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33 side南波斗
しおりを挟むルメアのキスで充電が完了した南波斗は、山の上に向かっていた。
山の中腹から、よく魔物が出現すると聞いていたが。
「出てこねぇじゃねぇかよ」
歩いても歩いても、魔物には遭遇しない。
体力だけが、どんどん削られていくだけだ。
「あの情報は、間違いだったのか……?」
チッ、と舌打ちをする。
南波斗は一度足を止めた。
そしてどうしようか、と悩み出す。
——このまま進むか、Uターンして戻るか……
先に進んでもいいのだが、今と同じように何も出てこなかったら、ただの『登山』になってしまう。
なんの為にここに来たのか、本来の目的を失ってしまっては、意味がない。
そろそろ仕事としてのランクアップもしていきたいし。
うーん、と悩んでいると、南波斗の右側からガサガサ、と音がした。
「……?」
音に気付いた南波斗は、静かに腰に添えた剣に手を伸ばす。
「…………」
息を殺し、体制を変える。
深く腰を落として、少しだけ剣を抜く。
「……」
音が近付いてくる。
南波斗は、自分の気配を殺して、その音の正体が見えるまで耐えた。
「…………っ」
ガサッと一段と大きな音がした瞬間——。
「やはり魔物か!!」
飛び出してきたのは、小さい規模で群れを成す『兎』だった。
見た目はかわいいのだが、その可愛さを武器にして敵を襲う奴らだ。
魔物に関して、ある程度知識がないと、すぐに殺られてしまう。
南波斗は素早く剣を抜いて、横一線に剣をふった。
「はぁああっ!」
剣の残像が見えるほど早く振る。
兎は南波斗の行動を先読みしたのか、ピョンッと高く跳躍した。
今日、南波斗が遭遇したのは、三、四匹の群れだ。
まだ数は少ない。
でも、例え群れで行動していても一匹くらいは、群れと違う行動をするはずだ。
けれど、この群れは違う。
——全てが、揃っている……っ!?
動きも、考え方も、全てが同じ。
一匹が跳躍すると他の三匹も同じように跳躍する。
厄介な敵に遭遇した。
「っ……!」
チャキッ、と剣を持ち直して南波斗はもう一度切りかかる。
息を飲んで、南波斗はまた横に剣を振るう。
「剣技〈#紅蓮襲撃__ぐれんしゅうげき
__#〉」
南波斗の持つ剣が、赤みを帯びていく。
そして、ボウっと紅い焔が剣を纏った。
その焔に恐れたのか、兎たちが一歩後ろに下がる。
南波斗は兎の行動を、見逃さなかった。
「おるぁあああああっ!!!!」
南波斗は地面を強く踏んで、兎が飛んだ位置よりも高く空に舞う。
剣を頭上に持ってきて、空中で一回転する。
回転により、さらにスピードが付いた南波斗は、凄まじい勢いで降下した。
南波斗の姿を見た兎たちは、一箇所に身を寄せ合った。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
「…………ひとまず、これで終わりにするか」
抜いた剣を鞘に収めた南波斗は、腰に手を当てて息を吐いた。
かれこれ魔物を探して、三十分弱。
あの兎を一気に倒してから、なぜか溢れるほど魔物が、南波斗を囲んだ。
一度倒してしまえば、後は簡単だった。
コツを掴めば、南波斗の物だった。
「……そういや、ルメアは?」
今まで放ったらかしにしてきたルメアは、今どこにいるんだろう。
ここには来ていないのが分かる。
ルメアの気配は独特だから、少し集中すれば見つけることが出来る。
「山を降りたら、いるかな?」
別れた場所に戻れば、もしかしたら待っているかもしれない。
そう思って、南波斗は下山をした。
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