竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

文字の大きさ
32 / 90

31

しおりを挟む
「……好きだよ、ルメア」


耳元でルメアがビクン、と飛び跳ねる低音ボイスで「好き」と伝える。

「っ……も、いい…………っ、離せ、南波斗……」


「……あー……本当に、好き…………」


ぎゅーっ、とルメアの身体を強く抱き締める南波斗。
そしてため息混じりに、呟く。
「……ありがと、ルメア」
南波斗は、ルメアの身体を離してニッコリと微笑む。


「俺、今すごい幸せ」


南波斗の周りから、幸せオーラと花が飛び交っている気がする。

そこまで喜んでくれると、ルメアも嬉しくなる。

——人を好きになると、こんな気持ちになるのか……


ルメアは今まで、異性を好きになることがなかった。
そもそも『好き』と言う感情が分からなかった。


そして、南波斗と出会って、彼に『好き』と言われて。


——不思議なものだな……



今、こうやって自分の気持ちを理解したら簡単なものだった。


好きと分かれば、こうやってストレートに想いを伝えてくれるのは、ありがたい。


少し照れくさいが、嬉しいに越したことはない。


南波斗の顔を見れば分かる。


好きな人が、こんなにも幸せそうな顔をするのなら言ってよかった、と心の底から思える。


「俺も、幸せだよ……?」



正面を向かって告げると、すごく恥ずかしくなってくる。

でも、南波斗が喜んでくれるのであれば、これからはいくらでも伝えてやろうと思う。




いつの日にも、思ったように。



✩.*˚✩.*˚✩.*˚


「ルメア! こっち、こっち!」

南波斗が、後ろを歩いているルメアを呼び寄せる。
「体力バカが……っ!」

ルメアは着実に、竜王としての力を取り戻してはいる。
でも、まだまだ完璧ではない。

「ま、待ってくれ!」

腹の底から声を出す。

すると、何メートルも先にいた南波斗が足を止めて振り返った。


「そこで、少し待ってろ」


指を差して、南波斗に命令する。
南波斗は言われた通り、そこで立ち止まった。
「分かった!」


「竜王の俺を置いて先に行くとは……いい度胸だ!」


ここで、竜王の力を指し示す時だ。
そう思い、ルメアはその場で左腕を天に掲げた。


「竜王の力、今ここで見せてやる」


南波斗はその言葉に、腕を組んで待つことにした。
どんな技を使って、自分の元に来るのか、楽しみで仕方なかった。


「…………——」


ルメアは目を閉じて、呪文を唱える。



「——天満つる場所、我の声に反応せよ。さすれば道は開からん……」



天に突き出したルメアのてのひらから、薄いピンク色の光が灯し出す。

ルメアの足元には、魔法陣が凄まじいスピードで描かれていく。

そして、その魔法陣が描かれ終わると、ルメアは天に掲げた腕を下ろして、横に腕を振った。



「……術式〈瞬間持続移動サドネラ・スレード〉」



ゆっくりと目を開け、術の名前を口にする。
すると、ルメアの身体が、淡い光で包まれる。

パァンッ、と光が弾け飛んだ。


その光の強さに、遠くにいた南波斗にまで目の影響が出る。

「っく…………」

反射的に目を瞑る南波斗。


「……あれ?」


南波斗がゆっくりと目を開けると、そこにルメアの姿はなかった。

「……あ、もう術が発動したのか」

早すぎる、と南波斗は心の中でツッコむ。
術の名前を口にしても、五秒ほど経たないと完全には発動しない。

そのスピードは、鍛錬を組めば早くなるが、それ相応の努力が必要だ。

キョロキョロ南波斗は、ルメアの姿を探す。


「ルメアー?」


「こっちだよ、南波斗」

南波斗の背後から、ルメアの声が聞こえる。
振り向くと、すぐ後ろにルメアが立っていた。

「早いだろ?」
自慢げにルメアが、腰に手を当てて言う。
「うん、早い」

クスクス、と笑い合って、南波斗とルメアはまた歩き出す。

今から向かう場所は、南波斗の仕事場。




——ルメアと南波斗が初めて会った、あの森。








 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...