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しおりを挟む「落ちる? それはないから、大丈夫」
何言ってるんだ、という顔で南波斗を見るルメア。
「そ、そう? 本当に落ちない?」
心配症なのか、何度も問いかける。
「だぁーい丈夫だぁって」
もう一度強く言うと、南波斗は「わ、分かった」と頷いてくれた。
「へぇ……でも、すごいな…………」
人間でも、『浮遊術』という高度な技を使えば、一定時間は空を飛べる。
けれど、その技を完全に習得するには、専門の場所に行って学ばなければいけない。
自分の力を過度に信じて、手を出せば、必ず自分に災いが降りかかる。
つまり、興味本位に浮遊術を使うな、ということだ。
「ねぇ。早速見せてよ! ルメアの本来の姿!」
「お、おう……いいぜ」
「やった! じゃあ、外行こ!」
ガタン、と椅子を思いっきり引いて、ルメアの横に立つ。
ガシッとルメアの細い腕を掴んで、強引に立たせ引っ張る。
「ぅ、わ……っ!?」
「おぉっと。大丈夫?」
グラッとルメアの身体が傾くと、すかさず南波斗が身体を支える。
「わ、悪い……」
「俺もごめんね。行こ」
南波斗はニコッと笑って、ルメアの手を握る。
ただ握るだけじゃなくて、お互いの指を器用に絡ませる。
いわゆる、『恋人繋ぎ』になった。
この繋ぎ方を知っているルメアは、勝手に頬が赤くなる。
「照れてる……? 可愛い」
「なっ、照れてない!」
「赤いよー頬っぺた」
もう何を言っても誤魔化せないのか、とルメアは肩の力を抜く。
その瞬間——。
「……?」
——ちゅっ、とルメアの唇に、南波斗の唇が当たった。
あ、キス、か……と思うと同時に、南波斗の舌が唇をなぞる。
「んぅ……!」
ビクッとして、一気に全身の力が抜ける。
「んっ…………ふぁ……あ、ん」
ぐっ、と唇を押し付けられ、自然とルメアの唇が開く。
ぬるっ、と素早く舌が入ってくる。
「ふっん…………、んっ、んぁ……んふ……っ」
くちゅ、と唾液が絡まり、いやらしい音が鳴る。
飲み込めなくなった唾液が、ルメアの口の端から垂れる。
後頭部をもう片方の手で固定され、キスから逃げられなくなる。
「まっ……南波、斗……んっ、く……まって……んぁ」
熱烈なキスを受けながらも、唇が一旦離れる合間に、南波斗を呼ぶ。
ちゅっ、ちゅっ、と軽いキスをした南波斗が、目を細めてルメアを見つめた。
「……っあー、ごめん……可愛くて、つい」
「……お、俺は……可愛くない……」
「可愛いよ。一番可愛い」
「っ、恥ずかしいから、やめろ……」
「えー? 毎日思ってるよ? 俺の彼氏は可愛いなーって」
「か……っ!? かれ……ッ! 彼氏……ッ!!?」
戸惑うことはないのだが。
不意打ちで言われると、当然戸惑う。
「——ルメア、もう一回、ちゃんと聞くから、答えてね」
「っえ……?」
ぎゅっ、と手を繋いでいる方に力を入れた南波斗。
真剣な顔つきになり、南波斗はルメアの頬に手を添える。
「俺はルメアが一番好き。誰よりも大切にするって誓うよ」
目を細めて、宝物に触れるかのように、優しい。
「——俺と、付き合ってくれる?」
ドクッ、とルメアの心臓が大きく高鳴る。
頬が赤くなって、目を逸らしたくなる。
いつかの日に、告白されたように。
あの時は、『恋』が分からなかった。
『好き』という感情が、南波斗と同じなのかも分からなかった。
だから、断言は出来なかった。
でも、今なら確信を持って言える。
「——俺からも、よろしくお願いします」
南波斗が持っている気持ちが分かった。
同じだと思った。
——南波斗が、好き。
「俺も、南波斗が好きだ」
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