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49(ルメア視点に戻ります)
しおりを挟む女神クリスタが地上に降りて、ルメアたちに『お土産』を置いて、帰って行ってから、約一ヶ月。
「ねー、ルメアー」
南波斗に呼ばれて、ルメアは立ち上がった。
「これ、見て」
「ん?」
「いいでしょ」
「…………どこでこんなもの……」
ルメアの顔が引きつっていく。
彼らの目の前には、一台の大きなベッド。
それが玄関前に置いてある。
いつ置かれたんだ。
昨日はなかった。
「買った」
しれっと南波斗が返事する。
がくんっと思いっきりルメアの肩が下がる。
「買ったって…………いつ?」
「ルメアが寝てる時」
——夜ってこと?
寝る時はいつも隣で寝ているのに。
買いに行った日は、どれだけ爆睡していたんだ、と思うルメア。
「ね。中に運ぶの手伝って」
「……じゃあ、南波斗は今あるベッドを動かしてくれ」
「おっけー」
かなり大きいベッドだが、今のルメアなら一人で持てる。
駆け足で、南波斗はベッドに向かう。
「…………〈無重力状態〉」
頭の中で意識した物体にかかっている重力を、一時的に無効化する術を発動させた南波斗は、軽々とベッドを持ち上げる。
それを見届けたルメアは、玄関前に置いている巨大ベッドを片手で持ち上げる。
——術すらも発動させないで。
「お待たせー、ルメ…………ァ……?」
無重力状態を使っている南波斗は、重いとか全く感じないが、ルメアは何も使っていない。
だから、驚くのも当然だ。
普通の人間が真似したら、ベッドに押し潰され、息の根が止まるだろう。
……絶対に。
「大丈夫……なの? そんな、術なしで……」
「ん? あぁ、大丈夫」
いつもと変わらない様子で、ルメアは返事する。
「そ、そ、そうか…………」
「うん。ほら、場所交代するぞ」
「あ、あぁ……うん」
軽々とベッドを部屋の中に持ち運ぶルメア。
その後ろ姿を、唖然と眺める南波斗。
あっという間に新しい巨大ベッドを、もとあったベッドの場所に置くルメア。
その際、ドスンッという音と共に、煙が巻き起こった。
「うっ……!」
「うわっ……!」
外にいた南波斗の所まで、一気に煙が届いた。
「ルメア!? 大丈夫?」
煙っている家の中に、南波斗は呼びかける。
「…………っ、大丈夫に、見えるのか……」
ゆらぁ……と家の中から姿を見せたルメア。
その姿は、なぜか笑いを誘った。
「……風呂入ってくる…………」
ボソッと言ったが、風呂は家の中にある。
「どこ行くの?」
「……街に行く」
不機嫌極まりないルメアが、真っ直ぐ街を見ながら返事をする。
「分かった。じゃあルメアが行っている間に、掃除しておくから」
「……頼んだ」
頭を軽く下げたルメアは、その場で瞬間移動が出来る術を発動し、街に移動した。
一人になった南波斗は、腕まくりをして「よしっ」と意気込む。
この際だから、家の隅々まで掃除しよう。
——さぁて。ルメアが戻ってきたら、驚かせてやろっと
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
街に着いたルメアは、急いで宿屋に向かう。
結構街の入口から近い場所に、古風な感じの宿屋を見つけた。
「いらっしゃいませ。泊まりですか?」
中に入ると、カウンターにいた受付の女性が、いつもと同じ台詞を言う。
「いや。風呂だけ入りたい」
泊まるわけじゃない。
ただ風呂に入りたいだけなのだ。
「え? お、お風呂……ですか?」
戸惑う女性を放置して、ルメアは話を続ける。
「今すぐ風呂だけ入りたい」
また強めに言うと、女性は降参して「あ、あちらです」と指を差した。
「ありがとう」
目的地が分かったルメアは、走って向かう。
——気持ち悪い……
埃やら何やらを全身に被ったルメアは、早いこと風呂に入って全身を洗いたかった。
——だる…………
心の中で悪態を言いながらも、無事、ルメアは風呂に入ることが出来た。
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