竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

文字の大きさ
61 / 90

60

しおりを挟む

「落ちる? それはないから、大丈夫」

何言ってるんだ、という顔で南波斗を見るルメア。
「そ、そう? 本当に落ちない?」
心配症なのか、何度も問いかける。
「だぁーい丈夫だぁって」

もう一度強く言うと、南波斗は「わ、分かった」と頷いてくれた。
「へぇ……でも、すごいな…………」


人間でも、『浮遊術トランディス』という高度な技を使えば、一定時間は空を飛べる。
けれど、その技を完全に習得するには、専門の場所に行って学ばなければいけない。
自分の力を過度に信じて、手を出せば、必ず自分に災いが降りかかる。


つまり、興味本位に浮遊術トランディスを使うな、ということだ。


「ねぇ。早速見せてよ! ルメアの本来の姿!」

「お、おう……いいぜ」
「やった! じゃあ、外行こ!」
ガタン、と椅子を思いっきり引いて、ルメアの横に立つ。
ガシッとルメアの細い腕を掴んで、強引に立たせ引っ張る。
「ぅ、わ……っ!?」
「おぉっと。大丈夫?」
グラッとルメアの身体が傾くと、すかさず南波斗が身体を支える。
「わ、悪い……」
「俺もごめんね。行こ」

南波斗はニコッと笑って、ルメアの手を握る。

ただ握るだけじゃなくて、お互いの指を器用に絡ませる。

いわゆる、『恋人繋ぎ』になった。


この繋ぎ方を知っているルメアは、勝手に頬が赤くなる。
「照れてる……? 可愛い」
「なっ、照れてない!」
「赤いよー頬っぺた」
もう何を言っても誤魔化せないのか、とルメアは肩の力を抜く。

その瞬間——。


「……?」


——ちゅっ、とルメアの唇に、南波斗の唇が当たった。

あ、キス、か……と思うと同時に、南波斗の舌が唇をなぞる。

「んぅ……!」
ビクッとして、一気に全身の力が抜ける。
「んっ…………ふぁ……あ、ん」
ぐっ、と唇を押し付けられ、自然とルメアの唇が開く。

ぬるっ、と素早く舌が入ってくる。

「ふっん…………、んっ、んぁ……んふ……っ」

くちゅ、と唾液が絡まり、いやらしい音が鳴る。

飲み込めなくなった唾液が、ルメアの口の端から垂れる。
後頭部をもう片方の手で固定され、キスから逃げられなくなる。

「まっ……南波、斗……んっ、く……まって……んぁ」

熱烈なキスを受けながらも、唇が一旦離れる合間に、南波斗を呼ぶ。

ちゅっ、ちゅっ、と軽いキスをした南波斗が、目を細めてルメアを見つめた。
「……っあー、ごめん……可愛くて、つい」

「……お、俺は……可愛くない……」
「可愛いよ。一番可愛い」
「っ、恥ずかしいから、やめろ……」
「えー? 毎日思ってるよ? 俺の彼氏は可愛いなーって」


「か……っ!? かれ……ッ! 彼氏……ッ!!?」


戸惑うことはないのだが。
不意打ちで言われると、当然戸惑う。


「——ルメア、もう一回、ちゃんと聞くから、答えてね」

「っえ……?」
ぎゅっ、と手を繋いでいる方に力を入れた南波斗。

真剣な顔つきになり、南波斗はルメアの頬に手を添える。



「俺はルメアが一番好き。誰よりも大切にするって誓うよ」



目を細めて、宝物に触れるかのように、優しい。



「——俺と、付き合ってくれる?」



ドクッ、とルメアの心臓が大きく高鳴る。
頬が赤くなって、目を逸らしたくなる。


いつかの日に、告白されたように。

あの時は、『恋』が分からなかった。
『好き』という感情が、南波斗と同じなのかも分からなかった。

だから、断言は出来なかった。


でも、今なら確信を持って言える。



「——俺からも、よろしくお願いします」




南波斗が持っている気持ちが分かった。
同じだと思った。

——南波斗が、好き。



「俺も、南波斗が好きだ」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...