ちたことで腰を痛めたことを知らない天音は少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
保管庫にそもそも用事のない天音だが言った手前、手ぶらでデスクに行けず適当なファイルを持ち出すと自身の部署がある階へと向かった。
「上出さん、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
昨夜のことを考えながら部署へと向かっていると前から後輩の男性社員に声を掛けられた。
「珍しいっスね。いつもならもうデスクにいる時間なのに。もしかして、昨日告白してきた受付の子と・・・・・・。あーあ、俺も上出さんくらいのスペックがあればなー。きっと人生楽しいだろうなー」
矢継ぎ早に大きな声でベラベラと喋る後輩に困りながら周囲の人に聞かれていないか一瞥し、再び後輩に視線を戻した。
「はは、違う、違う、大きな声で勝手な想像しないの。ちょっと保管庫に用があってそっち寄ってから来たんだ。あと、受付の子は丁重にお断りしたから佐山くんが思っているようなことは残念ながらなく、一人寂しく宅呑みしてました」
えー勿体ないーと言わんばかりの表情を向けられた天音は、困った笑顔を向け自身のスラックスのポケットに入っていたモノを取り出した。
「・・・まあ、確かにいつもより家から出るのは遅かったかな。昨夜の夢見が良くて起きたくなかったのか、目覚ましに気づかなくてね」
「えー、どんな夢だったんですか?上出さんがそこまでなるような夢、めちゃめちゃ気になります」
「ん?それは秘密だよ♪でも、いずれ現実になればいいなとは思えるような夢」
「大口の商談が上手くいった夢・・・とかかなー」
「まあ、確かにある意味、大口な案件かな」
(言うわけないだろ、あんな愉しい夢)
含み笑いをする天音に、隣を歩く後輩はよくわからないという表情を向けながらその後も追及されるも、天音は話しを逸らしながら夢の話をすることは無かった。
天音は、部署に入るとたいして用のないファイルを自身のデスクに置きデスクチェアに腰を降ろした。パソコンの電源を入れ起動している間、ポケットから先ほどのモノを取り出した。掌に乗せた乳白色がかったブルーグリーンの原石を眺めながら不敵な笑みを浮かべた。
「上出さーん、おはようございまーす♡珈琲お持ちしましたぁ♡あ、それパワーストーンですかぁ?可愛いー♡」
不意に背後から甘ったるく不愉快な臭いを振り撒きながら女性社員が珈琲カップを手にし天音の傍に近づき渡してきた。一瞬、眉間に皺が寄るもすぐさまいつもの表情に戻した天音は、笑顔で挨拶と礼を伝えた。
「うん、そう。俺にとってとっても大事な物なんだ。これのおかげで願いが一つ叶ったからね」
天音は、無意識に腰を擦りながらパソコン画面を睨みながらキーを打つ彼女の姿を遠目から見つめ愛おしそうに目を細めると石を握り締め不敵に微笑んだ。
「何・・・ここ?」
辺り一面真っ白な空間にポツンと私だけが座り込んでいる・・・。まるで、某少年漫画に出てきた修行部屋のような光景が広がっていた。
「は?これはどういうこと!?どこッ!?」
このカオスな状況の中、私は重い腰を上げゆっくりと立ち上がり、とりあえず誰かいないか大きな声で呼びかけるも声の反射は勿論、誰も何の反応もなくただ虚しさだけが跳ね返ってくるのみだった。
現実離れした状態とまだ酔いが残っているためか情緒不安定に陥り煢然たる環境の中、無意識に涙が目元に溢れてきた。
「さっきからデッカイ声でうっせーなー」
パニックになり頭を抱え一人狼狽えている私の背後から不機嫌さがまざまざと伝わるほどの低い声色が鼓膜に飛び込んできた。
「だ、誰っ!?・・・えっ?、な、なんで上出くんが・・・ここに?」
「は?こっちが聞きてーよ。ってか、ここ何処だよ。しかも何でお前しかいないんだ?」
私は自分の耳を疑い、あまりの衝撃で身体が硬直してしまった。そう、目の前でセットされていないボサボサの髪を無造作に掻き、よれたスウェット姿なのに何故か神々しい程カッコよく見えてしまう男、上出天音が何故か私の視界の中にいる・・・。それだけでも驚きなのに普段ではありえない口調と態度で更に思考が停止してしまう。
現在、私の目の前で悪態をつく男。上出天音、26歳。
会社の同期で出世コース真っ只中の営業部エース的存在。入社一年を経たずして大手企業と契約を結び現在も尚、会社の貢献に一役買っていると言っていいほどの手腕の持ち主。
だからと言って、横柄な態度もなく上司や同性同僚からも可愛がられ、長身でスタイル抜群、顔も申し分ないため内外の女子社員からもモテモテ。
“品行方正”、“質実剛健”、“擲果満車”・・・決して大袈裟でもない言葉が並んでも彼にピッタリと当てはまる程の端麗さを兼ね揃えていた。
そんな彼に秘かに想いを寄せているが、お世辞にも美人とはほど遠い程の全てが並み中の並みの残念な私。ちんちくりんな身長でスタイルも悪い私が“高嶺の花”の彼に近づけるわけもなく女の子たちに囲まれる彼を遠目から眺めるだけの日々を過ごしていた。そんな状態だったのに、何故か今、私の目の前に・・・。
(あ、これは“夢”なんだ)
段々とぼんやりながらも頭が少しずつ平常の考えが思い浮かぶようにまで回復し、私はしっくりくる結論に辿り着いた。
「ははは、そりゃそうだよねー。目が覚めたらこんな得体の知れない場所に召喚されて、しかも上出くんが私の傍にいる・・・なーんてどこのファンタジー恋愛漫画だっつーの」
「さっきから、何ブツブツ喋ってんだよ。ウゼーなー」
不機嫌さと蔑みを混ぜ合わせたような表情の上出くんは、胡坐をかきながら此方を睨んできた。
嫌・・・これは、上出くんではない。私の脳内で創り上げた上出くんモドキだ。だってこんな態度、本来の彼がするはずないし況してや私にこんな砕けた話し方をしてくるなんてありえない。そう、これは夢なんだ。もしかしたら私は、無意識に品行方正ではない上出くんを妄想していたのかもしれない。だから、夢という形でこんなゲシュタルトを生み出したんだ。誰にでも笑顔で優しい上出天音が、実はよれよれスウェットを着こなし暴君でドSだった・・・私の妄想恐るべし。
「はあー。ったく、何なんだよ。今日はやっと面倒な取引先のプレゼンも終わって久々にゆっくり家で呑んでたのに」
「あ、安心してください。これは“夢”なんだと思うんです。だって、そうじゃないと意味不明じゃないですか。兎に角、私が目を覚ませば、この世界は消えてなくなると思うのでそれまでよろしくお願いします」
「・・・はあ。まあこんな突拍子もない状況と場所、夢で片付けてもらわなきゃ気狂いそうだわ。にしても変な夢だな、夢を夢と認識出来るってある意味凄いな」
上出くんはどこまでも真っ白けな空間を見渡しながら大きな溜息を吐いた。普段の礼儀正しくきちっとした印象の彼と程遠い姿に夢とはいえ、自分しか知らないと思うと何だか少し得した気分になり顔が綻んでしまった。
「何、ニヤ付いてんだよ。普段あんま表情ねーくせに。そっか、夢だからか」
勝手に自分の自問自答に納得すると上出くんは私の傍に一歩近づきマジマジと見つめてきた。
「お前って普段眼鏡だし無表情だからロボットかと思ってたけど、笑うとまあまあだな」
「ちょっ、ちょっと近いですッ!そもそも上出くんは普段優しくて物腰柔らかいのに今の上出くんは乱暴な言葉遣いでそっちの方が吃驚何ですけど!?・・・いや、これは私が勝手に創り上げた彼だから実際は違うのか」
「何ブツブツ言ってんだよっ。普段の俺はこうなの!ニコニコしてれば波風も立たないし上手く世渡り出来るんでね。それよりもここどうやって脱出るんだよ。ドアもないし」
「まあ、これは“夢”なんでもう一度寝れば戻れるかもしれないですね。とりあえず寝てみて駄目ならその時次を考えましょう」
「アバウトな発想だな」
私の言葉に呆れながらも上出くんは何か考えているようなポーズのままブツブツと独り言を呟いていた。
話し掛けてもスルーされた私は、その場にしゃがみ硬く冷たい白い床に手を添えた。
「でも、いくら夢でも床に直接寝るのは体痛くて辛いですね。せめて薄くてもいいから敷布団くらい欲しいで、って、わッッ!!!」
私がそんな言葉をポツリと呟くと何処からともなくボンっ!!と大きな爆発音と共に白い煙の中からキングサイズのベッドが私たちの前に現れた。
「な、何っ!?なんでいきなり」
「お前が布団欲しいとか言ったからじゃねーの?」
「あ、なるほど」
「とりあえず、床で寝ずに済んだな」
そう言うと上出くんは早速ベッドへ身体を沈めるとふー、と大きく息を吐いた。
「・・・何、突っ立ってんだよ。早く入れば?そもそもお前が願ったことじゃねーか」
「そ、そうなんですけど・・・」
夢とはいえ、やはり緊張で身体が硬直する。現実世界では絶対にありえないのだからここは漫喫しようと思いながらも秀麗な顔が近くにあると思うと・・・しかも、一緒に寝るなんて。考えてみたらこうやって普通に話していることですら烏滸がましいことで、小心者な私はどうしても躊躇ってしまう。
「いつまでもそんなんだと元の世界に戻れないかもしんないだろうが」
「ひゃっ!」
上出くんは、強引に私の腕を引っ張るとそのままベッドへと身体を沈められてしまった。キングサイズのベッドだからか大人二人横になっても広々とし多少寝返りを打っても邪魔にはならない。それでも、私はなるべく上出くんから離れるように隅の方へと移動し、「おやすみなさい」と一言添え、彼に背を向けるようにベッドに身体を沈めた。
妙な沈黙と今にも口から跳び出しそうになるほどの五月蠅い心臓音が身体中に鳴り響く。全く眠気が起きない私は、たまにゴソッと動く上出くんに小さく身体を反応させながら更にぎゅっと目を強く瞑った。
(眠気よ、来いっ!来いっ!)
「寒いからもうちょっとこっち来い」
私が必死に眠りを呼び起こそうとしている最中、唐突に上出くんは私の傍へ近づくと背後からふわりと身体を包み込んできた。
(※!♪?%#※?!)
声にならない声が喉元から込み上げ、私は咄嗟に片手で口元を塞いだ。心拍数が一気に上昇し心なしか身体中の毛穴から噴水のように汗が噴き出す感覚に襲われた。
「何?緊張してんの?」
耳朶に熱い息がかかり、それと共に少し掠れた甘い声色が鼓膜に流れ込み、思わず身体が反応してしまった。私のその反応に気付いた上出くんは、面白がるように私の腹部辺りに置いていた自身の左手を服越しから触り出し大きな掌で私の胸元を弄り出した。
「さっきから寝てなかったんだろ?少し疲れるようなことしないと眠気も起きないんじゃない?」
「やっ、な、何やっ・・・んっ」
「ブラしてないから硬くなった乳首がシャツに浮いてる。普段の格好じゃわかんなかったけど結構胸あるんだな」
薄いシャツの上から小さく勃ち上がった先端を爪先でカリカリと弄られ、下腹部辺りからもぞもぞとした感覚が襲ってきた。
「あ、だめ・・・んッ♡」
荒い息が耳元から離れると上出くんの熱く濡れた唇が項の皮膚に直接あたりその部分が一気に熱くなる。軽いキスを何度もし、背後の肩口に軽く痛みを植えつけてきた。自分には見ずらい場所だが、痛みと吸い付き加減からかなりの痕が付けられたのは理解出来た。
「こっち向け」
上出くんは背を向けていた私の肩を強引に自分へ引き寄せ向きを変えさせると彼の唇が私の唇を塞いだ。夢なのに全てがリアルでこれは本当に夢なのだろうか?と思わせるほどだった。咥内を暴かれ口端からどちらかもわからない唾液が顎下へと流れ落ちた。
「あちい・・・」
上出くんは、起き上がると私に馬乗りになり余裕のある表情を浮かべ徐にスウェットを脱ぐと引き締まった上半身が露わになった。その流れで何故か私のシャツも脱がされ胸元が彼の瞳の中に映し出された。あまりの恥ずかしさから私は両手で覆い隠そうとするとすぐさま彼の両手が降り両手首をベッドに縫い付けるように押さえつけてきた。
「隠すなよ。ちゃんと見せて」
再び彼の唇に塞がれると、ぴちゅ、ちゅぽ・・・卑猥な水音を鳴らしながら大きく節榑立った手で私の胸を揉みしだいた。
「ん・・・ふンッ・・・」
上出くんの唇は滑るように唇から顎先、首筋へと辿り、そのたびに口づけし噛みつくような痛みの痕跡を残してゆく。その甘美な痛みと痺れに私は嬌声を上げ身体を捩らせた。生理的な涕が眼尻から流れ、シーツに小さな染みを作った。
「何、その半啼き顔。なんかゾクってするな」
加虐心が芽生えたのか私の表情を見た上出くんは、上唇を舌でぺろりと舐め上げると意地悪な表情を浮かべた。
「ひいッんッ!あッ、そんな・・・吸っちゃ・・・んんッッ」
ぷっくりと腫れ上がった左先端を激しく吸い上げ、歯で甘噛みをしてきた。右の先端は、指先で摘まみながら捏ねるように弄られ、その刺激に私は翻弄と共にビクビクと鋭敏に襲われる。
「乳首、ガチガチになってるけど・・・感じてるの?気持ちいいの?」
尖った先端を舐めながら此方の様子を上目遣いで窺う上出くんは、普段の爽やかさは微塵もなく只々、婀娜めき雄雄しい獣と化していた。
「んぁッ、はッん♡・・・う・・・んんッ」
「乳首だけでこんな感じてたらこっち触ったらどうなるのかなー?」
「あ、だめッ!上出くんッ」
私の抵抗は虚しく手慣れた彼の手によってあっという間に衣服は全て剥ぎ取られ何一つ身につけていない状態にさせられてしまった。夢とは頭ではわかっていても恥ずかしいものは恥ずかしい・・・。私は、気休めにしかならないとわかっていながらも手で秘部を隠した。
「ほんと、その顔そそるわー」
微笑し呟く上出くんは、再び私の胸元に両手を添え掬うように包み込み揉みしだいた。柔々と優しく揉みながら長くしなやかな指に硬く尖った先端をぴんっと弾かれ、咄嗟に声と共に下腹部に力が入る。
「そろそろ我慢できなくなってきたんじゃない?」
ニヤリと厭らしい笑みを浮かべると彼の片手は胸から離れ、私の柔らかな腹部へと滑りながら移動し薄く生え揃った恥毛を優しく撫で上げた。
「ん・・・はっ、やンッ・・・見ない・・・で」
気付けば上出くんは私の両脚を広げ秘部が丸見えになる位置に座っていた。昂奮している様子で軽く荒い息を吐きながら上出くんは、自身の中指を私の咥内に入れ唾液を絡めるように動かした。恍惚な表情で行う彼の姿は、厭らしい色香を放ち思わず見惚れてしまう程だった。
「ぐちゃぐちゃになってるな。これなら指濡らさなくても良かったかもな」
「ひゃッ!・・・んー、あンッ、お、音・・・やらー・・・」
手前にある小さいながらも過敏な部分を親指で捏ね、もう片方の手の中指は濡れ光る割れ目に沿って滑らせ膣口の浅い部分を優しくなぞり上げた。膣口から溢れる粘着液を指に絡め蠢くたびくちゅ、くちゅと淫靡な音を轟かせる。あまりの強い刺激と膣内に埋め込んでくれない指のもどかしさに私は意識が散漫し甘く悶える声を空間に響かせた。
静かな無空間には男女の荒い息遣いとむせるような体液の香りが次第に色濃く漂い始めた。私は止めて欲しい反面、夢とは言え想いを寄せている彼から与えられる熱情を嬉しく受け入れる身体、そのアンバランスさから自分でもわけがわからなくなっていた。
「こんだけ濡れてるなら大丈夫か」
いつの間にか下肢から聞き慣れない小さな振動音が響き出し、私はそれを見た瞬間、自分の目を疑った。
「やっ!な、な、なんで、どっからそんなモノがッ!?ひィッッ!!」
ピンク色の小さく可愛らしい形状の凶器は下肢でブルブルと震え、それをそっと小さな芽に軽くあてがわれた。その瞬間、先ほどとはまた違った強い刺激が身体中を駆け巡り思わず声と腰が上擦ってしまった。
「なんかさー、ローターとかあったらいいなーなんて思ってたらいつの間にか手元にあったんだよねー。さっきのベッドみたいなもんだな。あ、痛かったら言ってね。にしても、夢だから願望が叶うんだろうけど目覚めたくないなー。このままここに居たいと思っちゃうなー」
少し不平な表情を見せる上出くんに涕目で睨むもその表情は彼を余計煽らせる形となり私は大いに後悔した。
「なにー?もっと遊んで欲しそうな表情だなー♪いいよー♪いっぱい遊んであげるな♡」
☆☆☆
「あッ、あぁー、んッ、ひッんッ、はッ、はっ」
あれからどのくらい経ったのか全く分からない。何せ、ベッド一つあるだけで時計もないのだからこの場所に滞在している時間さえも全くわからない。
「あーあー、シーツがお漏らししたみたいにびっちゃびちゃになって。顔も涙と涎で酷いことになってるぞ」
不敵な笑みを浮かべた上出くんは、快楽の疲労でへとへとになる私を眺めながら今も尚、手を休めることなく先程のローターで膣内を愉しそうに攻め立てていた。
何度も何度もイカされ続けた身体は自分でも制御出来ずひたすら上出くんから与えられる刺激を受け入れるしかなかった。
「これ現実世界でもやりたいなー。現実世界でローター突っ込まれてんのに平然とした表情で仕事してるお前の姿見たらきっと俺、仕事にならないだろうな。なあ、これ夢から覚めてもやってくんない?」
「な、無理に決まっ、んッッ、ひぐッ、はうっ」
(大体、貴方は私が創り上げたモドキなんだから本物の上出くんがそんなことするわけないでしょ!!)
脳内では盛大にツッコミを入れるも現実に出るのは私の嬌声のみで、言葉にならない言葉ばかりだった。
やっとローターから解放された私は、度々襲う痙攣と疲労で身動きが取れず放心状態になっていた。
「そろそろ俺もー」
上出くんは、スウェットのパンツと一緒に穿いていたトランクスをずり下げると既に隆々しく硬い陰茎が腹部につくほど屹立した状態で現れた。あまりの迫力に疲れが吹っ飛ぶと共に夢であっても“あんな規格外・・・無理っ!!”と危険信号を脳内で発していた。
「ちょ、ちょっと待ってください。・・・む、無理です。そんなの・・・」
「大丈夫だって。ちょっと他よりおっきいかもしんねーけど死にはしないから。大体、赤ちゃんはこっから産まれてくるんだぞ?それに比べたら俺のなんてちっさい、ちっさい♪」
私は、少し身体を起こしゆっくりと彼から離れようとした刹那、逃すまいと上出くんに両脚を引っ張られ元の位置に戻されてしまった。大きく両脚を開かされると秘部がむき出しになり、割れ目あたりに上出くんの凶暴な陰茎が宛がわれる。上出くんは、自身を擦りつけるように軽く腰を動かすと気持ちよさげな表情を浮かべた。このまま腰を突き出せば簡単に挿入ってしまう距離に疼きが込み上げ思わず身を捩った。
「はっ、ん・・・大体、はっ、んっ・・・お前が悪いんだからな。なかなか想い出さないから・・・こんなことまでしてもお前は・・・」
「何を言って・・・ひゃッんッ!あっ、拡がっちゃ・・・あゥッ、んッ・・・ううッ」
一瞬、私を見つめる瞳が哀し気に映りその言葉の意味を問おうと気を抜いた瞬間、陰核と膣口へ上下に擦りつける律動をしていた彼の陰茎がぐぐっと膣内へと強引に押し進めてきた。
夢なのに脳天を突き刺されるような痛みとゾクゾクとした感覚が神経を逆なで、私は咄嗟に強く目を瞑り歯を食い縛りながら何かを逃すようにシーツを握り締めた。
「はッ・・・あッ、あッ・・・んッあんっ・・・うッ・・・」
「大丈夫か?もう少し奥、挿れるから痛かったら言って」
(い、痛い・・・けど・・・言葉が・・・出せない・・・よ)
過呼吸になりそうな程の息遣いの私を優しい口調で宥める上出くん自身も少し苦しそうな表情で私の額に口づけした。彼の汗ばんだ皮膚が私の胸元に密着し、上出くんが動くたびに先端が擦られ更なる悦楽で頭がおかしくなりそうだった。
身体が引き裂かれそうな程の圧迫感と質量を与えられ、初めこそ痛みがあったが、私の膣壁は次第に彼の陰茎をピッタリと咥え込み離すまいと言わんばかりに無意識に締め上げた。
「ううッ・・・いきなり、そん、くッ・・・締めんな、よ」
荒くなった呼吸で苦しそうな表情で見下ろす上出くんが可愛くて愛おしくて・・・私は力ない腕をやっとの思いで伸ばし彼の頬に手を添えた。
「夢だけど・・・覚めてしまったらなかったことになっちゃうけど・・・上出くんに触れれたこと忘れない」
「ちなッ!」
「んッ・・・んちゅッ、んぁッ・・・ふンッ」
昂奮しているのか上出くんに激しく咥内をどろどろに犯されながらパンッパンッとリズムよく腰を打ち付けられる。その度に膣内から粘着した水音が響き、臀部へと流れシーツに落ちた。その滑りの良い動きにかなり濡れているのもわかったしこの状況に恥ずかし気持ちもあったが、それよりも上出くんが自分に欲情し今にも吐き出してしまいたいのを堪えてくれる姿が嬉しかった。
「はっ、は・・・っく、うッ・・・んん、もう、そろそろ・・・」
「う、ん・・・き、て・・・膣内に・・・上出くんのいっぱい・・・射精して」
その言葉を私が吐いたと同時に、先ほどよりも激しく腰を打ち付け、身体を揺さぶられた。上出くんの動きと比例するように彼から流れる汗が私の胸や腹に落ちるたび、私は恍惚な表情で彼を見つめた。
膣内奥へと穿つ凶暴な杭に膣壁を何度も擦られぞわぞわとした昂奮が下腹部辺りから込み上げてくる。
「あぁンッ・・・わた・・・しも・・・ま、た・・・イっちゃ・・・んんッッ」
「俺・・・もう、はッ、くッ、ちな・・・キモチ・・・いい・・・」
互いの身体を深く密着し揺さぶられながら上出くんの艶のある呻きが耳元を刺激する。既にイったばかりの私の身体は、頭が真っ白で思考は追いつかず何度もビクビクと痙攣を起こし、なかなか鎮まる気配はなかった。
「んっ、はぁッ・・・スゲー、膣内ビクビクして・・・持ってかれそ・・・はっ、んっ、ヤバ・・・射精・・・る・・・イ、ク・・・ううッ」
びゅるるるる・・・熱く滾った白濁が私の最奥へと吐き出され全てを絞り出すと上出くんは倒れるように私に覆い被さり荒い息を吐きながらしばらく抱き合ったままの体勢になっていた。
「んっ、はあ・・・スゲー射精まくったかも」
少しずつ呼吸の乱れが落ち着くと上出くんは上体を起こした。彼の言葉通り、膣内から陰茎をゆっくり抜き取ると一緒に大量の白濁がこぷりと膣口から溢れそのまま臀部に伝いシーツを濡らした。
(こんな激しいの・・・初めて・・・って夢か。にしても私、ヤバいくらい欲求不満かよっ!!・・・・いくら夢とはいえ上出くんとこんなことシちゃって)
私は自分にツッコミを入れながらも疲労困憊の状況下、ゆっくりと瞼が重く圧し掛かって来る。少しずつ落ちる瞼の隙間から見えた上出くんは、いつもと同じ優し笑みを浮かべるも何処かしら哀しそうな表情にも見えた。彼は、私の髪を撫でながら額にキスを落とした。
「な・・・んで・・・」
私はその答えを聞きたくても瞼が重く覆い全てが闇に包まれるとそこで意識が事切れた。だから彼が残した最後の言葉は私には届くことはなかった。
「おやすみ・・・早く、想い出してよ・・・ちな」
この淫靡でおかしな夢の世界がこのまま続けばいいのに・・・なんて想いながら私はほんのり温かい感触に頬を緩めた。
――――――――――
「いっ!たーーーーっっい!!!!」
どしんっ!と大きな音と共に自分の身体を叩き付けるように転げ落ち、思いっきり腰を打った激痛に思わず悶絶した。その振動のせいで運悪く目覚まし音を鳴り響かせたスマートフォンが私の頭に落ち、更なる痛みに声も出なかった。
体感する痛み付きの目覚ましのおかげで一気に目が覚めた私は、辺りを見渡すと上出くんの姿はなく見慣れたワンルームが広がる。間近にあるローテーブルには、昨夜呑んでいた空のチューハイの缶と食べ残したツマミが散乱していた。
「やっぱり夢・・・か。・・・まあ、そりゃあそうだよね。あんなのありえないもんね」
自分の身体の変化を見ても、勿論彼から付けられていた痛みも痕もなく綺麗なものだった。ただ、あんな淫靡な夢のせいか下着が気持ち悪くなっているのは必然で、私はすぐさま新しいショーツに穿き替えようと重い身体を何とか振り絞り腰を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
「リアル過ぎて引くくらいの夢だったな・・・ってか、それよりも夢とは言え上出くんとあんなことを」
全くといっていいほど昨日の疲れは取れておらず、より疲労感で一杯の私は、自分の欲求不満さに情けなくなった。一先ず、夢は置いといて気持ちを切り替えようと洗面所へと向かおうとした刹那、足元にあった何かを踏んずけ思わず痛みで顔を歪めた。
「痛っー、もーう!次から次へとーーッッ・・・って、これ」
手の親指の爪程の大きさの石を拾い思い出したかのようにまじまじと眺めた。昨日の帰宅途中、アクセサリーの路上販売を目にした私は、普段なら惹かれることがないのに何故か吸い寄せられるようにその露店へ足を運んでいた。
そこは、多種多様な手作り雑貨が並べられ、何点か自分好みの商品も置かれていた。その時、若い女性店主が私に近づきこの小さな石を手渡してきた。
『お姉さん、特別にこのパワーストーンあげる♪正直、お姉さんちょっと不幸体質っぽく見えるからこれを肌身離さず持ってて♪良いことあるから』
ちょっと失礼な言葉と一緒に手渡された乳白色がかったブルーグリーンの原石を貰ったものの私は特に気にすることなくローテーブルに置き呑み始めた・・・までは覚えている。あとは、酔っ払っていたから記憶が飛びあの夢の世界へと飛ぶことになったんだけど・・・。
「この石のおかげで上出くんの夢が見れた・・・とか?にしてもこれなんて名前の石なんだろ?綺麗だなー。アブノーマルだったけどちょっと幸せな気分になれたし」
私は石をテーブルに置き、気持ちを切り替えるように頬を軽く一叩きすると出勤準備を始めることにした。
☆☆☆
(あれ?さっきのパワーストーン、いつの間に鞄の中に?バタバタ準備してたからテーブルから落ちて鞄に落ちちゃったのかな?)
自身のデスクに着き、鞄を開けると先程の原石が入ってるのに気づいた。私はそれを鞄から取り出し何気にスカートのポケットにしまい込んだ。
「仙徳さん、おはよう。出社した直後に申し訳ないんだけど、この段ボール保管庫に持って行ってもらえないかなー。実は私、早朝ミーティング入ってるのすっかり忘れてて返しに行くタイミングなくて」
しまった瞬間、背後から申し訳なさそうな表情の女性同僚に声を掛けられた私は、了承すると段ボールがある場所へと連れて行かれた。
「ファイリングされたやつ結構入っててちょっと重いんだけど、ほんとごめんね」
「大丈夫ですよ。私、身体は小さいけど力はあるので」
(・・・って、重っ!)
長机に置いてあった段ボールを持ち上げると思ってた以上の重量に一瞬、腰に軽く衝撃が走った。朝ベッドから落ちたのが影響していたため、普段なら何とか持てる重さが今の私には少し・・・いやかなりキツかった。
「・・・大丈夫?本当は他の男性社員とかに頼もうと思ってたんだけど今日に限って直行組ばっかで」
「大丈夫です。それより時間大丈夫ですか?」
私が軽く窘めると腕時計を確認した先輩は、謝りながら慌てて部屋を出て行った。
「とりあえず、運んじゃうか・・・って小さな段ボールだから油断しちゃったよ。台車でも借りた方が良かったかなー」
ふんぬっ!と私は腰を気にしながら言われていた保管庫へとよたよたとした足取りで向かうことにした。
(なんか、身体もしんどいからそんなにない距離でもちょっとツラいな・・・)
私は唇を一文字に引き締めゆっくり一歩一歩踏みしめながら歩いているとふいに横から持っていた段ボールを攫うように奪われ腕と腰が一気に楽になった。
「仙徳さん、おはよ。エレベーターから降りたら丁度目の前で小動物がプルプルしてるみたいな後ろ姿見えたから。結構重いのに腰とか大丈夫だった?」
「か、上出くんっ!?・・・お、おはよ、ござい・・・ます。だ、大丈夫です、私こう見えて力はあるんで。なので、段ボールを・・・」
「これって保管庫に持ってくんだよね?俺もそっちに欲しいファイルあるからついでに手伝うよ」
いつもの上出くんの口調と表情に安堵するも、昨夜の乱れた彼の表情が重なり赤くなった顔を隠すように視線を俯かせた。
「本当に大丈夫ですから、お気になさらず」
「そしたらー」
私が何度も渋るように遠慮していると上出くんは、持ち上げていた段ボールを一度床に置き蓋を開け数冊分のファイルを取り出し私に手渡した。
「これならいいでしょ?俺も軽くなるし仙徳さんも気遣わずに済むし」
少し悪戯っ子のような可愛らしい笑顔を向けられ、私の心拍数が更に上昇したのが手に取るように分かった。
(やっぱ、こっちの方がいいかも。あんな暴君ドSみたいにさせてしまったのが本当に申し訳ない)
心の中で何度も上出くんに土下座する妄想をしながら残り数メートルで目的地に到着してしまうため幸せを噛み締め歩いているとふいにスカートのポケットに入れてあるパワーストーンが腿にあたった。
(ってか、これももしかしたら石の力なのかな)
昨夜の夢といい、現実でも本物の上出くんとの時間を共有出来、心の中で私は一生この石を持ち続けようと決めた。
「今日は眼鏡してないんだね。今日はコンタクト?仙徳さん目パッチリだし無い方が似合ってるよ。それにその方が可愛い表情が見えるし俺としては嬉しいかな♪・・・って、これってセクハラになっちゃうかな!?」
「い、いえっ!大丈夫ですっ。・・・ありがとうございます。今日、朝バタバタしてたら忘れてきちゃったみたいで。コンタクトはしてないんですけど、視力的には生活に不便はないので大丈夫です」
焦ったように自分の発言に狼狽える上出くんを宥めながらお世辞とは言え、可愛いと言ってくれた言葉が胸をじんわりと熱くした。
元来、視力が良い私は、少々対人恐怖症の気がありなるべく目を見て話さなくていいように目元まで前髪を伸ばし眼鏡で隠していた。が、今朝はバタバタしながら出勤したため掛け忘れてしまっていた。
(そういえば、夢の上出くんにもそんなようなこと言ってたな)
ふとそんなことを想いながら夢の上出くんモドキと本物の上出くんが少しシンクロしてしまうもそれを振り払うように私は頭を左右に振った。私の謎の動きに少し怪訝な表情を向ける上出くんの視線は全く気付かなかった。
距離にしては短いものの、今までこんな話したことがないという程彼との会話を楽しんだ。正直、緊張のあまり何を話していたか部分部分覚えてないが・・・。
そうこうしている間に気付けば保管庫のドアまで近づいていた。二人で中へ入り、私は頼まれたファイルを元の場所に片付け、その間上出くんは仕事に必要なのか、ファイルが並んだ棚を探すように見つめていた。
「ありがとうございました。上出くんのおかげで助かりました」
「いえいえ、どういたしまして。こんな重い物持ってたら腰にくるから気を付けなきゃ。またこんなことあったら遠慮なく俺に言ってくれればいいからね」
「ありがとうございます。ホントですね・・・実は今日、腰を痛めていたので正直辛かったんです」
「・・・そっか、それは大変だったね」
「じゃあ、私は先に戻ります。ありがとうございました」
ベッドから転げ落ちたとは言えず、濁しながら話した内容に一瞬眉をピクっと上げた上出くんに私は気づくことなく軽く頭を下げその場を後にした。
(あーッ!緊張したよー!上出くんモドキとは普通に話せたけど本物とはそういうわけにもいかないし。はぁー♪今日は幸せな気分で過ごせそうー♪)
私は上出くんの心うちなど知る訳もなく軽い足取りで自身の席へと向かうのであった。
※※※
保管庫でちなと別れた天音は、既にいなくなった彼女の後ろ姿を想い出し口元を掌で覆うと小さく溜息をついた。
(まあ、かなり負担は掛けたからな。それが現実にも影響したのか?)
まさか、ベッドから落ちたことで腰を痛めたことを知らない天音は少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。
保管庫にそもそも用事のない天音だが言った手前、手ぶらでデスクに行けず適当なファイルを持ち出すと自身の部署がある階へと向かった。
「上出さん、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
昨夜のことを考えながら部署へと向かっていると前から後輩の男性社員に声を掛けられた。
「珍しいっスね。いつもならもうデスクにいる時間なのに。もしかして、昨日告白してきた受付の子と・・・・・・。あーあ、俺も上出さんくらいのスペックがあればなー。きっと人生楽しいだろうなー」
矢継ぎ早に大きな声でベラベラと喋る後輩に困りながら周囲の人に聞かれていないか一瞥し、再び後輩に視線を戻した。
「はは、違う、違う、大きな声で勝手な想像しないの。ちょっと保管庫に用があってそっち寄ってから来たんだ。あと、受付の子は丁重にお断りしたから佐山くんが思っているようなことは残念ながらなく、一人寂しく宅呑みしてました」
えー勿体ないーと言わんばかりの表情を向けられた天音は、困った笑顔を向け自身のスラックスのポケットに入っていたモノを取り出した。
「・・・まあ、確かにいつもより家から出るのは遅かったかな。昨夜の夢見が良くて起きたくなかったのか、目覚ましに気づかなくてね」
「えー、どんな夢だったんですか?上出さんがそこまでなるような夢、めちゃめちゃ気になります」
「ん?それは秘密だよ♪でも、いずれ現実になればいいなとは思えるような夢」
「大口の商談が上手くいった夢・・・とかかなー」
「まあ、確かにある意味、大口な案件かな」
(言うわけないだろ、あんな愉しい夢)
含み笑いをする天音に、隣を歩く後輩はよくわからないという表情を向けながらその後も追及されるも、天音は話しを逸らしながら夢の話をすることは無かった。
天音は、部署に入るとたいして用のないファイルを自身のデスクに置きデスクチェアに腰を降ろした。パソコンの電源を入れ起動している間、ポケットから先ほどのモノを取り出した。掌に乗せた乳白色がかったブルーグリーンの原石を眺めながら不敵な笑みを浮かべた。
「上出さーん、おはようございまーす♡珈琲お持ちしましたぁ♡あ、それパワーストーンですかぁ?可愛いー♡」
不意に背後から甘ったるく不愉快な臭いを振り撒きながら女性社員が珈琲カップを手にし天音の傍に近づき渡してきた。一瞬、眉間に皺が寄るもすぐさまいつもの表情に戻した天音は、笑顔で挨拶と礼を伝えた。
「うん、そう。俺にとってとっても大事な物なんだ。これのおかげで願いが一つ叶ったからね」
天音は、無意識に腰を擦りながらパソコン画面を睨みながらキーを打つ彼女の姿を遠目から見つめ愛おしそうに目を細めると石を握り締め不敵に微笑んだ。
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