竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

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もう本当にギリギリ。

ケルラの精神も、嫉妬も、怒りも、全部が限界に近かった。


天空城で待っているのはいいが、やることが何もないことに気付いたケルラは、下僕たちとお喋りすることにしたのであった。

互いの愚痴を言い合ったりした。


そして、何だかんだ言っておきながら、天空城で待つこと約一時間前後。


「……まだ?」


『もう暫く、お待ち下さい』


下僕2がケルラに呼びかける。
はぁ、とため息を吐いたケルラは、自分の膝を抱えて、顔を伏せた。

——寂しいなぁ…………


父が亡くなってからも、ケルラとルメアはずっと一緒にいた。
ルメアが『竜王』の座に着いた後も、彼の側近として仕事をさせて貰えるように頼み込んだ。

——……一人は寂しいよ、ルメア……

仕事をしていても、それが終わったら必ずケルラの所に来てくれたルメア。

弟の自分を一番に想ってくれていた、大好きな兄。

カッコよくて、父上にそっくりで、頼もしくて、信頼されてて。


自分とは全く違う性格に、ケルラは憧れすら抱いていた。

ルメアのように強くなりたかった。

四龍にも、選ばれたかった。

「……はぁ……」
けれどもう遅い。

何もかもが、手遅れなのだ。



気付いてしまったこの感情も、全部。



「…………ダメな弟だな……僕は……」


ポツリと零した声は、天空に吹く強風でかき消される。

胸の、奥底で、キツくふたをした感情。


ルメアと二人きりになると、嫌でもその蓋が開かれそうで、怖い。


ただ彼と一緒にいたい。

傍にいたい。

彼の『一番』であって欲しい。



こんなみにくくて、ドロドロした感情は、持ちたくなかった。




——……『好き』、なんて……



✩.*˚✩.*˚✩.*˚


生まれた時から一緒にいたルメアは、幼い頃からカッコよかった。

弱かったケルラをいつも守ってくれたし、将来『竜王』になるために、いつも努力していた。
そんなルメアを、いつも見ていたから。


——いつ頃、気付いたんだっけ……


確かに芽生えた、この気持ち。

けれどその感情も、最近だった気がする。

きっかけなんて覚えていない。
昔も今も、ルメアが大好きだった。

けれど、その『好き』の気持ちが、ある時から、急にルメアとはズレていると感じ始めたのだ。


その違和感が、まぁ……きっかけと言ってもいい。


だから自分の中で新しく出てきた感情を、整理しようとしたのだ。


一度芽生えてしまったら、もう消すことは不可能に近い。


自分の頭の中でも理解が出来たら、その後はもう簡単だった。



一瞬で『恋愛感情』の『好き』と分かる。


——弟……失格だ。


何を血迷って、実の兄を恋愛対象と見てしまったのか。

自分でも、分からなかった。


だからその気持ちに、蓋をした。


——もう出てこないように。

気付かれたら、絶対嫌われる。
距離を取られてしまう。

——もう……考えないように……。


そうだ。
考えなければいいんだ。

ルメアを意識しなければ、この気持ちも、いつか自然と消えていくだろう。


そう思って、心の奥底に押し込んで、封印したのに。


こうしてルメアと長時間離れていると、あの気持ちが、蓋をこじ開けて、出てきそうだ。


——怖い、よ……。僕自身が、怖い……。


こんなの、本当の兄弟の絆じゃない。
怖い。

この気持ちに支配されたら、きっとルメアを傷つける。


『嫌われたくない』。


『好きって、言いたい』。


——矛盾しまくっている。
色んな考えが、ケルラの胸の中を支配する。


もう嫌だ。


「……助けて…………」


どうしたらいい?

もう自分でも、取り返しのつかない所まで、来てしまっている。


自分で自分を追い詰めるように。


自分で首を締めているような状況だ。



どうして気付いてしまったのだろう。
どうして好きになっちゃったんだろう。
どうして双子の弟なんだろう。


赤の他人なら、もしかしたら……。


この『好き』を受け入れてくれたかも知れない。


もう全部が嫌になってくる。


——僕も嫌い。


兄に欲情してしまう自分が、一番嫌い。

「醜い……」

どうしてこうなってしまったんだろう。


深く考えれば考えるほど、自分が嫌いになってくるし、苦しくなる。


——溺れていく。


光に手を伸ばしても、またドロドロした感情に引きづり込まれる。



苦しい。



もう……分からなくなっちゃった……。










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