竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

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四龍の可能性がでてきた。
ルメアは腰に手を当てて、頭をひねらせた。

もし四龍であれば、きっと黒龍だ。


黒龍はずっと地上の管理、という仕事を担っている。
だから、もしここにいるのであれば黒龍だ。


「もしや、黒龍か!?」


人外れでも別にいい。
ルメアは確認のために声を上げて、男に問いかけた。

「っ……ルメア……!」
横にいた南波斗が、ルメアの手をぎゅっ、と握って見つめてくる。


「どこにも行かない」


何を言いたいのか分かったルメアは、南波斗の手を握り返して微笑んだ。
その言葉に安心したのか、南波斗の表情は少し落ち着く。




「ルメア様っ!!」




——やはり、黒龍だな……

あの声。
やっとアイツの声がしっかりと聞こえて、ルメアは確信する。

「クロ! どうしてここが分かった!」

黒龍と白龍のことは、「クロ」と「シロ」と呼んでいる。



「何となく、ルメア様の気配がしたもんですから!!」


——なんだ、それ……

どこに行っても、黒龍は変わらない。
その変わらない黒龍に、ルメアは安心した。
慣れない場所で知り合いが誰一人としていなかったルメアにとっては嬉しいことだった。

「お前らしいな!」

声を張らないと届かない距離だ。

ルメアが黒龍の所に行ってもいいのだが、さっきから南波斗がルメアの手を掴んで離してくれない。
だから、動くことが出来なかった。


「天空に帰りましょう!」


黒龍はその目的で地上に降りてきたんだ。
ルメアが黒龍と確信した時から、予想はしていた。
「……」
その話題に、ルメアはすぐに答えを出すことが出来なかった。
横にいる南波斗を置いて、天空に戻るのは、なぜか嫌だった。

このまま南波斗を連れて、天空に行ければ一番いいのだ。


だがそれは出来ない。


天空に人間は入れない。

たとえ天空に行っても、すぐに死んでしまう。
地上と天空の空気が違いすぎて、人間にとって身体の負担が大きすぎる。

「…………心配はないよ、南波斗」
ずっとルメアの手を握っている南波斗に、ルメアは優しく笑いかけ、頭を撫でた。


「悪いが、まだ帰れない。お前だけ先に戻れ」




これが、ルメアの出した答えだった。


南波斗を一人置いて、天空に帰れない。

——ただそれだけの理由だ……


「ルメア様…………」


「ケルラに伝えてくれ。自分で帰り方を探す。だから、捜索するのはやめろ、と」

いつものように、仕事を任せる時のように、ルメアは話す。

その声のトーンは、落ち着いていた。

が、それに加え『威圧感』があった。



「いいな?」



鋭い声で、黒龍に伝言を伝える。

「……はっ……」

身体を九十度に曲げた黒龍は、その場で本来の姿に戻った。


——逞しいほどの巨体。

——黒い、大きな翼。


黒龍は身震いをして、ルメアに一礼して飛び去った。


✩.*˚✩.*˚✩.*˚


黒龍が立ち去っても、南波斗はルメアの手を離さなかった。
「南波斗……。もういなくなったぞ?」

「…………帰るのか……?」

いつもの倍小さい声で、南波斗はルメアに問いかける。
その質問に、ルメアは少し吹き出した。


「まだ帰らぬさ」


そう。

まだ、帰らない。


「ほんと…………に?」
「ああ。ホントだよ」

ルメアは強く、南波斗が安心できるように言う。
その言葉を信じることにした南波斗は、ルメアの顔を見て、笑った。


何かをぐっ、と堪えるような笑顔だった。


ルメアはあえて、南波斗を顔を見ずに笑い返す。
彼の顔を見てしまえば、何を考えているのか分かってしまいそうだから。


「……戻ろうか。雨が降ってきそうだ」


落ち着いた声で、ルメアは話しかける。
すると、南波斗も「そうだな」と言って、ルメアの手を引いて歩いた。


——南波斗を置いては、帰れない……かな……


 ここまで世話になった相手だ。
そう簡単に、縁は切れない。




















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